白日夢




                                      昼顔 さん 



午後の微睡みの中で夢を見ました。白日夢です。

体験記「縄に酔う男」を投稿した昼顔の、性的被虐に酔い悶え喘ぐ昼顔の

白日夢です。昼顔の名に恥じない白昼夢、ジョゼフ・ケッセルの「昼顔」

で描く処のセヴリーヌの様に、昼に妖しく咲く淫靡な白日夢です。性的被

虐に彷徨う病膏肓の昼顔の淫夢です。





第一章 妻は知っていた! そして・・・



朝から篠降る雨の休日、気怠い昼下がり、子供は既に社会人となって家を

出ての夫婦二人だけの日々の中、二人してリビングでお茶を呑みながら、

「貴方・・モデルになって戴けないかしら・・」と妻が唐突に話し掛けて

来ました。「モデルって、貴女が通っている絵画サークルの・・?」と問

うと、「ええ、そうよ」「モデルさんを捜してるの・・男性モデルを」と

妻は答えました。「モデルって・・僕はもう五十七だよ」「普通は若い人

なのじゃないの・・?」「何を好き好んで・・・」と、私は怪訝気に返し

ました。「そんな事ないですよ」「人物画ですもの、老若男女を問わず誰

でもを、モデルにと、欲する人達もいらっしゃるのよ」「現にサークル皆

さんの総意だったんだもの」と妻は答えました。

 

「ん? だとすると・・貴女はもう安請け合いしちゃったのじゃ・・?」

と質すと、「ええ、図星!」「流石は私の背の君さん、お察しが宜しいわ

ねえ」と妻はほくそ笑む面持ちでした。「じゃあ断れないだろうに、今更」

と返すと、「ええ、仰る通り、今更断れませんわ」「ワタクシと絵画教室

の先生、そして皆様方との間での決定事項ですもの」と、妻は言下にそう

答えました。

 

「何処で・・? 絵画サークルのアトリエで・・? 確か先生の御自宅だっ

たようだけど」「何時・・?」「屋内・・?
それとも屋外・・?」と問

うと、「ええ、先生のアトリエ、明日の日曜日、お昼過ぎから、そして屋

内、アトリエ内ですもの、屋内」と妻は答え、「ヌードですもの・・・オ

ールヌード、屋内ですよ」「貴方さえ宜しければ屋外でも・・」と妻は事

も無げに平然と答えました。

 

「ええっ、冗談だろう」「僕はヌードになるの・・? 然もオールヌード

に・・・」と目を見開いて返すと、「あら、良いじゃない」「貴方、満更

ではない筈よ」「皆様方の前で生まれたままの姿で様々なポーズ・・・」

と、妻は私を嬲る様に煽る様に、舌舐めずりするかの様に目を見詰めて囁

きました。私は言下に拒否する事なく、金縛りにでもあった様に竦んでい

ました。「だから今日の明日にしたの・・・貴方に考え込ませる暇を与え

ない為に、一気呵成に」と、妻は追い打ちを掛けて来ました。

 

「貴方の性癖・・・もう解ってますのよ」「貴方が密かに束の間の性の悦

びに興じてらっしゃる事、御自身の性癖の蠢きに抗し切れず」「ゲイさん

である事も、バイではあってもゲイさん、ゲイのウケさんだと云う事も・

・・」「そしてね、マゾヒストさんでしょう・・?貴方は」「男性間の
SM

プレイ、そんな雑誌や写真を本棚の奥に隠してるのを知ってますよ」「そ

んな雑誌の巻末の広告欄、
SMに特化したサークルの広告、ネットで検索

してみたらヒットしたそのサークルのブログに・・・」「目線、塗り潰さ

れてはいたけどワタクシには、永年連れ添ったワタクシには解りました、

貴方だってこと、写真の被縛体、被虐者は貴方だってことが」「亀甲だっ

たか菱縄だったか・・全裸で縛られた貴方の写真、貴方の雄のシンボルっ

て・・天狗の鼻みたいに真っ赤に、いえ、赤紫かな?
カラーでまざまざ

と・・・薄くモザイクは懸かってましたけど」「吃驚しちゃったのは勿論

だけど・・」「思い当たる節、無きにしも非ずだったの、夫婦の閨でワタ

クシの愛撫に悶える貴方・・・気付いていたの」「視られたいのでしょう

・・?
恥ずかしい姿を」「視られたかったのでしょう・・? 視られて萌え

るのでしょう・・?
より昂るのでしょう・・? 貴方はそんな性癖の男

(ひと)」「縛られて嬲られて昂ってらっしゃるのでしょう・・」「然も

同性の男性から、男性達から」と、それはまるで言葉責めの様でした。

 

「嫌になった・・?」「こんな男を・・・こんな男の妻・・嫌になった・

・?僕を嫌悪した・・?」と私が震える声で返すと、「知った当初は・・

・でも・・・赦す(?)って訳ではなく、理解しようと努めました」「人

は様々、十人十色、性(さが)も様々、何が変態・変質で何が正常かは・

・定義する明確な線引きは無いと云う事を識ったの」「性愛の対象が同性

であっても異性であっても」「社会的にはそれなりの評価を受け地位を得

て、家庭では良き良人、良き父親、波風立てず・・・」「斯かる中での束

の間の自己の性(さが)、抗えないものねえ、持って生まれたのでしょう

から」「黙認しよう、そう決めました、赦したって事なのかも・・」「あ、

そうそう、貴方って、手首や二の腕、身体にも・・・縄目を残しての帰宅

が何度かあったのよ」と、妻は激する事もなく淡々と澱む事なく話しまし

た。

 

