「晩秋の薔薇」  .

(スーさんと山ちゃんの世界)  .



                                         N爺さん 


(8)  .



 高志は、最初にモーテルへ行った日のことを思い出していた。

モーテルへ着いて、どのくらい経ったときだろう、ひと休みするため、ソ

ファーに座ったスーさんが

「山ちゃんの葬式に出るようになるのかな」

 と何気なく言った言葉を思い出した。

その時は何を言っているのだろうと、理解できなかったが、今思うと、あ

の時スーさんは、高志との出合いを運命的なものと思ったからではないか

と、高志は思った。

 恐らく、高志とは長く付き合って行く事になるだろうと思えたのだろう。

 四~五年前に、映画館で袖擦り合った(映画館の中で尺八をした)だけ

なのに、こうして再会したのも、何かの縁なのだとスーさんは思ったに違

いない。

 高志は、スーさんのことは、ほとんど知らない。フルネームさえ知らな

いのだ。

「その内いろいろ教えるよ」

 その言葉がいつ実現するか解からないが、それでもいいと高志は思って

いる。

 何処かで見た言葉に

 

幸せは 想う人が居て 想われる人が居ること 

 

 なんと素敵な言葉だろう。

 二人にささやかなものでも、通じ合うものがあれば、それでいいと高志

は思っている。

 たとえ短い時間でも、肌と肌を触れ合い、情欲に燃えることが出来るの

だったら、それ以上のことは望むまいと高志は思っている。

 

 九月の半ば、高志にスーさんからのメールが届いた。

〝お互い葬式があり大変でしたね。

いろいろとやりくりを考えたのですが、今月の逢瀬はチョッと無理のよう

です。出掛ける用件が見つかりません。お彼岸も重なり残念ですが…ごめ

んなさいと言うしかありません。十月に変更して下さい。

 薬は昨夜届きました。十月の逢瀬に持って行きます〟

〝いろいろアクシデントが起こるのがこの世の常です。九月の逢瀬は、八

月に二回逢ったのだから我慢できます。

 本心は、今直ぐにでも逢って、スーさんの息子に挨拶をしたい…

 早く薬を飲んで綺麗な体になりたいと思います

 十月五日の日曜日は、会合で山形へ行く事になっています。朝から雨の

場合は中止になりますが、私の予定をお知らせしておきます〟

 高志は、今直ぐにでも逢いたい気持ちを抑えて返信をした。

 九月二十八日、高志は仙台での会合の合間を見てスーさんへメールを送

った。

〝こんにちは!

 お久し振りです。お元気の事と思います。私も元気にしています。

 今日は、仲間八人と仙台に来ています。今日は天気が良いのでスーさん

はゴルフかな?

十月には、必ず逢いたいと思っています。早く薬を飲みたい…

用件がなくてもメール頂ければ嬉しい****(ハートマーク)〟

 次の朝早く、スーさんから返信が届いた。

〝元気そうですね。私も相変わらずです。十月五日、十三時にいつものと

ころに行きます。

 薬は、今日明日中に送りますので、十月二~三日から一日一錠飲んで下

さい。(本当は一週間飲む)私も山ちゃんに逢うまで飲みます。お願いし

ます。必ずですよ。〟

 感染症予防の薬を早く飲んで、雑菌を排除して、晴れてスーさんに逢え

る…と思い高志の胸は弾んだが、その反面指定してきた日時の予定を、既

にスーさんへ知らせてあったので、又、高志を困らせるため、意地悪を言

ってきた…と思ったが、そこがスーさんの可愛い所だと高志は思った。

〝メール有難うございます。とても嬉しく思いましたが、十月五日は山形

へ行く予定ですとお知らせしたと思うのですが…申し訳ありませんが、次

の日曜日か、十三日の体育の日に変更して貰えないでしょうか。

 薬を送って頂けるとの事、そうすれば、薬を飲んだ後に安心して逢える

と思います。ずっと考えていたのですが、薬を飲む前に逢う場合は、H抜

きにしようと思っていました。それは私にとって酷なことですが…

 せっかく逢瀬の日を知らせて頂いたのに申し訳ないのですが、変更の程

宜しくお願い致します〟

 高志は出来ることなら、その日に逢いたいと思ったが、その日は妻とド

ライブを兼ねて会合に出席することにしていたので、スーさんへ丁重に変

更のお願いを打診した。

〝十月の日曜日、祭日は本当に忙しく、結婚式、同級会、ゴルフと詰まっ

ています。十三日はゴルフでしたので無理を言って欠席することにしまし

た。山ちゃんのために好きなゴルフを… という事で十三日OKです。〟

 メールを受け取り、高志は心の中で

〈スーさん有難う。〉と何度も呟いた。

 その日の夜、スーさんから又メールが届いた。

〝今日、S市へ用事が有り、S市の郵便局で薬を送りました。十月八~九

日から服用して下さい。お願いします。〟

 あゝ本当に薬を送ってくれたのだと思うと、高志の胸は熱くなった。

 自分の不注意で、感染症の菌を抱える身になってしまった高志を責める

ことなく、その対策をいろいろ考え、実行してくれるスーさんに、今まで

以上に情が移って行く事をひしひしと感じていた。

 次の日、郵便受けにA5版の封筒に入った郵便物を見つけ、スーさんの

送ってくれた薬だとすぐに分かった。

 高志は、有難うと直接言いたかったので、昼休みを狙って電話をしたの

だが、暫くしても電話に出て貰えなかったので、メールでお礼を言った。

〝こんにちは!薬、今届きました。声を聞きたかったので電話をしたので

すが… 有難うございました〟

〝デスクで食事中でした。電話に出れず…薬無事に届いて良かった、良か

った!一箱、一週間飲むのですよ。その間、△△公園へに行ったら意味無

いよ。逢引の四~五日前から…飲んだら良いと思います〟

〝解かりました。有難う!

 逢える日を今か今かと待ち侘びています。今直ぐにでも逢いたい。でも

薬を飲み終わるまで我慢します。

△△公園行きも…〟

 スーさんに逢えるのに、わざわざ公園へ行って、男漁りをする必要も無

いので、ここ暫くは公園へも行っていない高志だった。



                                             続 く 










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