風神さんのエッセイ №11               .




隣のお爺さん(続き)



パンツ一丁で毛布にくるまれて救急車に乗せられた爺さん…

女性の警官が彼の靴はどれですか?と尋ねたので靴棚にあるシューズを指

差しました、痛い痛いとわめいていた騒動も靴を持った警官がドアを閉め

ると急に静まり返って普通の午前二時に成りました、十分ほどして車の発

進する音がして耳を澄ませてもサイレンの音はしませんでした、普通は住

宅街を離れるとするはずですが、真冬の深夜恐らく車の量も少なくて鳴ら

す必要も無かったのでしょうか…

 

老いときに投稿を書いて彼が二度と帰って来ない事を想定している内に睡

魔に襲われいつしか眠ってしまった私でした…ところが朝の六時玄関のド

アの開く音と彼特有の吐息と唸り声で目を覚ましました…

救急車で運ばれて四時間…彼はどうやって帰って来たのでしょうか…?

 

しばらく玄関の上がり框に腰掛けてから階段の手すりにしがみ付きながら

吐息と共に部屋に入る音がしました…痛みどめを打って帰された?パンツ

一丁の老人に病院が衣類を貸し与えるでしょうか?車の止まる音も発進音

もしなかったし何より裸同然で運ばれたのだからタクシー代も無いはず…

救急車は迎え専門で裸だからと送ってくれる訳じゃ無い…もしかして病院

で亡くなって部屋に帰りたいと願う魂だけが帰って来たのだろうか?

 

救急車で運ばれたのであれば痛みの追及で、あれこれ検査するはずだし少

なくとも一日は病院のベットにいるはずですよね…

彼の部屋をノックして大丈夫か?と聞くほど普段から付き合いがある訳で

もないのです、私は散らかし放題でトイレの後始末も私にさせて平気な顔

をしている彼を良く思っていないし、出来れば顔を合わせない様に暮らし

ているのです、

 

彼も気付いているのか月に一度家賃を茶封筒に入れて私に託す時に私の部

屋をノックするだけなのです、冷たい奴だと老いときの読者の方は思うか

も知れませんが、綺麗に掃除したあとに彼が降りて来ると点々とゴミが落

ちている空しさ…トイレも彼が出た後にはオシッコなのか手洗い水なのか

便器の周りが濡れているし感謝もされず後始末させられていいイメージが

持てるはずがありません…

 

朝の四時に騒動が終わって寝て六時に物音で目が冷めて再び寝たので目を

覚ましたら昼でした、

玄関に彼の靴を確かめに行くとありませんでした。私が寝ている間にどっ

かに出掛けた?それともやはり戻って来たのは幽霊かな?

真相を確かめるには彼の部屋をノックするしかありませんが、私はゴミ部

屋をノックするつもりはありません…

 

あれ?今ドアの開く音と階段を歩く音がしました。どうやら生きている様

です。

夜中に迷惑掛けてスミマセンでしたなんて謝るタイプでも無いし、どうや

って帰って来たのか聞くつもりも無いので又今日から無料で介護生活が続

くでしょう…

 

さて…憂さ晴らしにバイクでトコトコ映画館にでも出掛けるとでもしまし

ょうか…

望みは薄いけれど小綺麗で可愛いお爺ちゃんに会えるといいな() 

 

                                            風神でした










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