吉三郎さんのエッセイ №6                     .




ホモの効能 ~私はあなたを知っている~



この世界、本当に狭いもので、実はあの人とあの人は知り合いで、など

という類いの話があちこちに転がっている。お互い知らないうちに穴兄弟

になっていたり、テレビに出ている有名人と寝たことがあるという男が身

近にいたり、そんな話は日常茶飯事であろう。

儂本人の話でいえば、4人の男が集まってみたら、対角線を含め存在す

る6つの辺すべてが肉体関係でつながっていたことがあった。つまりA、

B、C、儂の4人が、それぞれ全員の男とセックスしたことがあったとい

う訳だ。

 

ある日、儂はネット上で老け専むけのSNSのメンバーの自己紹介を一

人一人手繰っていた。

「タイプの男がいないかな」

思いはその一転に終始する。

会員制でお仲間ばかりが参加しているとはいえ、いつ何時情報が流出す

るかわからない。多くの会員は顔をカットしたり、モザイクをかけたりし

た褌姿を掲載するか、お気に入りの人形、はたまた差し障りのない風景写

真などを貼り付けてお茶をにごしている。プロフィールに顔写真を貼り付

けている人は10人に一人にも満たない。

そんな数少ない顔写真派の中に気になる男がいた。ガッチリとした体に

短く刈り込んだ髪、朴訥な印象を与える男である。日記の書き込みからは

肉体労働者であるようだ。以後、その会員の日記が更新されるのを楽しみ

に待つようになった。

数年後、儂の友人から電話がかかってきた。久しぶりに出かけた名古屋

の某淫乱サウナで良い男と知りあったという。

「多分、〇〇(儂)のタイプ。紹介するから会ってみないか? 本人の許

可ももらってあるので顔写真とアドレスをメールに添付して送る」

 という。

期待に胸を膨らませてメールに添付された男の顔を見て驚いた。件のS

NSの男だったのである。その男とは何度かメール交換をしたが、お互い

好みのタイプと微妙にずれていることがわかり、結局、会わず終いであっ

た。

 

 岩手県に、お仲間が集まることで有名な祭りがある。今ではメジャーに

なり過ぎたため、日本中から露出好きの仲間が大挙して押し寄せ、風紀を

乱す行動が目に余るようになった。結果、全裸禁止になってしまったが、

昭和が平成に変わる頃には、地元の毛深い農家の親父が、それこそ人目も

はばからず生まれたままの姿で参加していた。  

祭り好きの友人Yから、その祭りを個人的に撮影したスナップ写真を見

せられた時、儂の股間はみるみるうちに硬くなった。農家の親父ばかりだ

から、おしなべてガタイがよい。そんな親父達がズル剥けチンボ丸出しで、

禊ぎをし、裸の肉体をぶつけ合って〇〇将来符を奪い合っているのである。

 

スナップ写真の中に気になる男がいた。筋肉質で短髪、明らかに肉体労

働の男である。Yに聞くと地元の男ではなく、遠く離れた県から10時間

以上も車を運転し、毎年、祭りに参加するためにやってくる男だという。

焼き増ししたのだろう。同じ写真が何枚もあった。儂はYに頼み込んで、

その男の写った写真をもらって帰った。その後、その写真を使って何回せ

んずりをしたかわからない。時には写真に放精し、顔射した気分になった

こともあった。

 

数年後、儂は地元対象のネット上の掲示板に、

「〇月〇日〇時頃、地元の某温泉に集まらないか。」

 という書き込みをした。会ったことのない地元のホモ親爺を一人でも捕

まえられれば儲けものである。当日、大した期待もせずに指定した温泉で

儂は待った。一人の男が脱衣所の扉を開けて入ってきた。曇ったガラスの

向こうなので顔はハッキリは見えないが、ズボンを脱いだ男は六尺褌だっ

た。お仲間に違いない。体形も好みである。儂は期待に胸を膨らませた。

やがて、逸物をブラブラさせながら浴室の扉を開けた男を見て驚いた。

他でもない、件の写真の男だったのである。

 

 浅草の24会館といえば、旅の途中に立ち寄った際、こんなことがあっ

た。

薄暗い乱交部屋で一人の男が、50代と思われる柔道部顧問のような強

面の男の毛深い足を肩に担ぎ、肛門を激しく犯していた。柔道部顧問は掘

られながら逸物をしごいている。

「出る、出る、あぁ」

柔道部顧問は絶叫しながら射精し、男も、

「俺も出る、中に出すぞ~」

と叫んでそのまま動かなくなった。柔道部顧問の直腸内に射精したらし

い。やがて、男は萎えたチンボを引き抜くと、さっさと部屋から出て行っ

てしまった。コンドームは付けていなかった。一方、柔道部顧問もしばら

くすると腰にバスタオルを巻きつけ、床に脱ぎ捨てられたガウンを拾って

出て行った。

風呂にでも行くのだろう。儂もそっと後を追った。タイプの親父だった

ので「あわよくば」と考えたのである。

 

