白日夢




                                      昼顔 さん 



第五章 雄の泪・・・そして縋り縄・・・



養殖もの、俄か仕立ての下半身だけの下着女装、股間に主張する雄のシン

ボルは上反りに熱く聳り立ち、寄り添う睾丸は重く感じていました。出し

たい、放ちたい、迸らせたい・・・ 迸りを放ったら重苦しい睾丸の痛痒

感が少しは癒えるのではと、そう思いつつも一方では、ここで迸りを放っ

たら、男の性として射精後覚醒したら、同時に今此処で置かれた妖しい性

の世界から現(うつつ)に引き戻されるのではと、自らで自らに所謂寸止

めを課しました。顔を振り邪念を振り払う様にと試みました。現(うつつ)

の世界に、日常の世界に在する諸々を想い浮かべました。社会性、家庭の

事、いや、家庭の事であるならば妻が・・・ この非日常の妖しくも切な

いこの土蔵の中に妻はいます。こりゃ困った・・・
何が邪念で何がそう

でないのか、もう解らなくなっていました。

 

ピンヒールのハイヒールは危なっかしいものでした。壁際の椅子の前から

土蔵の中央へと促された私は歩くに蹌踉けてしまいました。甲斐さんと妻

から左右からエスコートするかの様に身体を支えられました。「如何です

か、奥さん、これじゃあまるっきり・・・御主人を人身御供に差し出すみ

たいですね、奥さんが皆さん方に」と甲斐さんが妻に、私の身体越しに顔

越しに囁きました。「ええ、モデルの、ヌードモデルのお話しの時もそう

でしたけど・・・」
「それ以上ですわ、今は」 「ワタクシの主人をどう

ぞ皆様方、御存分に嬲って下さいって、生け贄に差し出す思いですわ」


と妻は答えていました。

 

日常の世界に居る筈の、いや、居た筈の妻が、下半身下着女装とも云える

私を抱え、見守り見詰める御夫婦三組と絵画サークルの主宰氏である先生

の前へと・・・ 私が表の世界で被る仮面は次々とズラされ引き剥がされ

る思いでした。 被る仮面はもう必要ないだろう・・・かなぐり捨ててし

まおう・・・ 自らでかなぐり捨てずとも引き剥がされてしまった今とな

っては、妻の目の前で一切の虚飾をかなぐり捨てよう・・・ そう思い始

めていました。

 

性の嗜好を同じにすると思しき男性達はおろか、その社会的なパートナー

たる奥様達の前で、私の性(さが)を更に暴かれ嬲られ責め苛まされたい

・・・ 全裸の姿態はガーターで吊った黒いストッキングのみ、身体に施

されるのは縄化粧ではなく艶かしい黒い透明なストッキング、縄に代えて

のストッキングの化粧・・・

 

妻が皆様方の前で暴露した様に、私はストッキングフェチです。妻が留守

中に、妻のチェストから引っ張り出して履き、そして履いた姿態を鏡に写

しては陶酔していました。敢えて、自身で購った物をとはせず、酔った末

は悟られない様にと破棄するのではなく、妻の物を・・・ 妻に気付かれ

知られるのを密かに期するものがあったようです。心の片隅には。

 

皆様方の前で妻から暴露はされませんでしたが、私はハイヒールに魅せら

れてもいました。履いてみたい、履きたいとする以上にハイヒールそのも

のに。妻は何足かのフォーマル用のハイヒールは下駄箱の中に更に函に入

れて収納していました。家人が留守中であった時の私は・・・ 勃起に被

せるようにハイヒールの踵部を掛けてみました。勃起は猛々しく、落とす

事無く保持していました。(後日談ですが、妻は気付いていたそうです。

微かに染み付いた男が鈴口から滲ます妖しい泪の跡で察したそうです。で

すが叱責や譴責は無く、変態扱いもありませんでした。良く出来た妻、さ

すが三つ年上の姉さん女房、そう思いました)

 

ストッキングとハイヒール・・・ 腰のガーターベルト以外は身に纏うも

のは赦されない己が姿態・・・身体の中心には赤紫色にはち切れんばかり

に雄が主張する異態とも思える己が姿態・・・ 鏡に映し出しこの目で確

かめたいと思いましたが、それは赦される気配にありませんでした。俯い

て見詰めると、漲りは猛々しく聳り立ち、ですが一方では男の泪を止めど

も無く滲ませ続けていました。正しく、紛う事無く、性の蹂躙に酔う被虐

の男が流す涙・・・ 雄の涙だと私は思いました。

 

何を待ち焦がれて流すのか、交接ならば潤滑液ともなろうものを、男女を

問わず交接ならば潤滑液にもなろうものを・・・ですが此処は女性との交

接の場では勿論なく、私の一方の性の嗜好である処の男性との交接の場で

あったとしても、私はウケ・・・ 何の為に滲み流れる泪・・・ 哀しい

のか・・? いえ、哀しくはありません。与えられし性(さが)の悦びに

打ち震えこそ、決して哀しくはありません。歓喜の泪なのであろう、私は

そう思いました。 

 

