風神さんのエッセイ №13               .




私の友人



今日は日曜日だし、競馬をする親父さんを目当てに発展場に朝一番で行こ

うと思っていたのに、夕べ軽く飲もうかと誘った八十四才のお爺ちゃんが

いつに無く乗り気で、三軒も梯子酒…案の定次の朝は消化し切れないお酒

が残っていてぼんやりしてる間に時間はどんどん流れて結局は一歩も外に

出ずに1日が終わりました、

 

それにしても夕べタクシーを止めてお爺ちゃんを乗せた別れ際にいつも誘

ってくれて、有り難うね?と言った言葉が気にかかる…

寿司屋で出会って毎晩のように飲み仲間として寿司屋で飲んでいたけれど、

その寿司屋も閉店してしまい、行き場を無くしたお爺ちゃんはどこかへ出

掛けないと1日誰とも会話しない日が続くのです、

私が福島へ移住してお盆休みに帰った時に泊まれる場所を考えあぐねてい

るとウチで良かったら何日でも泊まっていいよ?と言ってくれて、爺ちゃ

んの眠るベットの下に布団をひいて三日間お世話に成りました、

受けた恩を忘れたら人間じゃ無い…私はお爺ちゃんが具合が悪くて酒は控

えるよと聞けば寿司屋に握りを作って貰って差し入れたり、転んでケガし

て人前に出られないと聞けば見舞いに行ったりとお付き合いをして来まし

た、

でも有り難うねなんて言われるとなんだか最後の言葉の様な気がして嫌な

予感がよぎるのです…

 

家に着くと必ず今着いたよと電話をくれる爺ちゃん…夕べはその電話もあ

りませんでした…恐らく飲み過ぎて倒れる様に眠り込んでしまったかと思

うもののヘタに起こしてはいけない…と電話はしませんでした、

本当に純粋で頑固なお爺ちゃんで、思った事は口に出して言うので何度も

冷や汗ものでした、

 

パチンコ屋で会ってラーメンでも食いに行こうかと言うので、近くのチェ

ーン店に行ったのに、店員が近くに居るのに、私にどっか美味いラーメン

屋知らない?と聞いて来たり、飲みに行った店で、いつもこんなに暇なの?

と聞いたりと私を困らせます
()

 

でも私のようにスレていない純粋さに惹かれてお互いに連絡しあっては飲

んでいます…

 

爺ちゃんは二階に五十を過ぎた二男が住んでいるけれど一階に独り住まい…

ずっと犬を飼っていて、その散歩が仕事でもありました、犬の散歩で歩か

なきゃいけないのだから、犬に連れられていると思わなきゃと笑って言い

ましたが、その犬も爺ちゃんを置いて先立ちました、

犬が先かワシが先かと言ってたのに、女房だけじゃなく犬にまでおいてけ

ぼりを喰った爺ちゃん…かなり落ち込むかと心配したけれど案外ケロッと

してる爺ちゃん…

 

そんな爺ちゃんだけど、もし発展場で他人として出会っても、私は手だし

はしないでしょう…とても性格がいいから付き合っていけるのです…

未だに女好きでスカートを履かない女は嫌いだと笑わせてくれます。

 

この借家の大家である友人も爺ちゃんを気に入って事あるごとに爺ちゃん

を誘って一緒に飲んでいます。酔うと足元が危ない爺ちゃんをタクシーに

乗せるまでが仕事のようなもの…飲み代は八割がた私と友人で済ませます

が、会計の度にワシが払うからと財布から金を出して店に出すけれど、そ

れを無理に戻して私と友人で済ませます、

 

あと何年一緒に飲めるかと心配ですが、いい友人としてこれからも付き合

って行こうと思います

 

              風神でした










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