ひとひらの


                                         あまね さん 



(6)免許更新



北西の風が強い明石駅前で、夏の暑い時に待つよりましと思いつつ並んで

乗った満員のバスから弾き出され運転免許センターまでのわずか50m程

を急ぐ。

平日を選び、時間をずらしたつもりでもこんなに一杯かと独りごちる。

 

3年か5年に一度の更新なので受付の要領が簡単なことさえ感覚として忘れ

てしまっているので、とりあえずは受付補助をやっている中年女に何をし

たらいいのかを尋ねる。

まず用紙を頂くのに葉書などを用意して並ぶ。この最初並ぶ時点では他の

みんなもそうなんだろう、ただ少しでも早く用紙をもらいたいという気持

ちなので一杯なので余裕がない。

用紙に住所などを書きその後収入印紙代金を払うために並んでいる時には

やや落ち着いてきて、交通安全協会への協力金なんていう無駄なお金を払

う余裕がないので払わないことをきちんと言うことと改めて念を押す。

 

「交通安全協会へのご協力金はお願いできるでしょうか」

「いいえ」

以前は払っている人が多かったので、断ると怪訝な顔をされた思い出があ

るが、近頃は払う人が少ないので、担当の女性は「そうすよね」という納

得顔をする。

 

次は目の検査のために並ぶ段になると、焦っても仕方がないと改めて自分

で納得する。他の人ももう落ち着いている。

目の検査の後やっと正式な受付の列に並ぶ。

 

並んでいる時に、何年か前の更新に来た時も「老若男女」と言う言葉が頭

に浮かんだことを思い出した。

単に老若男女だけでなく太った人も痩せた人も、優しそうな人も怖そうな

人も、高そうな服を着ている人も安っぽい服を着ている人も、髪の毛の薄

い人もふさふさの人も、そしていい感じの紳士も好みでないおっさんも大

人しく並んで順番を待っている。

やはり日本はいい国なのか。

一応ここは警察のテリトリーだからか。

そして最後に写真を撮るために並ぶ。何年も見なければならない写真だか

ら失敗のないようにいい写真を撮ってくれるんだろうかといつも心配にな

る。前の人が真剣に撮ってもらっているのを見るとますます心配になって

くる。

 

「髪乱れていませんか」

「気になるようでしたら、鏡を見てください」

事務的にこなす女性はなれたもの。毎日こうやっていろんな人、男前も別

嬪さんもそうでない人にも同じように応えていることを思うと、楽な仕事

なのかどうか分からなくなる。

 

写真が終わると次は講習を聞く。

今回はスピード違反が見つかったので、2時間講習だ。

2回へ上がり講習が始まるまでゆっくりと待つ。いい人が三人いたなと思

いながら自動販売機のコーヒーを飲みながら待つ。

 

講師が来手て講習会が始まった。

六十代半ばの実直そうな人だ。

僕よりはやや小柄であるが髪の毛は適当に薄くなり日に焼けた顔には何十

年も警察をやってきたという自信が出ている。

現在のこの免許更新センターでの講師としての仕事にも誇りを持っておら

れようだ。

説明の仕方もうまい。

パンフレットを自分の顔の高さまで持ってきて説明される手のひらもきれ

い。

 

やはり交通事故は怖いものだと改めて思いもするが、今まであの講師と同

じような年かっこ、容姿の人とプレイしたことを思い出してしまう。

洋服を脱ぎフィットネスクラブで鍛えているという盛り上がった胸と引き

締まった腹とお尻を存分に見せてくれ、明るい所で存分にお互いのものを

銜えて、キスもし、お互いを扱きあった一ヶ月ほど前のことが鮮明に浮か

んでくる。

あの講師の方も月に何回位自分の立派なものから精液を発射するんだろう。

あの真面目な講師の方が硬い表情を崩してがむしゃらに僕のものを銜えて

くれることを想像してしまう。

もちろんこちらもこちらのテクニックを全部出し切りいかせてあげたい。

 

もしも悪いことをして取り調べられるんだったら、あのような刑事に取り

調べられたい。

あんな人だったらすぐに捜査に協力してしまうよ。

あんな優しい刑事さんなんていないのかな。

怖い刑事だったら、北風さんと同じで何も喋りたくなくなり、次のように

言うだろう。

「年配のいい感じのやさしい刑事さんはいないんですか」

 

講習も終わり新しい受け取った免許証に写った間の抜けた自分の写真を見

て、この免許証をしげしげと見ながら注意されるのは、たとえいい感じの

警察官にであっても、やっぱりない方がいいと帰りのバスの中で思った。



                                             







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