二人のスクリーン



                                         そら さん 


(3)



中島にいだいている性志向を包み隠さず話した。中島もトラウマの事を初

めて岡元に話した。

「男同士の世界があるのは知っていたがまさか儂が好かれるとは不思議な

んだよな」

「軽蔑はないですか?」

「それは本人が責任の元で相手を探すことは必要だと思う。しかし儂は君

に良い結果もたらせない。すまないね」

「いいえ、中島さんに伝えられて理解されたことに意味があります。話し

を聞いていただきありがとうざいます。」

「ところで、お爺さんに儂は似てるのかい」

「中島さんは気づいておられると思いますが、我を忘れて中島さんを観て

いました」

「視線は確かに感じてたよ。儂みたいな老いぼれを観て何が楽しいのかわ

からなかった。謎がとけて安心したよ」

「中島さんだったら絶対にもてます。」

「儂がもてる?」

岡元は真剣な目で中島を見ていた。

「今まで、声をかけられた事はないですか」中島は考えた。

「そう言われてみたら銭湯で何回か背中を流してもらったことはあるが、

ひょっとして」

「間違いありません」

「こんなご時世に年寄りの背中を流してくれる奇特な人がいたよ」

「お断りした方がいいとおもいます」

中島は改めて断る勇気を持たなければと強く思った。

 

一週間後。

岡元はある月刊誌を持って来てくれた。中島は恐る恐るめくって驚いた。

「この人達は恋人同士なのかい」

「いいえモデルさん達です」

「恋人でもないのに抱き合えるんだ。それ程までに男同士が好きな人達か、

しかし若い人もいて、おでぶちゃんも、それぞれに体格がしっかりして読

者を煽るんだね。へぇー文通覧もあるんだね。君は利用しないの」

「最初の頃は回送や投稿も利用してましたが、手紙のやり取りが済んで、

いざ会うと、殆どの人が観光がてら会う人が、それっきり手紙は来なくな

ります。残念です。手紙ではいいことしか書いてなくて、会ったら終わり

のパターンを何十回経験しました」

「恋人を作るのも大変な作業だね。今は恋人はいないの」

「いたら中島さんに迷惑かけるようなことはしません。」

中島は返す言葉が見つけられなかった。

「儂でよければ話し相手になってくれないかい」

「こちらこそ宜しくお願いします」

「君の期待にそえないが、いいかい」

「中島さんのままでいいです。」

二人は親子兄弟のように付き合いをした。中島にとって笑顔の回数が増え

て嬉しく頼もしくも感じた。

 

岡元が定年退職した日に、中島は自宅に招き久し振りのビールを味わった。

そして、恋人を連れてきてくれた。

「初めまして中島令司と申します」

「こちらこそお招きいただきありがとうざいます。松本昌次です。岡元君

から親代わりと説明を受けてます」

「くれぐれも岡元君を泣かすような事は止めてくださいね」

「勿論です」



                                                  続 く 









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