風神さんのエッセイ №20               .




眠れぬ夜に



睡眠時間も食事の時間も仕事を辞めた時からバラバラで、腹が減ったら何

か食べる…眠くなければ何時までも起きている…そんな自堕落な日々が続

いて長年の労働で鍛え上げた筋肉も消え失せて力コブさえ消えてしまった

私です…

今夜も早い時間に好きだった寿司屋の親父を呼び出して軽く一杯飲んで帰

って来たら、酔いも手伝って九時には眠ってしまい…前の晩は仲間と朝ま

で麻雀して寝たのが朝の九時で、たっぷり寝ようと思ったら知り合いの婆

さんからの電話で昼に起こされて完全に睡眠不足だと言うのに、充分寝た

かなと目を冷ましたらまだ夜の十二時…又夜中に起きている状態に成って

しまった…

 

そんな夜に何か面白い番組はないかとチャンネルを弄っていると、舞台に

二人の老婆が暗い蛍光灯と古い家具に囲まれて演技をしている…あれ?こ

の小柄で可愛いお婆さんは見覚えがある…誰だっけと考えていると頭の中

に日色ともえと言う名が自然に浮かんで来たのだ。そう言えばこの女優さ

んは何年も見ていなかったのにこんなに可愛いお婆さんに成ったのかと何

だか嬉しく成ったのだが、私より年上のはずの彼女が豊かな表情で長ゼリ

フを見事にこなしている事にひどく感動を覚えてしまった…

 

番組の名は送り火…開戦の赤紙が田舎の若者を戦地に引き抜く頃に起きた

駆け落ち逃亡にまつわる話ですが、いつしか記憶からも消えていた彼女の

女優人生は私の目の届かない所で脈打ち生き続けていたのだ…

私は芸事にも無関心で、舞台はおろかコンサートにも足が向かない…芸事

だけでは無くスポーツ観戦にも興味がない為に野球や相撲が始まるとテレ

ビも詰まらなく成ってしまう…映画も日本人のわざとらしい演技が嫌いだ

から洋画しか見ないと言う偏屈ぶりなのである…

 

ただ子供の頃に田舎の神社のお祭りに来る芝居は妙に好きだった、褌姿で

白粉を塗ったサムライ劇にぞくぞくするほど色気を感じていたのだ…

思えばその頃にゲイの芽生えがあったのかも知れない…

着物の後ろを帯に挟んで太ももの付け根にチラチラ見える白い褌…その白

い生地の中に大人の逸物が息づいていると思うと堪らなかったのだ…

 

かと言って褌フェチに成った訳でもない、普通の男が赤い腰巻きを見て興

奮するのと同じ現象だったと思う…

 

今でも田舎芝居が好きでこの六月に爺さん達を連れて温泉一泊旅行を計画

していて、その旅館の隣にある田舎芝居の小屋に行く予定なのである…今

夜送り火を見てその古いセットと着物の古着に懐かしい思い出が蘇ってし

まったのだ…

 

爺さん達は時間を持て余し私の顔を見る度にどっか連れてけ~と言う、人

任せなのである
()

昨日居酒屋で会った夫婦連れの旦那さんは城が好きで退職してからずっと

一人で全国の城巡りをしているとか…城に関しては知識も深く、熱く語る

姿に色気と可愛らしさを感じたものでした、

 

世の中は色んな人生があるもんだとつくづく思いましたね…?

好きな事して楽しまなきゃ損ですね?   風神でした










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