股爺さんのエッセイ 87               .




ダーティー・ジャーニー



過日、わが恋心を逸らし、つれなく知らぬふりする超モテモテ爺ちゃんに、

虚しいけれど、あてつけの、傷心の一泊超高速の旅にでました。

 

一日目は立山黒部アルペンルートを通り抜け、金沢は香林坊近いビジネスホ

テルに宿泊し、翌日は兼六園を散策後、白川郷と高山の街並みをブラつくと

いう盛り沢山の急ぎ格安ツアー。

 

新宿の出発に、我が家から間に合わないでもないのに、「乗り遅れるかも知

れないから!前泊にするぞい!」と、山の神に言いおいて舌出し出掛け、ま

ずは上野で二軒。

 

なんとこちらにも、つれないモテモテ爺ちゃんAがいらして、小生が「泊ま

りで“ちゃくれん(男のラブホ)”に行ってくれれば、今から旅行をキャン

セルしまーすッ!」と期待し反応を伺えば、「旅先で理想の爺に巡り会えれ

ばいいねえ!気い付けて行ってらっしゃい」とつれない返事。

 

つれない爺ちゃんAと横町に移動して名物オムレツと絶品メンマ・ザーサイ

を分け合って、アーンなどしながら歌いつつ、「今晩はどこに泊まるの?」

と聞かれ、思わず「カプセルホテルです!」とウソついて、更に安い駒込ホ

テル?へ。

 

就寝専一と決めるも、一応念のため三階を一巡しても、モテモテ爺ちゃんと

一緒した後ですから好みは居られず、納得して睡眠の邪魔が少ない三階の談

話の間の片隅に陣取り、襲い来る数人に「ごめんね、眠くって」「二発出し

たあとなの」などと言ってご退散ねがいつつ安眠。

 

さて6時40分の新宿駅集合でツァーメンバーにタイプは居られずガッカリ。

あずさ2号ならぬ1号の車窓眺め、諏訪ではあの敬愛・憧憬翁に思い馳せ、

塩尻では彼方の木曽爺ちゃんと二晩過ごしたスキー宿を思い出し、松本では

あの感性鋭く優しい日焼け爺ちゃんを想い、立山黒部アルペンルートを通り

抜けて金沢へ。

 

何時もなら意気投合した一人参加の爺婆と長っ尻の夕食を、そくさくと済ま

し、片町の歓楽街へ。

 

五年前に訪ねたバー「おじゃが(仮)」を迷わず見つけ、ドアを開ければ懐

かしや、剃髪のマスターはお変わりなく素敵、客はひとりで30代と若いも

のの、雲水のようないでたちをし、矢張り剃髪の澄んだ一重瞼で若き日の志

ん朝に似た、それこそ様子がいい子で、ホテルにお持ち帰りしたかったが、

ならず、アドレスと電話を赤外線交換し、上野・浅草の案内を指切りで約す。

 

外に出れば土砂降りで、遣らずの雨とはそう上手く行かず、ビニール傘をも

らってホテルには午前一時。

 

翌日は素敵な爺ちゃんをキョロキョロ漁りながら予定通り観光地をこなし、

松本への途中、平湯の休憩所で山の倶楽部の爺婆集団にタイプ爺がおられウ

ットリ。「左手が上高地への徳本峠越えの登山道入り口です」のガイドに件

のエッセイを想い、あずさ32号では好みにあらざるツァーメンバーと飲ん

で語り、あっと言う間に新宿へ。あずさ号の爺狩人も獲物なしの旅でありま

した。

 

二丁目を躊躇し、上野の行きつけで余韻の一杯、「旅の終わりに」「千曲川」

など仕上げの数曲。結局恋の傷は癒えたのか、深まったのかさっぱり分から

ず、今から山の神に電車遅延で後泊するぞ!とも言えず家路へ。何とも美し

き信州を汚す、爺まみれの短か旅でありました。

 

(おしまい)

2017.7.16










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