二人のスクリーン



                                         そら さん 


(1)



ただ今朝530分。墓の掃除をする一人の初老中島令司74歳。去年妻をなく

し、独り一心不乱に磨き続けていた。独りの生活がこんなにも味気ない。

近所では変わり者でとおり誰も挨拶はするが世間話などする人々は、居な

い。だから今まで年に二度しか詣らない。今はくさるほど暇な時間を持て

余していた。庭と墓石は毎日の時間があってキレイになった。さてと、今

日は何をしようか、前々から気になっていた。終活の準備に入るつもりが、

中島には、同じく変わり者扱いされてる気になる男がいる。終活ノートは

開いたものの。いつも庭の手入れをしていると佇んで見られている。

 

最初はただ目があってしまったと思っていたが、玄関を見つめている男を

見た。中島は身内、従兄弟の顔は浮かぶが、誰一人存命するのは居ない。

日が増すにつれて、不気味に感じてしまう。

 

中島は疑問を解決するために男の家に乗り込んで行く。

 

そんな勇気も体力も持ち合わせて居ない。

生きる事で精一杯なのだ。自分だけの事を考えていたいのだ。

情け無いと心の声が聞こえてくる。

 

どちらでも構わない摩擦は避けたい。相談したいが、勘違いかもしれない。

 

儂の家は貧乏で両親祖父母が建てた小屋に5人で暮らしていた。儂はいつ

も一人で遊んでいた。勿論学校も通って居ない。しかし力仕事は誰にも負

けなかった。
13歳から水道の穴掘り。左官、大工見習い。時には体まで売

って生計に協力してきた。ゴミ処理場で定年を迎えた。酒、タバコ、ギャ

ンブル、女、全く縁がなかった。親同士の勧めで夫婦にはなったが、子供

は出来なかった。常に静かに好きなように暮らしてきた。

 

中島の古希過ぎての変化が、男によって変えられて行く。

 

男の名前は岡元浩次。職業、公務員 59歳。まもなく定年退職者だ。

二人の出逢い。

大衆銭湯に行くと時間帯が同じになる。いつものように掛かり湯をして、

道具を所定の場所に置こうとした時、足がすべり尾てい骨をしこたま打っ

た。回りがそれに気づき集まってきた。

「大丈夫ですか」中島は声のする方に視線を向けた。岡元だった。

「いや、大丈夫じやない」

「私につかまってください」岡元はいとも簡単に中島をロッカーまで連れ

て行ってくれた。中島は同じ言葉を繰り返すしかなかった。

「すまないね」中島は救急車で病院に向かう。

1ヶ月後退院できた。

先ずは銭湯に挨拶に行く。

「また宜しくお願いします」の言葉に涙をこらえた。励まされた。次は岡

元の家だ。背筋をピーンと伸ばし身構えた。



                                                  続 く 









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