ひとひらの


                                         あまね さん 



(5)オアハカにて



メキシコのどの町にもソカロと呼ばれる中央広場ともいうべき所がある。

ソカロと言ってもメキシコシティーのソカロは巨大すぎてとても憩いの場

所とは言えないが、小さな街のソカロには広場を囲むように教会があり、

ホテルがあり、市の行政施設があったりと町の中心で催し物などがよく行

われる。

 

メキシコ南部にあるオアハカのソカロは明るくて気持ちがいい。

いつも協会とは反対の通りにある小さなレストランの広場に面したテーブ

ルで朝食をとる。

 

「コーヒーとパンお願い」

「はいよ」

「今日も天気がいいね。観光客も多いし」

「近頃は中国からのお客さんが多いね。と言ってもわしらには中国人も日

本人も同じにしか見えないんですがね」

「今でもチノ(中国人)チノとからかわれることがあるよ」

「ところで今日の夕方からマリンバの演奏会があるの知っている?」

「ほんと、マリンバ大好きなんだ。絶対聞きにくるよ」

 

夕方、こちらで知り合った高校の社会の少し年配の先生と待ち合わせてソ

カロにやってきた。

 

「マリンバはね、初めてメキシコに来た時にメキシコシティーのサン・ア

ンヘルで民族衣装を着たグループが演奏しているのを聴いてから好きなん

だ。ものすごく感動したことを覚えているよ」

「僕らメキシコ人でもマリンバを聴く機会は少ないからどんな曲を演奏し

てくれるのか楽しみなんだ」

「僕はね、あの時にも聴いたんだけど「ラ・ゴロンドリーナ」が一番好き」

「今日も聴けたらいいね。リクエストコーナーがあったらお願いしたら」

 

多くの人が夕涼みがてらにソカロに集まってきて、この地域特有らしいジ

ェラードを食べながら待っていると、演奏が始まった。

演奏しているのはこの地域のマリンバ愛好会。

「シエリト・リンド」が始まった時には、大人も子供も、アベックも皆口

ずさむ。

 

「リクエスト受け付けるらしいよ」

「じゃ「ラ・ゴロンドリーナ」リクエストしよう」

「紙に曲名書いて。僕が担当者に渡してあげるよ」

 

そうこうしていると演奏者がマイクで、「日本の方から「ラ・ゴロンドリ

ーナ」のリクエストを頂きました。メキシコに来た当初聴いて大変感動し

たそうです」

 

拍手が起こり口笛も拭く人もいる。

少し照れくさい。

演奏が始まった。

マリンバの心地良い音色が、「ラ・ゴロンドリーナ」の曲がソカロに流れ

る。

 

「まもなく舞子です」

「舞子?」

目を開けると明石海峡大橋が光り輝く海を跨いでる。

「夢か」

暖かい電車の中で眠り込んでいたようだ。

懐かしいメキシコ。

いろんな思い出があったオアハカの街。

 

あんなに優しかったホルヘは今も元気なんだろうか。



                                        







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