愛しの寅さん


                                         ともしび さん 


その2


秋夫は自分がサイトの男に送ったメールの返事を読んで驚いた。

まさか直ぐに返事が来るとは最初から思ってはいなかったが、それ以上

に驚いたのは、相手があまりにもストレートに思っている事を書いて来た

からだ。

黄昏と名乗る男から届いた返事は、肩の痛みをどうしたら少しでも和ら

げる事が出来るのかという事に終始していた。

そして、その気があれば会う事も考えるが今の時点では何とも言えない

というものだった。

相手からはその日の内に返事が届いたが、直ぐに返事を書かなければと

思っていても、仕事や用事に追われてしまい直ぐには返事を書く事は出来

なかった。

それでも相手が自分の事を気遣ってくれているのが解り嬉しくなった。

そして、2日ほど経ってようやく返事を書く事が出来た。

「早速の返信メールありがとうございます。今夕のお風呂から実行しよ

うと思います。歳が歳だけに治るかどうかわかりませんが、少しでも楽に

なれば嬉しいです。気持も身体も若いつもりですが、実際、歳を感じる事

もあります。これからもよろしくお願いします。」という返事を送った。

すると、それから1時間も経たない内に相手からメールが届いたのには

流石に驚いた。

「あなたが私に何を望まれているのか知りませんが、単にマッサージだ

けであればお付き合いする気はありません。私は自分にとって愉しい時間

を提供してくれた相手への感謝の気持ちでマッサージをやっているので、

頼まれたからやりますという事ではありません。気が向くと日帰り温泉で

マッサージをする事もありますが、自分が興味を持った相手のチンボを触

る為にやっているだけです。あなたも、私のマッサージを望まれるのであ

れば、それなりの覚悟はしておかれた方が宜しいと思います。」

秋夫は自分が思っていた以上に早く二度目の返事が届いたのにも驚いた

が、自分の心の中を見透かされたようで驚きのあまり直ぐには言葉が出な

かった。

確かに、秋夫も男は好きだが、いきなり寝て欲しいと書いてしまったら

相手に嫌われると思って、かなり控えめに書いたのだが、男の方は最初か

ら寝る気があるなら面倒を見ても良いと書いて来たのだった。

これには流石に驚いたが、此処までストレートに言われたのなら、清水

の舞台から飛び降りたつもりで、思い切って自分の思っている事を相手に

ぶつけてみるしかないと思った。

秋夫は今年72歳になる小柄でやせ形の何処にでもいるようなお爺ちゃ

んだ。自宅で商売をしている関係で、今でも店に出て毎日お客の相手をし

ている。

子供の頃から頃から、親父らが好きで小学校に入ってからも女の子と遊

ぶより常に男友達と遊んでいた。

そして、たまに同級生の家に行き、その父親を見ると胸が熱くなるのだ

った。

そんな子供時代を過ごしていた秋夫だったが、思春期になり、自分が男

好きだと気づいた時から秋夫の苦しみが始まった。

都会なら色々な場所へ行けるし、様々な情報も入って来るが、田舎故に

そういった情報が入る事もなかった。

その為、悶々とした日々を送ってはいたが、こればかりは誰にも知られ

る訳にはいかないので、仕方なく一人で慰めていた。

26歳になった時、親戚の叔母さんが見合いの話を持って来た。それは、

秋夫が次男だったのと、相手が一人娘という事もあり、最初から婿養子と

しての縁談だった。

最初は父親もあまり乗り気ではなかったが、相手の両親に拝み倒される

格好で結婚が決まった。

勝ち気な娘で、相手の両親もはらはらしていたようだが、秋夫がとても

物静かなので、これなら上手く行くかも知れないと、ほっと胸をなで下ろ

した。

婿入り先は自分の家と同じように商売をしていたので、元々生真面目だ

った秋夫は身を粉にして働いた。

そのお陰で、いつしかお客の信頼も得られるようになり、義理の父親か

らも大事にさせるようになった。

然し、妻の方は相変わらずで、時折、不満をぶつけて来るのだった。

それは、秋夫がセックスに対して淡泊だったからに他ならない。

元々、男が好きな秋夫にとって、妻とのセックスはある意味、苦痛だっ

たが、それでも子供を作らなくてはならない、という義務感で妻とのセッ

クスをしていたので、少しでも早く終わってくれる事を願っていた。

そんな訳で、妻は時折、不平不満を言っては秋夫を悩ませるのだった。

それでも、何とか跡継ぎが生まれてくれたので、両親も喜んでくれ、や

っと自分の役目が果たせたなと思った。

妻とのセックスは相変わらずだったが、秋夫も男なので身体が疼くと妻

を抱く事でモヤモヤした気持ちから解放された。

然し、元々男が好きだっただけに、こころの隅には常に男に対する想い

が有った。

2年前、妻が他界してから一気にその気持ちが頭を持ち上げ、街の本屋

で見つけたサムソンを買って来て貪るように読みふけった。

そして、通信欄を通して一人の男と出会い、幾度かの逢瀬を重ねたが、

それでも長年の想いを果たす事は出来なかった。

そんなある日、息子が呆け防止の為にと言ってパソコンを買ってくれ、

使い方を教えてくれたので、一気にインターネットの虜になってしまった。

ネットの世界にはまり込んでしまった秋夫は、男の裸をもっと見たい、

もっと知りたいと、思い始め、ネット通販でビデオを買うようになってい

た。

そして、いつしか、ビデオの世界で行われているような事を自分もやっ

てみたいと思うようになった。

然し、田舎の故に都会と違って簡単に男と出会える訳ではなかった。

夜になると寂しさを紛らわす為に、男との出会いを求めてネットサーフ

ィンを繰り返していた。

そして、男だけのサイトがある事を知り、何気なく飛び込んだ処、そこ

には、自分が夢にまで描いていた世界があった。

それからは夜ごとサイトを覗いては色々な日記を見たり、写真を見て楽

しんでいた。

そんなある日、ふと目に止まったのが、自分より7歳年下の男の褌姿だ

った。

その男は白い越中褌を締めて、立っている姿の写真を載せていた。

勿論、顔は判らないが、肌の艶と男の醸し出す雰囲気に何故か惹かれる

ものを感じた。

そこで、思い切って相手にメールを送ったのだが、まさか、その事によ

って自分の人生が大きく変わって行くとは、その時は夢にも思わなかった。



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