たんぽぽ爺さんのエッセイ №9              .




秋を探しに


(9) 愛した男が帰らなかった








あんときあたしは

故郷を出たのさ

汽車に乗って

また汽車に乗って…

 

 朝日楼といふ女郎屋や女郎花

 

ということで、今日は「女郎花」です。

もうだいぶ前から咲いていました。まだ夏の頃から。

昔、右京区の、アパートの二階に住んでた時のことです。二十二、三の頃、

摘んで来た女郎花を空き瓶に挿していました。今じゃ自分でも信じられな

いくらいロマンチストでした。乙女のような。

花は小花がこぼれるけど枯れないものだからずっとそのままにしていまし

た。

するとそのうちとても臭い匂いがして来ました。狭い部屋が、何に例えた

らいいんでしょう。樟脳を燃やしたような
(燃やしたことはありませんが。)

酢と混ぜたような。でもないな。

畳の腐ったような。そう、これが一番近いかもしれません。キュートな(

うでしょ。
)鼻の芯が臭さに耐えられなくなるほどの匂いでした。

女郎花を見ると、遠いあの頃が、鼻の奥から脳へと広がって思い出されて

来るのです。

もしかしたらこの時に吸った匂いが原因かも知れません。僕が露出狂にな

ったのは。

この部屋から、まず、始まったのです。

二階の、四畳半一間の窓を開けたら隣の家の二階が、隣の庭の植え込みの

上に見えました。そこは六十前の夫婦の部屋のようでした。

 

 若き日の覗き露出や女郎花

 

即興で詠みました。いいのかなこんなはしたない句で。

初め、廊下の突き当りの窓から別な家の庭を何気なく見てたんです。する

と、おばさんの裸が見えたんです。胸元を隠すようにして急いで風呂場か

ら母屋へ入って行くところだったようです。

古い家でまだ風呂場が離れてる田舎の家のような作りだったんですね。子

供の声がして、ここの夫婦はまだ若い三十代のようでした。

それであまり興味が湧かず、ここはすぐに覗かなくなりました。

どちらの家も、偶然からでしたね。興味があれば改めて投稿しますが。あ、

無いですね。はい。

 

 八掛のちらりとのぞく女郎花

 

どうも意味深なのが多くなります。花のイメージから来るのでしょうか。

いくつかは真面目な句を。

 

 風に立ちやがて傾ぐや女郎花

 

 おみなへし風のまにまにケセラセラ

 

 おみなへし片ばさみ消ゆ先斗町

 

 翅やぶれし蝶を憩わす女郎花

 

女郎花もそろそろ終りでしょうか。終わる頃は、いろんな昆虫がとまりに

来てるのを見ます。

キリギリスやカマキリやカメムシ、翅の破れたチョウ、ハチなど。みんな

何かぼんやりしてるようにじっとしてます。虫たちも秋は寂しいのかな。

女郎花を揺りかごにして。










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