ギャレスとサウスオキシーのコミュニティ合唱団


                                             夢追い さん



15日深夜のNHKBSの「世界のドキュメンタリー」を見た。取り上げていた

のは、イギリスの田舎町(と書くと怒られるだろうか)にやって来たギャ

レスという合唱指揮者の青年が、苦労の末にコミュニティ合唱団を立ち上

げて、難しい宗教曲をコンサートで歌えるようになるまでの苦労話だが、

合唱に全く馴染の無い人達の募集から合唱指導、ミニコンサートの主催を

経て、地域の人達の心を掴んでいくという感動的な話で、翌日の勤務に差

し障りがあるかなと思いつつつい最後まで釘付けにされてしまった。

サウスオキシーという『貧しく、娯楽の少ない郊外住宅地』に活気と誇り

を取り戻させるべく降り立ち、活動を始めるのだが、人々の合唱に対する

関心も低く、活気のない町で、ギャレスは色んな人と接触してキーマンを

探し出し、数十人のコミュニティ合唱団を作った。

最初はポップスの曲から入り、商店街(日本でいう所のシャッター通りの

ようなものか)で最初のコンサートを開く。ソロを歌うのは、最近引っ越

して来た黒人の女性で、差別等で家に閉じこもりがちだったが、団員の前

での一種のオーディションで全員に選ばれて少しずつ自信と明るさを取り

戻して行く。

家々にチラシを配り、予想以上に集まった聴衆の前で、曲を披露する。そ

れまで自信を持てずにいた団員も聴衆も、初めての試みの成功に自信と誇

りを取り戻して行く。団員の中には、
4週間前に奥さんを亡くした熟年男

性もいたが、沈んでいた気持ちが少しずつ明るくなって行った。

ギャレスは続いて子供たちの合唱団を作る。市内の小学校を廻り、メンバ

ーを集め、障害のある子も何人も参加していて、その中の一人の女の子を

ソロとして選ぶ。彼女は、母親の心配をよそに、ミニコンサートで見事に

ソロの役を果たし、聴衆の中にいた母親が涙を流しているのが印象的だっ

た。

ギャレスは続いてコミュニティ合唱団に若い男性が少ない事から、最初の

勧誘で知り合ったボクシングジムの男性に相談すると、彼は条件付きでジ

ムの若い男たちを参加させる事を約束する。その条件が何とスパーリング

のパートナーをつとめる事だった。

ギャレスは、恐る恐るパートナーをするが、ジムの男性はギャレスの勇気

を讃え、手抜きのスパーリングだった事を白状する。
10人前後の若いボク

サーたちは練習を重ね、数軒のパブを巡って歌を披露し、自信を深めて行

く。面白かったのは、日本では考えられないビール片手のパブでの演奏で、

歌う側も聴く側も一体になって行く様子がよく伝わって来た。

荒れていた若者たちの気持ちも、パブの客との親密な接触で少しずつ癒さ

れて行って、遂にはコミュニティ合唱団に加わって一緒に歌い始める。

ギャレスは、250人を数えるようになった大合唱団に、大きな課題を突き

付けた。

難曲と言われる宗教曲をコンサートで歌おうと言うのだ。ラテン語に苦労

する団員たちは、個別練習を重ね、数週間で聴けるまでに仕上げて行った。

コンサートは、大きな競技場で計画され、戸別にチラシを配り当日までの

練習を重ねるが、当日朝は雨模様、開催が危惧されるが、昼頃から雨も上

がり、大勢の聴衆の前で難曲を歌いきった。鳴りやまない拍手に団員の顔

も笑顔になって行った。

任務を終えて、ロンドンに戻る予定のギャレスを団員が引きとめ、彼は残

留する事を選び、
1年半後後任の指揮者に任せるまでの期間、一流の合唱

団に仕上げて行ったギャレスの人間的な魅力も技術的な面も、全てが小さ

な町の自信と活気を取り戻して行くという素晴らしい展開で、見終わった

後も少し興奮状態で眠りが少し遠ざかり、朝は少し辛かった。

件の熟年男性は、活動の中で新しい伴侶を見つけ、ギャレスにも紹介する。

 

私も多少合唱に関わった経験があり、僅か9週間という短い期間にそこま

で仕上げられるだろうかと驚嘆もしたが、素晴らしいドクメンタリ−だっ

た。

ギャレス・マローンという合唱指揮者の演奏を聴きたいと思う。

久し振りに感動的な番組を見た。





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