北極星さんのエッセイ №11               .




衆道の今昔 (4)  .


                                       2014-10-18

老いのときめきのみなさんおはようございます。

 

分野別の男徃同性愛:宗教,武家及び一般社会における同性愛

宗教における同性愛(男色)

仏門における男色関係は、若年側が未成年とされる年齢構造の典型的な少

年愛の関係性であったとされる。年長側は「念者」とよばれる僧侶であり、

若年側は稚児と呼ばれる思春期前後の少年であった
[15]。この関係性は稚

児が成人となるか寺社を離れるまで続いた。両者には関係性の尊重が求め

られ、念者側には貞節の誓願が求めれていた
[16]。一方で寺社外からは、

僧侶は青少年に対する偏愛を持っているとの下品なユーモアの対象となっ

ていた
[17]

日本における神道では宗教的な同性愛に対する反発はない[18]。江戸時代

において八幡や妙心寺、神明、天神などは衆道に関連した神とみられるよ

うになっていた
[19]。この時代の作家井原西鶴は日本書紀における神々の

初期
3世代に女性が存在しないことを指摘して、本当の男色の起源である

と冗談で主張したとされる
[19]

武家における同性愛(衆道)

武家における同性愛は仏門のそれとは異なり、若衆とよばれる少年がより

経験豊かな成人男性より武術の訓練を受ける慣習から拡がったとされる。

年長者は「念者」「念友」などと呼ばれ、年少者の同意を以て成年までの

期間に恋愛関係を持つことができた。この関係性は兄弟愛の関係性に基づ

くものであったとされ
[20]、両者には他の男性との関係性を持たないこと

が求められた。この慣習は仏門における少年愛とともに「世代的関係性の

ある同性愛」として体系化され、
"若衆の道"を意味する「若衆道」と呼

ばれ、その短縮語として「衆道」と呼ばれるようになった。念者の役割を

果たす年長者は若衆に対して武術や武士の礼法、武士道的規律を教える立

場となり模範的な振舞いを求められた。そのため衆道における関係性は「

互いに高め合う効果」をも持っていた
[21]。さらに互いに対する忠誠心は

死に至るまで続き、封建的な責務や決闘や復讐などの道義心に基づく責務

をも期待されていた。両者における性的関係は、若年側の成人を以て終わ

るものの、関係性は生涯における友情となることが理想とされていた。女

性との関係性についてはどちらの側にも制限はなく、若年側が若衆を求め

ることは成人を以て自由となるとされる。

一般社会における同性愛

      

男性と若衆を描いた宮川一笑の掛物絵。1750年頃。個人蔵。左の若者は

女性の着物を羽織っている。前髪を残して頭頂部を剃る髪型は、若衆の年

齢であることを示している。

日本統一が近づくにつれ、一般社会には武家の慣習が持ち込まれるように

なる。衆道には商業的な側面がより深くなる。男性による売春の「陰間」

では見習い身分の歌舞伎役者であったものが男女両方の客をもてなしてい

たが、
19世紀中盤には徐々に規制が強化されるようになった[22]

多くの男性売春者は若い歌舞伎役者と同様に年季奉公として陰間茶屋や劇

場に売られた子供であり、その多くは
10年間の契約で拘束されていた[23]

また店子や掃除人として雇われた少年と店主の関係性は非常にありふれた

ものであり、一般的な猥談や冗談の想像元としては充分すぎるものであっ

[24]。若い歌舞伎役者が出番のない時に売春を行なうことはよくあり、

現代のメディアにおけるスターと同様に裕福なパトロンによる支援があっ

たとされる
[25]。女形や若衆形の特定の役者には男女を問わず多くのパト

ロンを得ていたとされ
[26]、時折出される衆道の春画などがベストセラー

になることもあった
[27]

男性客をもてなす男性の売春者は元々若衆の年齢に限られており、成人男

性は他の男性の性的パートナーとしては社会に受け入れられていなかった。

17世紀の間、売春男性とその雇い主は、「非成人」の定義を20代、或い

30代に拡げようとしたため、実際は客が自分より年齢が高い「少年」

を買うこともあった
[28]。この拡がりは17世紀中盤において、歌舞伎にお

ける若衆の象徴であり性的アピールでもあった長い前髪の禁止へとつなが

った。この禁止は若衆の性的魅力を落とし、彼らを巡る過剰な競争を抑え

るために導入されたものだが、「実年齢」と「男性の性的魅力」の関連性

を切り離す効果があり、年齢に関わらず適度に
"若々しい"外見を維持で

きる限りは性的魅力を維持できる結果に繋がったとされる
[29]

春画と衆道

     

