ひとひらの


                                         あまね さん 



(4)電車を待つ



「午前6時半頃桜夙川駅構内で起きた人身事故により電車が大幅に遅れて

います。新快速につきましては間引き運転を行っておりますのでホームの

列車案内表示にご注意ください。早朝からJR御利用のお客様にはご迷惑を

おかけ致しまして誠に申し訳ございません」と標準語で機械的な印象のア

ナウンスしている。

最近はなまりのある車内放送、構内放送を聴いたことがないような気がす

る。

やはりこういう場合は標準語がいい。

人身事故という喜べない状況でなまりの強いアナウンスは可笑しいでしょ

う。

話は横道にそれるが、ピーチ航空のアナウンスがわざとらしく関西弁を使

うが、親しみが沸くどころか「客をなめとんかい」と文句を言いたくなる。

気持ちが悪いよ。

 

「あーあ、また人身事故」と漏らす人もいない。

もう慣れきっている。

冬の冷たい空気がホームに溢れている人々をまともに攻撃するが、殆どの

人が次の電車の到着を忍耐強く待っている。

午前8時を回ると、通勤客の姿は殆ど見られず、学生のような若者が殆ど

である。

みんなスマートフォンか携帯電話とにらめっこをしている。

三宮まで半時間かかる地方のこの駅に午前九時近くに現れる働き盛りの男

性はもちろん少ない。

 

新快速が到着するまでの十分足らずの間向かい側の快速電車内で待つこと

にした。

冬の間快速電車のドアは自分で開け閉めする。

快速電車はこの駅ではがらがらなので、電車に入りドアを閉めて暖かい社

内で待つことにした。

 

みんな車内で待ったらいいのにと思いつつ、ホームで待つ若い人々を観る。

服装は千差万別と言ったところか。確かにいいものを着ている人も多いが

みんながみんなかっこいいというものでもない。

ただ若い女性の殆どが睫毛が長く目が大きく見えるように化粧している。

 

車内の向かい側の座席で一生懸命化粧をしているのを無理やり見せられる

場合もあるし、みんな同じような目に見えてくることに驚いた時期もあっ

たが、それはもう大分前のことだ。

 

乗客は殆ど若い方であるが、そうでない年配の方は男性と女性が半々位だ。

年配の方の印象は決していいものを着ているわけではないが殆どが小ざっ

ぱりしている様に思える。

 

目を凝らして観察するわけでもないが、ほんのたまにいい人が目に付く時

がある。

それまで興味のない若い女性のいろんな服装を見せ付けられていた酸欠状

態から開放される一瞬だ。

 

「うーん、いい感じ。特に白髪がいい」

 

顔も好み、服装もいい、全体の感じが好みの人を見かけると、すぐに気持

ちがしゃんとする。

それまでのぼやけた頭が回転しだす。

同じドアに入ろうと寒いのも気にならず近くに行く。

 

いい人が目に付かない場合は、新快速の座席に座るなり目を瞑り目の前の

女性が目に入らないようにして、時には化粧の邪魔にならないようにして

三宮まで居眠りし、三宮の喫茶店のコーヒーで頭が回転しだすというのが

僕の毎日なんです。



                                         







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