愛欲の海



                                      もりつぐ さん 


(10)



 愛欲の海に漕ぎ出す爺(じじい)

 

人間関係は、男と男、男と女、女と女、基本的に三種類です。だが、実際

には簡単には割り切れないものです。男同士の関係はさらに複雑です。世

代的な組み合わせがあるからです。フケと、壮年、中年、青年という世代

間の複雑な組み合わせがあるからです。

 

たとえば、最近みたTV番のものがたり。男同士の話ではないのですが、参

考に取り上げます。主人公は、成功した高齢の男性
70歳、お金持ちです。

16
歳の少女と関係し、妊娠を中絶させました。どんな事情があるにせよ、

世間的には許さない老いらくの恋です。

 

20年後90歳になった男性は、同じ女性を再度妊娠させます。それに気づい

た女性は妊娠を中絶。怒った男性が女性を殺害するという悲惨な物語です。

男性の遺伝子を持つ子供を産みたくないと女性が思ったからです。男同士

の場合には、こうした問題は生じませんね。

 

ところで、シカゴの爺さまが、男同士の関係を知ったのは、10代の時でし

た。中学を卒業して勤めた店の店主が男好きで、手を出したからです。店

主は
60代の半ば、爺さまは、まだ16歳でした。店主の体臭は煙草臭くて、

適(かな)わなかったとそうです。

 

何度も舐(なめ)回されるたびに、魔羅は勃起し、精液が噴出する。脳天

に痺れるような快感が広がっていく。センズリでは得られない快楽の極致

でした。男女の交合の喜びを知る以前に、この快楽を知ったので、以後、

男の世界に生きることになったのです。

 

今、裸に剥(む)かれたシカゴの爺さまは、舌を絡ませ、本気で絵描きの

爺さまの裸に挑(いど)んでいます。何もかも忘れて愛欲の海に漂(ただ

よ)う益荒男(ますらお)です。浴衣を脱いだ絵描きの老人も、上になり

下になり、夢の中を彷徨(さまよ)っています。

 

よがり声があがります。激しい肉体のぶつかり合いが、繰り返されます。

 

絵描きの爺さまも、喘ぎながら愛撫に耐えて、呻(うめ)いています。男

だから相手に快感を与えたいと、必死に頑張っているのです。愛欲の海の

ぶつかり合いは、果てしなく続きます。階下でじっと待つ
55歳の男。階上

の爺さんが心配でなりません。

 

小柄な二人のフケが絶頂期を同時に迎えます。純白のエキスを放出するの

は、時間の問題です。どちらも、ぎりぎりまで自己を抑制し、相手の快感

を確かめてから発射するはずなのです。どちらもセックスは、練達の巧者

ですから。

 

「いいーつ。」

 

「ああーつ。」

 

声が同時に上がります。

 

バスルームで、相手の身体を綺麗に洗いました。相手を思いやるセックス

は、愛の表現です。マナーも最高でなければと、二人の爺は考えています。

バスタオルで身体を拭いて、一重(ひとえ)の着物に着替えます。画家は、

Tシャツを受け取りました。それは、シカゴの爺さまのプレゼントです。

 

何もなかったように、二人は、階下に降りていきます。本当にさっぱりし

た二人の爺さまです。相方にはよくわかります。満足したときの爺さまの

顔つきは、綺麗です。誰よりそれが分かるのが相方です。でも、次に何が

起こるのかは分かりませんでした。

 

二階のベッドルームを出るとき、シカゴの爺さまが、ふと漏らしたつぶや

きを、絵描きの爺さまは、聞き逃しませんでした。

 

「あんたの相方は、のうなった(亡くなった)儂の相方と、よく似ている

のじゃ。がっしりと体格がよく、気が利いて、やさしい男でしてな。・・

・」

 

絵描きの爺さま、考えをめぐらします。奴は「うん」というだろうか。亡

くなった相手の代わりに、可哀想な爺さまを抱くことに抵抗はないのか。

わしがあの爺(じじい)を抱いたことは、すでに分かっているはずじゃが。

 

