風神さんのエッセイ №17               .




困ったおじさん



老いとき読者の皆様お早う御座います、今日はエロ話ではなくこの借家で

同居している不可解なおじさんの話をしたいと思います…

 

私は大震災に襲われた福島で復興と田舎暮らしを目的に長年暮らした川崎

を離れ、いずれは小さな家を買って大自然の中で静かな老後を送る夢を抱

いておりました。ところが除せん作業は全国から高給目当てに集まった海

千山千の労働者の起こす事件と人さえ集めて送り込めば高給な給料の頭ハ

ネをするだけでベンツが買えると言う異常な状態が続き、騙された労働者

の不満からいざこざが絶えず殺人事件も起きる有り様で、大手も下請け制

限をしたのです…

仙台でベンツが飛ぶ様に売れたと言う異常な現象は、上手い話をでっち上

げて労働者をかき集めたあくどい親方がハネた上毎が起こした現象だった

のです…

 

私も最低でも日給一万八千円、請負をするからもっと高い収入が得られる

と言う甘い言葉に釣られた1人でもありました、でも行って見ると宿泊す

る宿もなく、共同宿舎に押し込められて仕事も除せん作業が始まるまでの

約束で宿舎をつくる建設作業に入れられました

 

そんな中、私は作業中に右目に鉄片が刺さり車で一時間の福島医大に運ば

れて目玉を四針縫う手術を受けたのです…目玉は皮膚と違って容易にはく

っつかない…

力んだり埃が入って目を擦ったりすると破れるので、抜糸までの半年は安

静にする様に…と言われて会社が借りた借家で仕事に出掛ける仲間を見送

る毎日に成りました、

 

見た目は健康体の私が働きもせずぶらぶらしているのを歯がゆく思った会

社は働かないなら寮を出ろとまで言いました、結果私は建設現場の脇に置

かれたコンテナで暮らし仕事をさせられました、真夏の炎天下、水を浴び

たように流れる汗は当然目に入り、塩水で目を洗うようなものでした、

そんな思いまでして得た給料も半分もハネられ私は途方に暮れていたので

す、

 

求人情報で他の会社に行こうにも目は縫合したままで視力もなく細かい仕

事は出来ない…通院しなければ成らないしこの地を離れる事も出来ない…

そんな中に川崎の知り合いから電話があってその電話に大家である友人が

出たのです…

 

元気か?いや実はこんな状態で…ひどい目に合ってるなら帰って来たら?

住む所ならあるから…

私は救われたのです…もう二度と川崎に戻る事はあるまいと思った川崎に

戻る事に成りました、

抜糸を待って1人で引っ越しをしました、

それがこの借家に入るきっかけでした、

 

この借家は居酒屋に貸していたものでしたが、辞めたので改装して住める

ようにしたもので二階に二間と台所、一階に風呂場とトイレ、元店舗だっ

たスペースに麻雀卓を一台置いて仲間の遊技場としたものでした、

時たま知り合いが集まって麻雀するので、買い物して掃除して卓の管理を

してくれれば家賃はいいから…と言うものでした、

昔雀荘の経営をしていた私には軽い仕事…家賃も払わず遊んでいる様もの

でした、

 

ところが知り合いから頼まれておじさんを入れる事に成ったのです…私は

ゲイで老け専だから可愛いおじさんなら大歓迎でしたが、このおじさん最

初から問題児で歩いて来れるアパートに住んでいたらしく引っ越しも台車

で何度も1人で運んだらしく、その台車に積んだガラスが交差点の真ん中

で落下…ガラスが一面に散った状態で引っ越し作業を止めて何時も行く食

堂で酒を飲み始めた様でした、

 

交差点の近くの住民の通報で事件か事故かとパトカーが来ていると私に知

らせがありました、

その時麻雀の客が居て遊戯の最中でした、掛け金もテーブルの上にあり警

察が来たらマズい状態なのに、おじさんの引っ越し先であるここに警察が

訪ねて来たらどう成るか…

 

全く考えないで一杯飲み始めたおじさん…私は客を帰す訳にも行かずテー

ブルの金をポケットにしまえば続けていいからと言い残して状況確認の為

に交差点に向かいました、

交差点に警察の姿はなく、道路の向こうから赤い顔したおじさんがフラフ

ラ歩いて来ました、

何やってるの、交差点の真ん中でガラス割ったら直ぐに片付けるの常識で

しょ?借家にほうきとチリトリがあるから今すぐ取りに行って片付けて?

