あまね さんのエッセイ №13              .




2016初夏


(1) ガクアジサイ



アジサイの大き過ぎる花の塊はけだるさを、人間の怠け癖を、新鮮味から

少し遠ざかったセックスを感じることもあるが、ガクアジサイは好きだ。

今年も庭のガクアジサイの白と青紫のコントラストが僕を元気にさせてく

れる。梅雨の季節が、朝
4時半には空が明るくなる季節が、以前からこん

なに好きだっただろうか。六月にこんなに早い時間に起きて、初夏の明る

さを、または梅雨の湿り気を心地よいと思っていたのだろうか。

 

もう40年も前にもなるが、札幌で確かに早い朝の気持ちよさを感じた。3

時には空が白み始め、霧か朝靄がかかっているキャンパス内をカッコウの

声が時々する中を、都会の中心と言ってもいい場所にもかかわらず、自然

の大きさを怖さをも感じながら散歩したことがある。

 

遅すぎる僕の性の解放をようやく手に入れることができたと感じとってか

らだったら、おそらく素敵な人との時間が思い出していたかもしれない、

現在(いま)と同じように。

 

あの人の指のしぐさが頭にこびりついている。

 

あの人の温かさを、相手を思いやりの深さをかんじる指の動きが忘れられ

ない。

 

あの人は今、もう起きて散歩をしているのだろうか。

 

何気ない、何にもない普通の時間もあの人と同じ空間で過ごしたい。

 

コーヒーカップをもつあの人の指の動き、新聞を読む時のあの人の指の動

きを何気ない朝に何気ない所で見たい。

 

一本一本しゃぶった昨晩の指が、朝どんな動きをするのか見たい。

 

運転をするのだろうか、あの人も自分の車を運転することがあるのだろう

か。

 

指と指を絡ませた信頼から、興奮がさらに深まり、夢中に頂点に向かった

あの人は今何をしているのだろう。

 

あの人にこのガクアジサイを見てもらいたい。

 

あの人と夏至の頃の明るさを、梅雨の湿り気を、あの人に軽くそおっと手

を握り返してもらう時間を持ちたい。










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