S.T さんのエッセイ 11                  .




春 愁



今年もどうやら春愁の時期を通り過ぎたようだ。言葉の使い方としては間

違っているかもしれないが、桜が咲き始めるころからしだいに気持ちが沈

んでくる。

寒い時期には早く暖かい春がやってこないかと心待ちにしているのに、い

ざ春がやってくると気持ちのどこかに翳が差してくる。特に桜が咲き始め

ると、ふとこのまま目が覚めないければいいのに、などと取りとめもない

ことを考えてしまう。芽吹きの時期も危ない、身の回りが華やいでくるの

に、気持ちは沈みこんでゆく。

流石にこの歳になると若い頃と違い、気持ちの切り替えもできるようにな

っているから、それほど長く引きずることも少なくなってきたが、身近な

人に変化があったりすると、こちらもつられて引きずってしまう。

こんな暗いことを書くつもりはなかったのに、やっぱりまだどこかに憂い

が潜んでいるのかもしれない。

 

実は、春が来るのがいやな理由がある。こちらの方が比重が大きいかも知

れない。

 

越褌さんは「農作業が出来て嬉しい」とよく書いているが、私は「農作業

が嫌い、出来ればやりたくない」方だ。

冬の間は週に1度の休日に畑に出ないでいられた、しかし春になると折角

の休みなのにのんびりしていられない。以前は週休
2日だったが、2日間と

も畑仕事をしていた、用事があって出かけても気持ちがのんびりできなか

った。

今はほとんど日曜日しか休めない、貴重な休日を“草との格闘”についや

すなんて、と思うと気持ちが萎えてくる(^^)。

 

畑のいたるところで、“どう私キレイでしょ”とでもいいたげに咲いてい

るタンポポ。根が深くて掘っても掘ってもまだ根がある、途中でいやにな

って根を残しておくと、暫くすると咲いている。

スギナもしぶとい、除草剤もあるが高いしナー。笹竹もどこまでも根を伸

ばしてくる。

草刈りをしてキレイになったナー、と思えるのもわずか数日のこと、また

伸びてくる。旱で野菜がクタッとしていても、雑草は元気よく伸びてくる。

こうして休日の貴重な時間を草のためにつぶされて行く。アーこの世に草

なんてなくなればいいのに・・・・。

草がないと、秋になってキレイな虫の音を聞くことも出来なくなるし、そ

れはそれで寂しいものだけれど。

 

という訳で、(どういうわけ?)春が来るとユウウツになってくる。

 

でもね、キュウリやナスの苗が大きくなってくる頃には、(だいぶ先だけ

ど)草取りもあまり苦にならなくなるから、人間なんて勝手なものだなナ

ンテ思ったりもするんだけれどね。

 

わが里は、クマやイノシシよけの柵で地区全部を囲っているんです、おか

げでイノシシはこないんだけどタヌキやハクビシン、キツネが出て来て悪

さをするんです。一昨年なんか、トウモロコシをタヌキだかハクビシンか

に食べられて人間様は1つも食べられなかった。

 

こんな苦労をしてまで野菜を作るより買った方が楽だな、ナンテ思う事も

時々はあるんだけれど。

 

さ、グチばかり言っててもしょうがないので、越褌さんを見習って、日曜

日は草刈りにはげむぞ。











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