付き添う様に寄り添った甲斐さんが、その男の涙を指先で掬い取り、そし

てテラテラとはち切れんばかりに光り輝く亀頭に塗り付けました。私は


「あっ、ウウッ」
と呻いて身体を曲げました。はち切れんばかりにテラ

テラと輝き張り詰めたが故になのか、快感に通づるむず痒さは覚えません

でした。「逃げない!」と蹌踉ける私の身体を押し止めた妻が強い口調で

告げるや否や、双丘にピシッと強い平手を打ち据えました。私は「ああ~」

と喘いで引いた腰を戻しました。

 

皆様方が私を取り囲みました。「両手を、両腕を横に、真っ直ぐ伸ばして」

と誰からとも無く告げられた私が両腕を水平に横に伸ばすと、両の肩口

と肘が左右の二人から支えられ抑えられました。松本さんと上田さんでし

た。甲斐さんが私の腰の前にしゃがみ込んで亀頭部へのみの愛撫、刺激を

続けました。「愛液、先走りのカウパー氏腺液、足りますの・・?」


「グランスに塗り付ける昼顔様の涙・・・」 との奥様達の呟きに、「足

りなければこうして・・・奥さんの前ですが」
と甲斐さんは漲る亀頭を、

亀頭部のみをそっと瞬時、口に含みました。私は「アッ!」と短い声をあ

げて腰を引こうと試みましたが叶いませんでした。取囲む方々の一人が背

後から腰を抑えていました。

 

口を離した甲斐さんがしゃがみ込んだままで妻を振り仰ぎ、「奥さんの前

ですが・・・フェラティオ、男が男を愛撫するフェラティオ・・・」


「御主人のモノを味わいたくなりました」「フェラで苛めたくなりました

・・・」
「良いでしょうか・・?」と囁き問いました。「ええ、どうぞ

御存分に」
「ワタクシが知らない処で主人は・・・妖しい密室で殿方に

身を任せ・・・」
「視てみたいと思ってましたもの」 と妻は答えていま

した。「あら、ワタクシも」
「ワタクシ達も視てみたいわあ」 「男性同

士の睦み合を、愛戯の交換を実際に」
と奥様達が口々に囃し立てました。

 

ヌメッとした感触を怒漲に覚えました。甲斐さんの口戯は絶妙でした。亀

頭を責め、裏筋を舌先で舐めあげ、陰茎へ舌を這わせ、一気に怒漲全部を

口に含み・・・ 「ああ・・あああ~・・そんな・・・そんなに・・・も

う・・もう・・」
と喘ぎ身を捩る私に、「もうもうって、牛さんみたい

に・・・」
「如何したの・・?」 「如何為さったの・・?」 と奥様達が

囃し立てました。「如何為さったの・・?」
「逝きたいの・・?」 「逝

っちゃいそうなの・・?」
「ワタクシの目を見て答えなさい!」 と妻が

強い口調で言い放ちました。「・・・ええ・・・はい・・・逝きそう・・

・逝っちゃいます・・・逝かせてえ~」
と喘ぎ答える私に、「いいえ、

逝かせられませんよ」
「まだ本来のモデル、デッサンすら終ってません

からね」
「デッサンは始まってもいませんよ」 「まだまだですよ、逝く

のは」
「それとも・・・迸らせ・・・男性って射精後は覚醒しちゃうん

でしょう、覚醒した中で全裸を晒しポーズを取る事がお出来になるのかし

ら・・?」
「いや、昼顔さんなら・・・全裸を恥部を晒し視られるだけ

で覚醒から引き戻されるでしょうが・・・」と、皆様方が口々に揶揄し囃

し立てました。

 

「如何為さるの・・?」 「逝くの?逝かないの?」 「ハッキリ為さい!」

と妻が強い口調で質し掛けると、甲斐さんが私の怒漲から口を離し 「寸

止め・・・」
と皆に告げました。私は甲斐さんを追い求めるかの様に、

甲斐さんの口戯を追い求めるかの様に腰を突き出し身をくねらせていたそ

うです。後で教えられました。「ですってよ、寸止めですって」
「男性

に取っては辛いのですってねえ」
「一思いに放ちたいでしょうにねえ」

と奥様達の呟きに、「ええ、それはもう」
と返した松本さんが 「辛いで

すねえ・・・可哀相に・・・」
「でもグッと堪えて!」と告げました。

 

「ああ・・・あああ」 と私は泣き出しそうな喘ぎの声を荒い息遣いの中

で漏らしつつも、身を捩って堪えました。日常の、平素の世界に想いを馳

せてみました。妖しい性の世界から抜け出す為に、高揚感を紛らせ逃れる

為でした。会社の事、仕事の懸案、家庭の事、おっと、家庭の事では気が

紛れません、逸らし逃れる事が出来ません。妻が目の前に・・・私の前で

嬲り蹂躙に加わっています。ですが首を激しく振って堪え忍びました。辛

うじて、辛うじて堪えました、踏み止まりました。

 

