S.T さんのエッセイ 26                  .




逡巡(義父への思い)



結婚した時から、いつかは義父に私の義父への思いを告げたい。義父のモノ

に触りたい、触って欲しい、とずっと思っていました。だけど、そんなこと

は不可能だと思っていました、もし義父に打ち明けたら怒られるだろう、へ

たをすればこの家を追い出されるかも知れない、追い出されるくらいならこ

のまま何も言わずに傍にいられるだけで我慢しよう、とずっと思っていまし

た。

 

それが、触れるかも知れないチャンスがやって来たのです、今から7年前の

9月に妻が治療のため2週間入院することになりました。治療と言っても大

げさなものではありませんので、気は楽でした。

娘の勤務の関係で2週間の間に3回、夜、義父と2人だけになる機会があり

ました。その時に何とか思いを打ち明けようと考えました。入院してすぐに

日曜日の昼間2人だけの時がありました、今打ち明けようかと傍にいながら

考えていましたが、やはり明るい時間には打ち明けづらく、言えませんでし

た。

義父は普段から夕食後は居間でうたた寝をします、1時間位寝てから新聞を

読んだり日記を書いて、それから風呂に入るのです。いつからか寝る前に入

るようになりました、その為私が先に風呂に入り「上がったよ」と声を掛け、

それから私は2階にあがり寝るまでの時間を過ごしていました。

 

最初の夜勤の夜が来ました、娘が仕事に出かけた後は義父と2人だけです。

今夜どうやって打ち明けよう、と考えるとテレビを見ていても頭に入ってき

ません。義父はいつものように、うたた寝をしています。思い切って今触ろ

うかとも思いましたが、なかなか勇気が出ません。やはり風呂上がりの方が

いいかなとか、迷っていました。そのうちに義父が目を覚まして新聞を読み

始めます、見たいテレビ番組が終わり風呂に入ろうと思い、「フロ先に入る

よ」と声を掛けると「ああ」といつものように返事が返ってきました。

風呂から上がるといつもは下着を着てから声を掛けるのですが、今日は下心

があります。裸のまま居間まで行き、「上がったよ」と声を掛けました、裸

でいるのを見て何か言うかな、と思っていたのですが、日記を書いている最

中でこちらを見ずに「ああ」と返事を返してきました。それ以上言う言葉が

見つからず、仕方なく2階に上がりました。

本を読んでいても落ち着きません。階段に腰を下ろして義父が風呂に入るの

を待つことにしました。階段の下を通る時、こちらを見るかも知れませんが

その時はその時と思い待ちました。

やがて、テレビを消して、部屋の方に歩いていく音がしました。もうじき通

ると思うだけで、鼓動が早くなります。しばらくして足音がして義父がやっ

て来ました、なんとパンツ1枚でした。義父も2人だけという安心感から部

屋で脱いで来たのでしょうか。風呂のドアも少し開けたまま浴室に入りまし

た。

どうしよう、声を掛けて浴室に入ろうか、それとも何もしないで今まで通り

でいようか、と思いは乱れます。どれくらいそうしていたでしょうか、やが

て浴室の戸が開き出てくる気配がしました。急いで部屋に戻ろうとしたら、

洗面台で歯を磨いているようです、そっと下まで降りて覗いてみました。裸

で歯を磨いています。歳の割にはそれほどたるみのない背中・尻でした。も

うすぐ出てくるどうしよう出てきたところで声を掛けるか、でも足は階段を

上っていました。やがて義父がパンツを手に提げて部屋に入っていきました。

そのうちに茶の間の明かりが消えて、義父の部屋の豆電球の明かりだけにな

りました。思いを告げられなくても裸を見たい、という思いから部屋の入口

まで行きました。暑がりの義父は部屋の戸を開け放って寝ているのです。そ

っと覗き込むとベッドに裸のまま寝て団扇で仰いでいます。大きく胸が上下

していますが、肝心の股間は良く見えません。中に入ろうかと思いましたが、

どうしても足が動きません。しばらく見ていましたが、義父が起き上がる様

子を見せたので、そっと離れました。

どうして、言えなかったんだろう、と悔やむ気持ちと、これでよかったとい

う気持ちがない交ぜになって、なかなか寝付かれませんでした。

 

数日後2度目の娘の夜勤の日です。今日こそは、告白しようと思っていまし

た。娘が出勤して、いつものように後片付けをしてテレビを見て風呂に入り

ます。でも、胸はドキドキしていました、先日と同じに裸のまま居間まで行

き声を掛けました、先日とは違いこちらをちらと見ましたが、「ああ」と返

事をしただけで新聞に目を戻しました。いつまでもそこに居るのもおかしい

ので2階に上がりました。

先日と同じく階段で待つことにしました、別の自分が「馬鹿なことをやって

いるな」と見ています。でも、辞められないのです。やがて義父が風呂に入

りました、そっと降りていき戸をあけ下着を手に取りました。匂いを嗅ぐと

強烈な匂いです、でもそれだけで股間が反応します、自分でも変態だなと思

いました。下着を持って行こうと思いました、置いたところになければ私の

事を呼ぶかも知れないと思い、下着を持ったまま階段の途中まで上がり待ち

ました。

やがて風呂から出てきました、歯を磨いているようです。もうじき下着がな

いのに気が付いて、私を呼ぶだろうと思い待っていました。やはり下着を探

しているようです、でもいつまで経っても呼ぶ気配がありません、私が持っ

て行ったとは考えないのでしょう。いつまでも探させるのはかわいそうなの

で、階段を下りて脱衣場の戸を開け、

「下着を探しているんでしょう、ちょっと借りていたよ。」と下着を差し出

すと、「借りていた?」と不思議そうな声で言いましたが、それ以上は何も

言わずパンツを手に取ると私の横を通り脱衣場を出ていき、玄関の電気を点

けカギを確かめるといつものように部屋の方に歩いていきます。

がっしりした後姿を見ながら、声も掛けられないままただ見ている事しかで

きませんでした。張りつめていた気持ちが萎んでいきます。

何か言ってくれたら、怒ってくれたら、何か言えたと思いますが、ただ何も

なかったように部屋に行かれたら追いかけることも出来ませんでした。

 

後もう1回チャンスがある、その時こそ思いを伝えよう、出来るかどうか分

からないけど、悔いを残さないようにしようと思いました。

(つづく)











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