たんぽぽ爺さんのエッセイ 3               .




秋を探しに


(3) 夕暮れの風がほほを撫でる







いつもの店に行くのさ 

仲のいい友達も少しは出来て

そう捨てたもんじゃない…

 

 このシリーズの出だしは、浅川マキの歌で通すことにしました。これも

僕の気まぐれさでしょう。

あといくつ続くのかはわかりませんが。続けて行くほどに秋らしくなれと

願って。

 

 夕暮や風の撫でゆく小無花果

 

 夕風が犬枇杷の頬なでてゆく

 

 犬枇杷や町でいちばん高い丘

 

と、いうことで今日は「犬枇杷」で詠んでみました。

別名に「小無花果」や「天仙果」などありました。子供のころ田舎では

「チチモモ」と読んでいました。

夏休みの頃はまだ少し硬くて食べるには早いのですが、摘んだそれを指先

で揉んで軟らかくして口へ入れてました。

小無花果とも呼ぶように、熟れてくると小さな無花果のようです。秋にな

り、今が食べごろです。

今の時代に食べる人はあまりいないかも知れませんね。添加物だらけの味

の良い菓子が豊富にあるから。

でも、僕がひとりパクパクもぐもぐしてたら、近くにバズーカ砲みたいな

望遠レンズのカメラ持ってたお爺さんが僕の方をチラチラ見ていたのです。

シャイな感じの横顔が、「私も食べたい」みたいな風に思えました。

それで、ひと満足したところだったから見てない顔してその場を離れて行

きました。

きっとその白髪のお爺さんは僕が去るとすぐさま駆け寄り、「オオゥ!」

と声を上げてむしゃぶりついたことでしょう。

なぜって、何か食べてるのをじっと傍で見つめてる子の顔してたから。

 

 母の乳むさぼりたる日や犬枇杷

 

お爺さんは、赤ん坊の頃の記憶を犬枇杷に辿ったかもしれません。涙を流

しながら。
(ほんまかいな)

熟れた犬枇杷は、授乳の頃の黒ずんだ大きな乳首のようです。

表面の熟れた黒紫色の皮は、青いときと違って、とても柔らかくそのまま

食べられます。味は違うけど、桑いちごと同じくポリフェノールも豊富で

しょう。

プチプチとした食感は、まさに小無花果です。

季語は、晩夏になります。

 

 犬枇杷の熟れて摘みたる指加減

 

 目玉だけ動かすひとひ天仙果

 

 犬枇杷や指のべとつくひみつきち

 










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