「晩秋の薔薇」  .

(スーさんと山ちゃんの世界)  .



                                         N爺さん 


(2)  .



 歳月は容赦なく流れ、いつしか高志も六十八歳になっていた。

 妻との接触も無く、男の肌に触れることも無く二十年間。高志はこのま

ま老いさらばいてしまうのだろうかと、一抹の寂しさを感じていた。

 そんなある日、二十五年振りに高志がその人のためなら死んでもいいと

想っていた元彼氏から電話が来た。

「今度、新潟で国体があるので、そのために本を製作することになったが、

前の新潟国体の時、君と開会式を見に行った事を思い出して電話をしたの

だよ」

 そう言えば、たしか『トキめき新潟国体』の開会式を高村忠と観に行っ

たことがあったと遠い記憶を高志は辿った。昭和三十九年の六月だったこ

とまで思い出した。高志が二十三歳の時だった。

「その後、元気にしているかい。私は心臓病を患って、大きな手術をして

今、ヘルスメーカーを着けているんだよ」

「そんな事、全然知りませんでした。 最後に逢ってから随分経つのでお

互い老けたでしょうね」

「この前、床屋へ行った帰り、私は七十代に見られたよ。それにまだ勃起

もするし、前なんかはほんの少しだけど射精もしたよ」

「若い、若い、忠さんは昔も若型だったから今も若いのでしょう」

「その内、もう一度逢ってみたいね」

「逢いたいけど、体は大丈夫なのですか?」

「普通に生活するのには支障が無いよ」

「逢ったら抱かれたたいし、忠さんのものを尺八もしたくなると思うよ」

「構わないよ」

「それじゃ、私も会合で六月に新潟へ行く予定なので、その時会いましょ

う」

「それじゃ、その時を楽しみにしているよ。お互いに元気で居ようよ」

 そう言って忠は電話を切った。

それは三月の末の頃だった。

 忠さんが市会議員になることを知って、迷惑をかけてはいけないと思っ

た高志は潔く身を引くことにして、今まで会わずに居たのだった。

忠さんは市会議員を三期務めて辞職したという。 身を引いて、迷惑を掛

けずに済んで良かったと思った。

 電話が切れてから、高志は、今まで封じ込めていた自分のもう一つの顔

を垣間見た気がした。

 このまま死ぬまで、男の肌に触れることはないだろうと諦めていた筈な

のに、どうにもならない自分の性を恨めしくも思った。

 高志は逢える日を指折り数えて、楽しみ待っていた。五月に入り、あと

少しで又彼に抱かれる…と胸を弾ませていた時

「また心臓の具合が悪くなったので再手術をすることななったから逢えな

いかも知れない」

 と電話がきた。

高志は脳天を突かれたようなショックを覚えた。そういえば、忠とは一回

り歳が離れているので、今の忠は丁度八十歳のはずである。

「新潟へ来るのだったら、○○会館という、その種の人が泊まれる宿があ

るよ、それに○○映画館なども行ってみるといいよ」

「忠さんに逢えないのだったらもそんな所へ行っても面白くないよ」

「高志君は未だこれからがあるんだから楽しんで生きなくちゃいけないよ」

「私は、そんなに歳をとってまでも生きたくありません」

「そう言わずに先輩の言うことを聞くものだよ」

 内心、余計なお世話様と思いながら「はい、良く分かりました。体が完

治したら又電話を下さい」

 忠の声には、張りが無かったので大分弱っていると高志は思った。それ

から忠から電話は途絶え、高志から忠に電話をすることも無かった。

 忠に逢えなくなってしまった高志は情欲を抑えることが出来なくなって

しまった。今まで、二十数本所有してあるホモビデオやパソコンの動画を

見て、自分で乳首を刺激しながら射精して我慢していた高志だったが、矢

張り男の肌が忘れられないし、恋しくなってきた。

 パソコンで忠に聞いた○○会館を検索していたら、K市にもいろいろな

ハッテン場があることが分かった。

 ▽▽館・◎◎の湯・◇◇公園・ビジネスクラブなど掲載されていた。

 高志の心は少年のように躍り出して、一日も早く男の肌に触れたいと思

い、早速駅前の映画館へ足を運んだ。

たまたま日曜日に行ったので、映画館は立ち見の状態だった。しかし暗が

りに慣れて場内を見渡すと、客席にはまばらな人しか居ないようだった。

 席が空いているのに、何故後ろの方に立っている人が沢山居るのだろう

と思った高志だったが、矢張り後ろの壁に寄りかかるようにして立って映

画を見ることにした。映画は男女のポルノであった。スクリーンの男女の

もつれ合いを見て、男が興奮する姿に高志も知らずの内に興奮する自分を

知った。

 しばらくすると、高志のズボンに隣りの人の手が伸びてきた。ドキドキ

しながらも高志はじっと身構えていると、次第に手は股間へ伸びて、静か

に高志の性器を刺激してきた。

 もう映画など目に入らず、相手のなすがままに身を任せていたら、ズボ

ンのファスナーに手が伸びて、ファスナーが下ろされた。

 既に高志の性器は興奮した状態だったので、相手は意を得たようにパン

ツの中へ手を入れてきた。

 高志も相手の状態が知りたくて、相手の股間を弄った。相手も大分興奮

しているようでビンビンにいきり勃っていた。お互いにパンツの中を擦り

合っていたが、その内相手が高志の性器をパンツから出して、かがみ込ん

で高志の性器を口に咥えた。

 何年ぶりの尺八だろう…と興奮する頭の中で考えていた。その人の尺八

はとても上手で、高志は今にもイキそうな成ったが、それを堪えて、相手

の性器をパンツから出して、高志も相手のものを口に咥えこんだ。

 相手も可なり興奮していたので、三分も立たない内に、高志の口に射精

した。 

 ハンカチを出して自分の性器をきれいに拭くと、高志の性器を再び咥え

て高志の精液を口に出してくれた。周りの人も同じような事をしていたの

で、恥ずかしいと思う気持ちは無かった。 

 射精後、高志はしばらくボーとしていたら

「ありがとう、それじゃ又ね」

と言って相手は名も告げず映画館を出て行った。高志もそそくさと映画館

を出たが、性器に心地良い余韻が残って何故か惜しいような気がした。

 それから高志はその映画館が病みつきになって、毎週土曜日か日曜日に

出掛けるようになった。

 携帯電話の番号をお互いに交換して、二度三度、外で会った人は居たが

長続きする人は居なかった。

 決して、高志に魅力が無いわけではないだろうが、男の特性ですぐに飽

きてしまうからなのだろうと高志は思った。

 一年以上音信がない携帯の番号は、削除することにして、それらの人の

記憶も高志の頭の中から消えていった。



                                             続 く 










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