大浴場では、柔道部顧問が身体をシャワーで流し、気持ち良さそうに湯

船につかっている。直腸内にさっきの男の精液が残っているはずなのに、

そんなことはおくびにも出さない風情である。しかし、この柔道部顧問、

どこかで見たことがある気がする・・・・。はて、誰だろう? ここまで

考えて、儂はハッとなった。何日か前、大阪の某淫乱サウナで短髪筋肉質

の男に尻を掘られ、中出しされながら自らをしごき、雄叫びとともに射精

していた親父と同一人物だったのだ。 

90年代中頃の話である。この頃には既に例の病気もかなり蔓延してい

た。儂はなんだか怖くなり、その男と遊ぶことができなくなってしまった。

自分だって3~4日の間に、大阪と東京のサウナを巡り歩いているくせに

全くもって勝手なものである。

 

それより10年程前の話だが、地元で何回か肛門性交に及んだ男が、大

阪の通天閣の下を歩いているのを見かけた時には驚いた。きっと英都かロ

イヤルにでも行くのだろうと思った。そういう儂も、前の晩、英都で散々

遊んだ帰り道だったのだから、相手の男のことをとやかく言えた義理では

ない。

こんな話は地方のホモの巣窟と化した一般サウナにも嫌というほど転が

っている。名古屋のコロナクラブで見かけた男には、日本海側の某サウナ

で出くわした。浅草の24会館でも、地元で遊んだ親爺とサウナ室でばっ

たり会って、周囲の手前お互い知らないふりをした。

 

地元の仲間が集まる地方サウナの多くが廃業する中、今でも細々と営業

を続けるサウナが近県にある。近県といっても、高速道路を使い車でたっ

ぷりと2時間はかかる。通常なら、旅行でいく範疇の遠く離れた見知らぬ

土地だ。そのサウナのロビーでは、地元で電話番号を交換した男が携帯電

話をいじっていた。同じサウナでは地元で話をしたことのあるお仲間が、

談話室で痩せた爺さんのチンボをしゃぶっている場面にもでくわした。

 

しかし、一番驚いたのは、某メーカーの老け専ビデオに出演していた親

爺に出くわしたことだ。風呂場でモデルにしごかれ、儂はモデルとお互い

の口を激しく吸いあった。やがて儂は身体を硬直させ、亀頭からは精液が

弧を描いて放出された。行かせてしまえばそれで満足だったらしく。モデ

ルはさっさと風呂場から出て行った。

満足した儂はシャワーで身体を流した。床のタイルに飛び散った儂の精

液が排水溝に吸い込まれていく。・・・と、その時、別の作品に出ていた

モデル(ややこしいので、こちらはモデル2としよう)が儂の横を通り過

ぎてサウナ室に入っていった。

ちなみにこのビデオモデル2、浅草の24会館でも見かけたことがある。

 

ビデオモデルと知り合いだとか、ビデオモデルにサウナで会ったという

話は巷に溢れているので、さほど驚かない。しかし、地方の寂れたサウナ

で、しかも、1日に2人のモデルに遭遇したのは、後にも先にもこの時だ

けである。

 

 ホモには温泉好き、旅行好きが多い。

でも、その半分建前だ。温泉が好きなのではない。本当は温泉でタイプ

の男の裸を見るのが好きなのだ。そこには、もしかしたら同好の士が入浴

しているかもしれないという淡い期待が混じっている。同様に旅行が好き

なのではない。旅行に行けば、もっとタイプの男に出会えるかもしれない。

その期待に胸を膨らませて、遠くの離れた見知らぬ土地にはるばる出かけ

て行くのである。まだ見ぬ土地には、まだ見ぬ男がいるという訳だ。

 

実際、儂の知り合いの男は定年後、1年の半分を旅から旅で暮らしてい

る。美男子ではないが、かわいい感じのする芋親爺で完全なウケである。

儂はタイプではないが、この種の男は確実な需要がある。この親爺、行く

先々で出会った男に顔射され種付けされている。そして、旅先の男に紹介

された別の男に抱かれ、さらにその男に紹介された第3の男を訪ねて旅を

続けるのである。

「この歳だから、いつ病気になっても構わない」

 その男は豪語している。その勇気に拍手を・・・危険すぎて送れやしな

い。

 

ホモが理想の男を求めるエネルギーはすごいものだ。本理想を探すため

なら日本中の町に出かけ、セックスのためなら何百㎞も離れた発展場を梯

子する。そして日本中に子種をばらまくのだ。t

 

食欲、物欲、性欲、いずれも人間の欲望だが、性欲は自分以外の人、ま

だ見ぬ人との出会いに直結している。外に出て巷の風にあたり、家族以外

の人と接触することは大切なことである。ホモで認知症を患ってしまった

という人の話をほとんど聞かないのは、どうもこの辺りに秘密があるよう

に思われる。

 

性欲が旺盛なうちは、人は惚けたりしない。儂の持論である。











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