常連客(左)の背後で女性(右)と接吻をする若衆。西川祐信作、1716

年〜
1735年頃。手彩色の春画。

江戸時代の春画3,500点を分析した調査[30]によると、女性同士の性行為を

描いた作品は全体の
1%以下、男性同士は全体の3%であった。性的興奮を

掻き立てるために作られた春画や春本では、若い女性(妾や女郎)だけで

はなく少年(若衆)や異性装男性(女形)などが取り上げられおり、いく

つかの作品においては、女郎と若衆を多くはべらす状況を「贅沢」と表現

している
[31]。同様に女性達も若衆や女形の両方に対しても惹かれていた

とされ、これらの若い男性の中には男女の両方に対して興味を示してた者

もいたと考えられている
[31]。このため男色を行なう人物や若い男性の中

には現代における両性愛者がいたと考えられる
[32]。純粋な男性同性愛者

は「女嫌い」と呼ばれていたが、この言葉は男性に対する魅力を選んだ人

を指すよりも女性に対して嫌悪感を示す意味合いが強いとされる
[33]

 

出典ウィキペディア「日本における同性愛」:

15  Childs, Margaret (1980). “Chigo Monogatari: Love Stories or Buddhist Sermons?”. Monumenta Nipponica(Sophia University) 35: 127–51.

16  Pflugfelder, Gregory M. (1997). Cartographies of desire: male–male sexuality in Japanese discourse, 1600–1950. University of California Press. pp. 39–42. ISBN 0-520-20900-1.^

17 Pflugfelder, Gregory M. (1997). Cartographies of desire: male–male sexuality in Japanese discourse, 1600–1950. University of California Press. p. 75. ISBN 0-520-20900-1.

18 The Greenwood encyclopedia of LGBT issues worldwide, Volume 1, By Chuck Stewart, p.430; accessed through Google Books

19  Leupp, Gary P. (1999). Male Colors: The Construction of Homosexuality in Tokugawa Japan. University of California Press. pp. 32–34. ISBN 0-520-20909-5.

20  Leupp, Gary P. (1999). Male Colors: The Construction of Homosexuality in Tokugawa Japan. University of California Press. pp. 53–54. ISBN 0-520-20909-5.

21  Pflugfelder, Gregory M. (1997). Cartographies of desire: male–male sexuality in Japanese discourse, 1600–1950. University of California Press. pp. 70–71. ISBN 0-520-20900-1

22  Leupp, Gary P. (1997). Male Colors: The Construction of Homosexuality in Tokugawa Japan. University of California Press. pp. 70–78, 132–134. ISBN 0-520-20900-1.

23  Leupp, Gary P. (1997). Male Colors: The Construction of Homosexuality in Tokugawa Japan. University of California Press. pp. 69, 134–135. ISBN 0-520-20900-1.

24  Leupp, Gary P. (1997). Male Colors: The Construction of Homosexuality in Tokugawa Japan. University of California Press. pp. 77. ISBN 0-520-20900-1.

25  Gay love in Japan – World History of Male Love

26  Leupp, Gary P. (1997). Male Colors: The Construction of Homosexuality in Tokugawa Japan. University of California Press. pp. 90–92. ISBN 0-520-20900-1.

27  Leupp, Gary P. (1997). Male Colors: The Construction of Homosexuality in Tokugawa Japan. University of California Press. pp. 88. ISBN 0-520-20900-1.

28  Leupp, Gary P. (1997). Male Colors: The Construction of Homosexuality in Tokugawa Japan. University of California Press. pp. 34–37. ISBN 0-520-20900-1.

29  Leupp, Gary P. (1997). Male Colors: The Construction of Homosexuality in Tokugawa Japan. University of California Press. p. 132. ISBN 0-520-20900-1.

30 「図像の数量分析からみる春画表現の多様性と特色—江戸春画には何が描かれてきたのか—」総合研究大学院大学 鈴木 堅弘

31 Mostow, Joshua S. (2003), “The gender of wakashuand the grammar of desire”, in Joshua S. Mostow, Norman Bryson, Maribeth Graybill, Gender and power in the Japanese visual field, University of Hawaii Press, pp. 49–70, ISBN 0-8248-2572-1

32  Leupp, Gary P. (1997). Male Colors: The Construction of Homosexuality in Tokugawa Japan. University of California Press. pp. 95–97. ISBN 0-520-20900-1.

33  Leupp, Gary P. (1997). Male Colors: The Construction of Homosexuality in Tokugawa Japan. University of California Press. pp. 102. ISBN 0-520-20900-1

 

(続く) 次回は「近代幕末・明治初期‐薩摩/土佐藩士衆道の復活と一時

的な違法化
」から始まる








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