「逝っちゃえば宜しいのに・・・」 「逝かせて差し上げましょうか・・?」

と、和装に襷掛け、額には白い鉢巻の志津奥様(甲斐さん御婦人:五十一

歳)が呟き、そして囁きました。「いえ、逝っちゃえば覚醒して普段のお

姿に・・・」
「本来の羞恥が込み上げ・・・」 「男性って・・・射精し

てしまえば・・・」
と同じく和服の袖を襷掛けで捌き、額には白い鉢巻

姿の綾香奥様(松本御婦人:五十七歳)が呟きました。「ええ、そうです

よ」
「男って、男の身体ってそうなんです、御存知でしょうけど」 「寸

止め状態って辛く苦しいのもなのですが・・・昼顔さんは辛く苦しいもの

が、性的にネッ、それもお好きな様ですが・・・」
などと、男性陣三人

は荒い息遣いの中に喘ぐ私の顔を見詰めて奥様達に囁いていました。

 

絵画サークル主宰氏の先生が、「お可哀相にねえ・・・皆さんで嬲って・

・・」
「でも、兎に角、先ずはデッサン」 「昼顔さんの妖しいストッキ

ング姿を先ずはデッサンしましょう」
「絵画サークルですからね、此処

は」
と微笑みながら皆を見回して告げました。

 

男性三人が私に取り付く様に、「両腕を上にあげてえー」 と告げた後、

私は胸縄を掛けられ、腹部にも幾重にも縄が巻かれ、そして腹部の縄とは

別に股縄を掛けられ、それ等黒い縛めの縄各々は、天井の梁の滑車から伸

びる生成りの縄に結わえ付けられました。「それー」と掛け声と共に先ず

股縄に絡めた縄が引き上げられ、慣れないハイヒールでただでさえ身体の

バランスに窮している私はハイヒールが脱げそうになりました。次いで胸

縄と腹部の縄とに梁の滑車からの別の縄が結わえられ、それから私は背を

押されました。

 

お辞儀の姿勢、最敬礼の姿勢でした。「足を開いてえー」 「開き気味に」

「今度は閉じてみて」 との指示に従う中で、私は前傾の姿勢、最敬礼の

姿勢で支え吊られました。私は自ずとから上にあげていた両腕を頭の後ろ

で両手を組んでいた様です。「良い心掛けだね」
「でも頭の後ろでは縛

りませんよ、両手は」
「先ず・・・背は曲げない!」 「反らす!」と、

剥き出しで突き出す私のお尻をピシャピシャと叩きながらの男性達が告げ、

私は両手を頭の後ろで組んだままに前屈のお辞儀姿勢の侭で背を反らせま

した。

 

私の顔の前に太い縄が、握り拳の指だけが作る太さ程の生成りの縄が、ま

るで揺れるブランコの様に目の前で揺れました。揺れるその太い縄は滑車

は通さず、直接梁から伸びていました。縄の端部にはコブがあり、それは

端部から三段、夫々15
cm程の間隔を開けて三段のコブが作られていま

した。生成りの太いコブ付き縄の揺れが治まりました。私の顔の向こう、

離れた処でした。

 

「縋り縄・・・」 「昼顔さんが縋る為の縄です」 「縋って泣くもよし」

「縋って喘ぐもよし」
「縋って啼いても良いのですよ」 「バランスに難

あるでしょうから・・・縋る縄、ええ、昼顔さんが縋る縄」
「さ、縋っ

てみなさい」
と男性三人が口々に囁き、私は両手を伸ばして微かに揺れ

続ける縄を捕らえ、そして両手で縋り付きました。両肘を曲げて縋り付き

ました。それからハイヒールに前屈姿勢と云うバランスを取るに難ある私

の身体を支えるかのようにして、梁の滑車を通った縄が吊り加減を、支え

加減を調整されました。

 

「セクシー・・・月並みな言葉ですけど・・・セクシー・・・」 「ハイ

ヒールに黒いストッキング・・・ガーターで吊った黒い透明なストッキン

グから透ける肌・・・」
「剥き出しの裸のお尻・・・突き出す剥き出し

のお尻」
「ストッキングのウェルト(穿き口)から覗く太腿・・・」

「一見して女性と見紛うばかりですけど・・・」
「でも股間には・・・」

「ええ、そうよねえ、雄のシンボルが睾丸を引き連れてらっしゃいますも

のねえ」
と奥様達三人が呟きました。妻は無言でした。

 

「慣れないハイヒールで、いや、履き慣れた女性でもこんな姿勢はバラン

スを保つのが無理?
辛い? かも」 「そんな中で、さあ、良く御覧になっ

て下さい」
「バランスを保とうと為さるが故の筋肉の張りを」 「脹脛や

大腿部、お尻には尻えくぼ」
「黒で透明なストッキングなるが故に筋肉

の輪郭線が強調されているでしょう、黒い輪郭線で・・・良く御覧になっ

て下さい」
と主宰氏の先生は、皆様方に対して斯かる主旨を説明してい

ました。

 

ガタガタとイーゼルを並べ立てる音がしました。縋り縄に縋った私が振り

向いて見ると、イーゼルの並びは臀部に対して扇形の展開でした。私は縋

り縄に縋り付き、ハイヒールの爪先に力を入れて踏ん張る中でそっと目を

閉じました。縋り縄に縋って・・・



                                                     続 く 







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