あまね さんのエッセイ




春・・・・ (1)早朝



2月末の5時半は真っ暗で風は冷たい。

街灯の明るさを頼りに玄関で靴を履き外に出て駅への道すがらまだわずか

しか点っていない近所の家の青白い光を見ると、よけいに毛糸の帽子、マ

フラー、手袋を有難く思う。

ローカル線の駅と言っても、車両保守点検用停車場があるため、上り電車

の始発駅にもなっているため、田舎の小さい駅にしては立派と言えよう。

駅員がいなくて明るい蛍光灯が目立つ駅にはすでに何人かの通勤客が寒い

プラットホームには降りずに階上にある改札口付近で停車場から電車が入

ってくるのを待っている。

2両連結電車が入って来るのを見てプラットホームに下り、先頭車両のボタ

ンを押してドアを開け車内に入る。暖房はまだそれ程効いていない。勤め

にでる60過ぎの人も、現役バリバリの男性も、質素な格好の年配の女性も、

高校生もみんなただ静かに発車するのを待っている。

発車した電車内で視線を感じてその方向を見ると、こんな早朝に電車に乗

るのは初めてで少し緊張しているように思える二人連れの40前後の女性が

目に入った。

他の人は動きもしない。

やがて次の駅に着き20人程乗ってきた。

この時間の電車に乗ると見かける目つきの悪い印象の良くない人で警察関

係に勤めているとこっちが勝手に思っている50前後の男が向かいに座った。

今日もこちらを足元まで見て感じが悪い。次の駅でこの電車で通勤してい

るもう一人感じの悪い、前の駅から乗ってきた感じの悪い男の兄弟かと思

われる男が乗ってきた。

彼らは中堅としてそれなりの仕事では抜け目のないようにしているのであ

ろうが、仕事上の知識はあるがどうも見てもゆとりがなく冷たい感じがし

てしまう。見知らぬ人を見る目つきが不信感、競争相手、値踏み、人間的

な温かさが全く感じられない。

彼らのような冷たい印象ではないが、打ちひしがれたようで見ていて気の

毒になるような勤め人が最近目について仕方がない。ジーンズにダウンジ

ャケット、ディーバッグの姿の勤め人がこの10年多くなったように思う。

年齢は様々であるが、もはや少しの豊かさも感じられない男性が増えた。

例えばぼさぼさの髪の毛の間から見上げる目には輝きはなくただただ暗暗

く人を疑うことしかできなくなった人は見るのも珍しくない。

通勤列車はあくまでも静かに働く人を職場へ運ぶ為のものに過ぎないが、

それにしても車内を人々を見ていると日本が貧しくなりすぎたという感じ

がしてならない。日々の生活はただわずかの金のために煩わしい会社の中

で余分な人との関わりを避けて耐えるだけの生活をするしかない人が多数

派を占めるのが今の日本なのかもしれない。



                        




トップ アイコン目次へもどる      「エッセイ一覧」へもどる
inserted by FC2 system