と指示して再び客の元に戻りましたが、全てがこの調子なのです…

大家も私もこのおじさんを入居させたのは大失敗だねと直ぐに思いました…

 

コンビニの品を配送するドライバーだったおじさんは借家に入居と同時に

生活保護を申請して受理されて仕事にも行かなく成りました

二階の台所は共有するはずでしたが、おじさんの持ち込んだ冷蔵庫も手垢

や汚れでドロドロ、炊飯器も固く成ったメシ粒がフタの回りを埋め尽くし

床はホコリで真っ白…部屋からはゴミの臭い匂いが溢れて来ます…

河原のホームレスの小屋の方がまだ綺麗な状態なのです…

 

ほうきもチリトリも掃除機も無いおじさんに片付けると言う常識はない様

でこの一年掃除する姿を見ていません、

 

ある晩私は前の夜に眠れなかったのでこの夜は熟睡していました、

おじさんの気配を感じなから暮らすのが嫌で私は一階の遊技場で寝起きし

ていましたが、夜中に私の居る部屋のドアを強く叩く音で起こされました、

眠い目を擦り何事かとドアを開けると警察官の姿が…その後ろを見ると玄

関の上がり框におじさんが下着姿で倒れて唸っているのです…そして二人

の救急隊員がそばに立っていました、

 

近所の通報で悲鳴がすると言うので来ました、え~?私は熟睡してて何も

知らないと答えたけれど、事件だとすれば二人暮らしの借家で私が爺さん

に暴力を振るったと誰でも思うだろうし、ドアを開けた警察官もそんな目

で私を見ていた気がする…

おじさんは下着姿のまま救急車で運ばれて行きました、しばらくは帰って

来ないと思ったら次の朝階段を上る足音が…

え?深夜に下着姿で運ばれた人が朝早く歩いて帰って来るってアリ?病院

て衣類の貸し出しもするの?

 

私の頭の中は?で埋まりましたが顔も見たくないし、言葉を交わすなんて

とんでもない私は何も聞かずに済ませましたが、迷惑を掛けたの一言も無

い常識外れの同居人なのです…そのおじさんが今度はいつの間にか居なく

成って三週間が過ぎました、

 

月の始めにおじさんの家賃を立て替えて大家に渡していて四日~五日に払

うために私の部屋に来るおじさんでした、郵便物も私がポストから出して

階段に置くのが通常で自分からポストを見に行く事もしないおじさん…階

段に置けば嫌でも目に付くし持って部屋に入るけれど階段に置いた郵便物

が溜まる一方だし最近物音もしない…

変だなと思った私は意を決して部屋をノックしても返事は無い…思い切っ

てドアを開けると布団は敷きっぱなしで皿の上には食べかけの焼き魚が乾

き切っていて長い間本人が居ない事を知らせて居ます。

 

前にも一度長い間留守にした事があって、もし長い間留守にするなら一言

言って?と言った事があるけれど、自分の事しか考えないおじさんは守る

事なく同じ事を繰り返す…いっそ川にでも嵌って死んでくれればいいのに、

と不謹慎な事を言いながらも部屋代も払わず音信不通なおじさんが気にな

って、おじさんが通っていた居酒屋に行って見ると昨年の暮れから顔見て

ないと言う返事で、バス停に座り込んで唸ってたとか、銀行の前に座り込

んで痛い痛いと唸ってたとか、おじさんを目撃した人は結構いて変な意味

で有名人でした、

 

居酒屋にいた人がおじさんの携帯に掛けてくれましたが、現在使われてお

りませんとガイダンスが流れるだけでした、料金未納で停められた場合は

お客様の都合により…と流れるはずです万が一入院してたとしても家賃を

払わなければ成らない時期を過ぎたなら一言でも事情を説明してお詫びを

するべきですが、そんな常識すら持ち合わせていない…

常識を持たない者にあれこれ注意をしても疲れるだけと二階のゴミ部屋か

ら引きずって来るゴミを歩いた後を追うように掃除して、二階から溢れて

来る匂いを芳香剤を巻き、汚したトイレもブラシを掛けて、俺はおっさん

の下僕かと文句を言いながら暮らしてました

恐らくおじさんは一度も結婚した事がなく、生まれてからずっとこんな暮

らしをして来たと思う…

この借家に越して来る前の部屋も、散らかし放題で出て来て、恐らくは業

者の手を入れないと次の人に貸せない状態だったのでは…と思う、

 

私は十五で他人の家に奉公に上がったのでゴミ屋敷にしないぐらいの常識

はあるけれど、どんな環境に育ったかとこのおじさんの人生を思うと文句

を言って辛くも当たれない自分が居て、出来るだけ関わり合いを持たない

様にはしたいと思うのです…

 

訪ねて行った居酒屋で恐らく入院してるのでは?だとしたら○○病院だか

ら知ってる看護婦もいるから聞いて上げるよ…と言われたので結果を聞き

に又行かなければいけません、

身よりが1人も居ないと言うこのおじさんが亡くなったら誰に知らせれば

いいのか…私も人の事は言えないけれど、地獄の福島から救ってくれた友

人にだけは迷惑を掛けない死に方をしなければと思う、

 

都会では老人の孤独死が頻繁に起こり後始末の業者に大家が大金を払って

依頼すると言う…

病院で亡くなって家財の処理だけでも負担に成るのに部屋で亡くなって1

ヶ月とかの場合、腐った体液が畳の下まで染み込んで床板も交換する羽目

になり充満した匂いは強くて消えないと言う…

 

人の生き様死に様はそれぞれだけれど、なるべくは静かに迷惑を掛けない

で終わりたいものである…

 

            風神でした










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