哲郎さんのエッセイ 3                     .




十一月の公園


(啄木の短歌)



十一月の初旬、公園でのこと。


 「不来方のお城の草に寝ころびて

       空に吸はれし十五の心」


芝生に大の字に寝転んで空を見ている時であった。

啄木のこの短歌が浮かんで来た。

「空に吸はれし」のこの語句が

わが十五の頃、中学生の頃のことを思い出させた。

牛に食べさせる草の上に寝転んで青空を見ていた時のことを思い出した。

心に何もない空白の状態で空を見ているとまさに吸い込まれていくような

感覚であった。

十五の頃が懐かしく思い出された。

あんな時代があったのだと。

あれから五十年経った。

今、あの頃の感覚を思い出したことがとてもうれしかった。

生きているからこそ、すばらしい思い出があるのだと。

つくづく生きていることのすばらしさを感じた。

うれしかった。

そんなことを考えながら大の字になって啄木の短歌を何べんも頭の中で読

み返した。

その日午後三時二十分H2Aロケットが種子島から宇宙に向かって一直線

に飛んで行った。

空に吸い込まれるように。

公園から、鹿児島市内から、はっきり見えた。

あとにはロケットの航跡が白く青空に残った。

 

 

*不来方(こずかた)のお城とは盛岡市の盛岡城址のこと。










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