「そうだったのか・・・」と呟く私に、「ええ、そうだったのよ」と私を

見据えて囁く妻に「で、会員さん達・・老若男女がいらっしゃると聞いて

たけど」と問うと、「ええ、でも明日は老人って云えば失礼になるかも、

明日の方々は貴方より年長、六十から最年長の方は七十一歳、男性はね」

と答える妻に、「男性は・・それじゃあ、女性も・・?」と質すと、「え

え、いらっしゃるわよ、御夫婦で会員の方の奥様で、五十一歳から六十歳、

貴方と同年齢の五十七歳の女(ひと)もいらっしゃるわよ・・・」「御夫

婦三組の男女六名にワタクシを含めて計七名、そして先生、全部で八名ね」

「偶さか男女同数ね、先生を含めると」「先生は六十一歳、高校の美術の

先生を定年退職為さった方」と、妻は私の身体を見詰め回して答えました。

 

その夜は床を別にしました。五十を過ぎた頃からそうしていましたが、時

には、身体を求め合う時には同衾していましたが、その夜は別にして寝み

ました。眠れませんでした。妻が言うには男性諸氏は何れの方も然るべき

キャリアを積み重ねた方、私もキャリアでは引けを取らないと自負しては

いても、大勢の、男女八名の前で全裸を晒し・・・そのシチュエーション

を想い描くだけで雄竿に血が集まり勃起を呈していました。

 

まんじりとも出来ぬままに、それでも何時しか眠りについた様です。妻か

ら起こされた時は九時を回っていました。「眠れた・・?
眠れなかった

でしょう」「ワタクシの寝室に来るんじゃないかと思ってましたよ」「で

もそれは無駄・・・」「鍵を掛けていたの」「タップリと溜めておいて戴

かなきゃ・・」「お睾丸、重いでしょう、それで良いのよ」爆発しそうな、

暴発寸前の貴方の身体を、男の身体を御覧にいれましょうねえ・・」「間

も無くよ」「あと四時間もしない内に貴方は・・・」「人生の先達者の皆

様方の前で全裸、素っ裸で生まれたままの姿・・・」「八人ですよ、男女

四人ずつの八名・・」「恥ずかしいわねえ・・」「嫌ですよ、暴発しない

でよねネ、皆様方の前で」と煽る妻の目の色はサディスティックな色を湛

えていました。「お食事、要らないわよねえ、貴方って、
SMサークルに赴

くと思しき朝って、朝食は摂らなかったですものねえ」「何をされてたの

・・?
何を期待してたの・・? アヌスのみならず直腸深く・・?そんな

男責めがあるそうですねえ」と、そして「さあ」と真顔に戻って入浴を促

しました。(それまでの夫婦の痴戯に、妻からの愛戯は、私はサディステ

ィックな性戯を受けていました)

 

駐車スペースは充分で、その日に参集される皆さんもクルマで来る筈と云

う事で、私は妻が運転する自家用車の助手席に乗り込みました。アトリエ

は青梅近郊との事でしたので、一時間半を見込んでいました。車中、「貴

方、伊藤晴雨のこと、御存知ですよね、縛り絵師の伊藤晴雨」と前方を見

据えたままの妻が問い掛けて来ました。「うん、でもあれは女性の責め絵

・・奥さんの、然も妊娠して臨月間近の奥さんの身体を逆さ吊りして描い

た責め絵に皆は度肝を抜かれたそうだけど・・」「でも急に如何したの・

・?」と呟き答え、そして問うと、「ううん、聞いてみただけ」「でも、

先生は責め絵の蒐集家さん・・」と妻は前方を見据えたままで呟きました。

 

「如何な御気分・・? お気持ち・・? 今の貴方・・」と、単調な高速道

でハンドルを握りながらの妻が前方を見据えたままで、それでもルームミ

ラーやドアミラーに忙しなく目を遣りながら囁きました。暫く黙った私が

「君は如何なの・・?」と問い返すと、「良人君を差し出す・・貸し出す

(?)かな・・?」「どうぞ御存分に御覧になって下さい、性器もなにも

かもを・・・身体の隅々までを・・視て目で苛めて遣って下さい・・って、

そんな気分」と、三つ年上の姉さん女房の妻は囁いて答えました。「視姦

・・・だね・・」と呟くと、「そう、その通り、ワタクシの目の前で皆様

方からの視姦」と妻は呟きました。「・・・・・よくもまあ、運転しなが

らそんな事、そんな会話が出来るねえ・・」と呟くと、「ええ、ワタクシ

はサディスティックな女、お気付きでしたでしょう、とっくに」ワタクシ

のサディズムの心が蠢きを始めたみたい・・・」「夫婦の褥で貴方に加え

る痴戯の時の様に、サディスティックな女、その時のワタクシは」「その

時の貴方の善がり・・・もう絶妙だったわ~」と妻は前方を見詰めて囁き

答えました。車窓にはのどかな田園風景が広がり、そして流れ去っていま

した。



                                                     続 く 







トップ アイコン目次へもどる    「男大好き・小説」へもどる
inserted by FC2 system