絵描きは、「ううーん」と唸(うな)ります。

 

決断の早い画家の爺さまです。あっという間のことでした。あの爺さまを

抱くことは、亡くなった相方への供養だというのが、爺さまの口説き文句

でした。抱かれる私も、一つ条件を出しました。供養なら、その様子を爺

さまも見てくれと。嫌ならやめると脅しました。

 

こうして、夕食後にシカゴの爺さまと私は、情を交わす事になりました。

絵描きの爺さまの立ち合いのもとでです。好きな相方が、他人の爺(じじ

い)に抱かれるのが嬉しい筈はない。それを諮(はか)ったのは、あんた

だと。知らせなくてはならないのです。

 

 シカゴの爺(じじい)に抱かれる

 

私は、真っ赤な六尺を外して、大きなベットの上にひっくり返りました。

シカゴの爺さまが、急いで単衣を脱いで、裸になります。あっという間に、

爺さまの小さな身体が、私の上に乗っかります。素早い動きでした。予(

あらかじ)め、心に決めている動作でした。

 

乳頭に、おちょぼ口が当たります。口で咥えて、二、三回。乳房は感度の

いい部分です。

 

「ああーつ。」快感に思わず声が上がります。

 

それを絵描きの爺さまが心配そうに覗いています。快感に酔いながら、

「自分の撒(ま)いた種だからな。」意地悪にも、そう思います。

 

シカゴの爺さんのセックスは巧みでした。手で、舌で、口を使って、性感

帯をあぶり出し、どこまでもどこまでも、攻め抜きます。亡くなった相方

とのセックスは、相手が満足できるまで奉仕する。それが基本でした。愛

の極みだったに違いありません。

 

「気持ちがいい。」とろけるようなセックスの極致です。二人がどれだけ

愛し合っていたか。それを知る絶好の手立てです。絵描きの爺さまは、福

岡出身です。男色に寛大な九州です。キスはうまいはずです。でもシカゴ

の爺さまには、到底、敵(かな)いませんでした。

 

「入れてほしい。」シカゴの爺さまは、喘ぎながらつぶやきます。

 

「なんて素敵なペニスだろう。大きい。大きくて太い。」

 

呟(つぶや)く声が刺激となり、快感が一層、深くなります。

 

シカゴの爺さまが、唇でオッパイを吸(す)い始めます。快感が脳天を走

り、気を失いそうです。唇で乳頭を噛みながら、長いペニスを手で揉みし

だきます。二倍三倍も刺激が脳に伝わります。舌を強く吸う音まで、強く

聞こえます。

 

唇を吸い、舌を絡めて唾をのみます。「ああーつ。」

 

声にならない声。心配そうなじいさんの顔です。粗雑な謀(はかりごと)

のお返しだと、意地悪です。普段見せない裏の顔なのです。シカゴの爺さ

まに、身体を開いてやらせてあげる。目に見えない快楽のプレゼントです。

 

爺さまのペニスを、口の奥まで飲み込む私です。喉の奥に亀頭が届けば、

むせ返るのが普通です。ディープ・スロートは西洋人の技。日本人は西洋

人ほど喉の奥が深くないのです。それを承知で、爺さんのペニスを受けて

いるのです。むせ返るのは当然なのです。

 

「あーあー、いいっ。 いきそう。」

 

シカゴの爺さまが精液を発射します。最愛の相方を失って一年間。悶々と

した日々が続いたのでしょう。辛かったはずです。爺さんの精液は、無色

無臭で、良質のチーズのような芳香がしました。絶妙の味といってよいで

しょう。

 

ザーメンを口一杯に受け、ごくんと飲み込みました。亡くなった相方の身

代わりでした。供養になった筈です。私とシカゴの爺さまは、兄弟の契り

を結んだのです。切っても切れない関係です。もちろん絵描きの爺さまも

一緒です。一安心という静かな夜の一時でした。




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