風神さんのエッセイ №16               .




この世に生まれて



私はこの世に生を受けて、楽しくて仕方ないと思った事がない…それは子

供嫌いだった父親の下に生まれて可愛がられた記憶がない事から始まった

不幸だったのかも知れない…淋しい檻の中で、どうして生まれて来てしま

ったのだろう…

 

そんな思いにまみれた幼年期だった様に思う、父に抱かれた記憶もない、

父の笑顔は酒を飲む時の相手に向けた顔であって決して家族に向けられる

事はなかった、まだ子供で男と女がセックスをして子供を作る事を知らな

かった頃は一体誰の希望で生まれて来たのかと真剣に悩んだりもしたのだ、

それが父の希望でなかった事だけは確かだった…

 

やがて思春期を迎えて男と女の関係に気付くと子供はセックスの快楽の副

産物だと知るのです、父と母はその快楽に耽ったから私が存在したのだと

思うと母の顔さえ見れなく成ったものでした、でも貧乏な家庭でも父は絶

対的な存在で母が文句一つ言うだけで殴る蹴るの仕置きを受けるので、何

も言えなかったのでしょう、近所の母親連中が集まって色話をして笑う席

でも母は寡黙を通していました…

 

もしかしたら母は女の喜びを知らなかったのでは…と今でも思う時があり

ます、毎晩のように大酒を飲んで夜中に帰って来る父でした、子供の頭を

撫でたり抱き上げたりする時間など勿論ありません、幾ら酔っ払っても性

欲だけはあったのでしょう、酒臭い息で乗っかって来ても女房の務めとし

て受け入れざるを得なかったのだと思うと可哀想な母でした、でも何で避

妊しなかったのか不思議でした、

 

周り一面田んぼの中で育った父でも避妊しなかったら子供が出来る事は知

っていたはずです、ましてや子供が嫌いだった父にとっては女房が妊娠し

たら働き手も居なくなり大変な事に成るのは見えていたはずです…その全

てを犠牲にしても、中だしの放出感の快感が大きかったのでしょう、

それは同じ男として私にも解ります、でも妊娠させる不始末の重大さは知

っているから童貞の時ですら中だしはしませんでした、

 

それは十七の夏彼女の近くの神社で犬に吠えられながらの性行為…僅か三

擦り半で爆発してしまった私は、発射ギリギリで抜いた為に彼女のスカー

トを汚してしまいました、未熟な私ですら外うちしたのに、それをやらな

かったから不幸な私が存在するのです…子供が通る場所に居ると足でどか

して通る父でした、子供を愛さない親は居ないと世間では言うけれど、何

にも例外があるように、そこには確実にありました、

 

抱き締められた記憶のない子は、自分を愛さないと何かの本で読んだ事が

ありました…正にその通りで兄は子供の頃からケンカに明け暮れて少年院、

刑務所と経験し、ヤクザへとまっしぐらでした、

酒癖の悪い父とグレた兄で苦しむ母の姿が自暴自棄に成ろうとする私を止

めてくれたのだと思いますが、それは尚更苦しい道でした、荒れる心を抑

えなければ、母を泣かせる事に成るのです…警察の厄介には成らなかった

ものの命の価値観を持てなかった私は、陰では夜の街に繰り出しては毎日

ケンカをしてました…

手が腫れてグローブのように成っても母の前では手を隠し何事もない振り

をして居たのです、

 

私は親から教育や教えを受けた事がありません…記憶にあるのは父が鬼の

形相で私を睨んで自分の事は自分でしろ…と言う命令と、母の悲しそうな

顔で人に迷惑かけてはいけないと言う言葉だけでした、

勉強しろと言われた事など一度もなくテストで点が取れなくても何か言わ

れた事がありません、

少年院や刑務所を引きずり回された父にとっては何もしない事が重要で、

それ以外はどうでも良かったのです…

 

ある時、小学校の担任が風邪で休校して、校長先生が代役で授業した事が

ありました…

作文か何かを書くようにと言われて提出したのを目を通した先生が私の親

を呼び出したのです、何かやったのか?と責められても記憶にありません、

母が暗い顔で学校に行くと校長室に通され、先生が貴女の子供は文才があ

る…是非ともその方向に育てて下さいと言われて拍子抜けして帰りました、

でも感動する訳でも誉める事もなくホッとして終わり…要は子供に関心も

無ければ興味すら無いのです…

なら避妊して子供なんか作るな…思春期過ぎの私はずっと思って来たので

す、

センズリ覚えたてのサルやゴルフの練習場でもあるまいに打ちっぱなしす

るなんて無責任だろ
!!と思いました、

 

でもずっと後に埼玉で暮らした時、地元の会長をやっていたと言うお爺ち

ゃんと仲良く成って親子の様に付き合って頂きましたが、昔はよく夜這い

をしたもんだと言う話に避妊はしたの?と聞いて見ると、中だししてたし

避妊する人は居ないよの答えに愕然としました、

産卵期に当たる女性に中だししたら高確率で妊娠します、昔は堕胎など非

日常で、する人は居なかったのです…

そしたら道は只一つ、不細工で頭が悪く結婚出来そうもない真面目一本の

男と結婚させてその男の子供として産ませるしか方法は無いのです…男は

自分の子供では無いと知りながらも黙認して結婚するのです…

ウチの叔母さん、父の妹もそうでした、誰かに遊ばれ妊娠してしまい、兄

である父が適当な男を見繕い結婚させました、やがて男との間に女の子が

生まれましたが、姉妹の顔は全然似てなくてもその件には誰も触れません

でした、田舎では良くある事です、

人生模様は本当に様々ですよね?

 

私は未だに自分が嫌いで、この世に未練もありませんが、薬で死にかけた

時に、生と死についてあらゆる本を読みました、

自殺は脱走と同じ罪で決して楽には成らないと書いてありました、年を取

ると長生きする為に健康診断を受けたりちょっと異常があると病院へ出向

きます、血糖値がどうの、血圧がどうのと老人の会話は痛い痒い病院の会

話に尽きますよね?

 

私は覚悟が出来ていて、痛い痒いも口にせず、身体の中で悪い病魔が育っ

ていようとも死ぬ時は死ぬと思って暮らしております…

埼玉の爺ちゃんは病院のベットで肩で息をしながら私の手を握り締めて死

にたくないよ…と言いました、

代わってやれない悔しさに病院の窓から空を見上げる事しか出来ませんで

した、

これから私が生きるであろう期間を上げれるものなら上げたいけれど死の

番人の掟は許してくれません…

 

私の理想は病院に行った時は末期のガンで余命が三日ですと告知される事

…ま、1日あれば頭の整理も出来ますが、1日ぐらいは病院の窓から自分

が生きたこの世を眺めてもいいかと思います。

病室には誰も呼ばず知らせず強いモルヒネを打って見苦しく苦しまない様

に静かに死ねればいいと思います、中々思い通りに成らない世の中ですか

らね‥こればっかりは神様次第…お願いしますよ~
()

 

              風神でした










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