愛欲の海



                                      もりつぐ さん 


(15)



 初恋の人

 

話は前後します。少し昔ですが、フケに恋をしました。T大法科出身のイ

ケメンの
Kさん。見たとたんに、痺(しび)れました。顔がいい。身体も

いい。雰囲気もいい。金離れもいい。この世界ではもて筋です。誰もが付

き合いたい男の中の男です。皆の憧れでした。

 

Kさんが付き合うには、条件があります。顔がいいこと、中肉中背、金払い

がいいこと。金持ちだが、たかられるのを極度に嫌っていました。金持ち

はケチ。
Kさんは、その典型でした。付き合うには金がかかる。金がなけ

れば遊べないし、付き合えないと考える人。

 

身体は、尻が処女というのも、大事なポイントです。肛門括約筋は、使え

ば緩(ゆる)くなる。挿入後きゅっと締まるのは若いうちだけのこと。使

っても緩くならない括約筋を持つ男も、いるにはいる。でもそれは、例外

中の例外の話なのです。

 

Kさんの相手は、普通の尻(けつ)の主。使い込めば締(ゆる)くなるタイ

プです。締まらなくなった尻は、使い捨の運命(さだめ)。相方の悲しみ

苦しみは、半端ではなかったはずです。酒場でよく見かけた
Kさんの話で

す。思い出したくもない残酷な昔の話です。

 

そうだ。Kさんが初めて隣に座ってとき、呟いた言葉を鮮明に憶(おぼ)

えています。

 

「儂(わし)が好きか。」 初心者の私は、顔を縦(たて)にふります。

 

「そうか。」 左手が伸びて、ズボンの上から尻を触ります。

 

「ふむむ。」 今度は手を差し込んで、尻の穴に直接タッチ。

 

尻を直接に触られたのは初めての経験でした。垂れていなくて、キユッと

上にあがった尻。それが自慢でした。尻の穴は小さく、穴は点のままです。

使い込まれていなから、綺麗な少年のまま。
Kさんは、直接、触って確か

めたのです。満足そうに呟(つぶや)きました。

 

「そのうちにな。ふふふ・・・。(笑)」

 

それから10年。Kさんが亡くなった事を知りました。あの時Kさんが、尻に

入ってこなかった理由は何だったのか。当時の私に、遊ぶ余裕はなかった

筈です。遊ぶには不適切な奴と思われたのです。それでよかったと思いま

す。
Kさんのマラは長くて太い。

 

 画家の爺さん

 

仮にやられていたとすれば、画家の爺さまには、付き合ってもらえなかっ

た筈です。後ろは処女だった私です。遊びも知らない不器用な男。だから

付き合ってくれたのかも知れません。親爺さんは、画家で、美的感覚も人

並み以上です。その上、ひどく、潔癖症の男でした。

 

親爺さまもうしろは処女。誰にも入れさせたことはないと言いました。で

も私のものは受け容れました。痛いのを我慢して相方になってくれました。

初挿入は間違いなく私のものです。親爺さんはタチの人。入れる側(がわ)

ですから、うしろは、間違いなく処女です。

 

私の尻に入れたのも一度きり。痛がる私に「我慢しろと一渇」でした。血

が出て痛がるのも一切お構いなし。強引に入れようと力が入る。タチ一本

だというのがよく分かりました。親爺さんとは、処女と童貞、血を流しな

がら一つになりました。素朴な男同士の結合です。

 

何度も挿入しました。夫婦と同じで挿入すれば、どちらも満足します。で

も、適度でないと相手の尻は「がばがば」になる。セックスはいいが、匂

いも残ります。洗っても落ちない異臭です。過度のセックスはダメだと、

心の底から識(し)りました。

 

大切な老爺に、痛い思い、辛い思いをさせたくない。それが愛のはじまり

でした。後ろを使ったセックスは、できるだけ控えた。これは事実です。

でも抱き合って寝るだけでは、満足できない。これも事実です。肛門挿入

は必須要件。二人とも男盛りだからです。

 

愛してほしいし、相手をも愛したい。この関係を持続させねばと希(ねが)

いました。辛いけど、傍にいるだけでいい。やがて、じっとしているのが

一番だと気づきました。相手は絵を描く人。仕事に集中してもらうことが、

双方にとって何より大事。そう思いました。

 

助手といっても、何もしなくていい助手です。郊外に風景写真を撮りに行

く時は、ハンディー・カメラを持って出掛けます。どの角度から対象を切

り取るか。慣れてくれば、言われなくても、分かります。背景に何がいい

か。気づかぬうちに、手際もよくなりました。

 

目の前に丸い球があります。それを見ていると、「描いてみろ」と爺さま

が言います。デッサンは初歩の初歩。どうするか迷っています。すると石

墨をもって、画用紙の上にさっと書き上げます。二、三回手を動かすだけ

で、見事な木の球が出現です。画家の妙技です。

 

和服は75歳になってからにしろ。何度も私に言いました。芸人に間違えら

れては困ると。でも爺さまは、知らぬ間に買い貯めたようです。タンスの

中にしつけの付いた着物が増えていきました。もと呉服屋だった親爺さま

の趣味は、やはり着物だったのです。

 

年末と正月はお揃いを着るチャンス。楽しい一時(ひととき)でした。



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