愛しの寅さん


                                         ともしび さん 


その3


 寅さんから返事が来たので早速、返事を書いて送ったが、何時まで待っ

ても来ないので、どうしているのかと気になる比呂司だった。

別に嫌われている訳でもなさそうだが、あまり返事が来ないので何とな

く落ち着かない。

遠くの男なら会う事もないだろうと思っているので気にもならないが、

車で一時間も走れば会える処なので余計に気になるのだった。

あまりメールを送るのもどんなものかと思いながら再度メールを送って

みる事にした。

「先日メールを頂いて以来、音信不通になっているのでどうしておられ

るのか気になります。最初は単なる疲れかと思っていましたが、五十肩と

いうお話でしたので、ちょっと気になっています。五十肩の場合は無理し

てしまうと後々響きますし、却って長引く事が多いので注意が必要なので

す。痛みは簡単には治まりませんが、肩を冷やしてしまうと益々腕が動か

なくなりますので、日頃から肩を冷やさないようにする事も大事です。私

も一昨年は左肩で半年苦しみましたが、暫くして今度は右肩が五十肩にな

ってしまい、元に戻るまで1年半も掛かってしまいました。そんな経験が

ありますので、あなたの事が気になったという訳です。」

そんなメールを送った翌日、待ちに待った寅さんからやっとメールが届

いた。それを見てやっぱり嫌われていなかったんだとほっと胸をなで下ろ

す比呂司だった。

自分が過去において何度も辛い思いや苦しい思いをしたので、辛い、苦

しいと言われるとつい自分の事のように心配してしまい、その為、相手に

とってはそれが重荷に感じられるのだと思う。

頭では解っていてもつい、お節介を焼いてしまうのが比呂司の悪い癖で

もあるし、また良い処でもある。

「おはようございます。御礼のメッセージも差し上げなくてすみません

でした。黄昏さんの助言であれ以来実行していますが、ある程度時期がこ

ないと治らないようです。運動をしていますがこればかりは年齢がくると

一度はなるようですが私はこれで3回目です。右手を主に使っていますが、

利き腕が左ですのでいずれも左手ばかりなっています。気長に待つことに

なりそうです。」

そのメールを読んだ時、この人は真面目なんだなと思った。そして、い

つか会って楽にしてやらなければならないと思った。

どんな仕事をしているのか解らないが、出来る事なら一日も早く楽にし

てやりたいと思うようになり、再びメールを送る事にした。

「あなたの仕事がいつお休みなのか解りませんが、私は時間的にはゆと

りがありますので、あなたがもし、都合をつけてくれるのなら会いに行く

のは構いません。仕事柄、かなり無理をされているようなので、お目に掛

かってどんな具合なのか?確認してみたいと思います。」というメールを

送った。

本当はもっと長いメールでも良かったが、あまり長いると相手に嫌われ

る可能性があるので少し短めにした。

寅さんは軽く考えているようだが、此処まで来るようでは腕が楽に動く

様にする為には相当な時間が掛かるなと思った。

年齢的な事もあるが、それ以上にどんな仕事をしているのか、どんな生

活をしているのかで大きく違って来るので、一度会ってゆっくりと話を聞

いてみる必要があるなと思い始めていた。

メールを読む限り、本人は気づいていないようだが、どうやら五十肩だ

けではないような気がする。

確かに、70過ぎた今でも仕事をしていれば他の人達とは違ってどうし

ても身体に無理が出るが、肩の痛みは恐らく腕と背中、そして、脚の疲れ

が複合しているのではないかと思われた。

確かに、肩の痛みが一番強いので本人は恐らく肩だけが原因だと思って

かも知れないが、実際は身体全体のバランスが崩れているので、肩だけを

治そうとして無理ではないかと思い始めていた。

何れにしても実際に会って相手の身体を触ってみないと何とも言えない

が、少しでも楽にしてやれたらと思う比呂司だった。

メールを送って暫くして寅さんから再びメールが送られて来た。

「今晩は、肩の痛みを心配してくださり、都合が合えば訪問して下さる

こと嬉しい限りですが、現在の事情を知らせていなかったこと、すみませ

んでした。お気持ちは大変有り難いのですが、家庭の事情で暫くは身動き

が取れなくなっていますので、当分はお目に掛かる事が出来ません。自分

の事は我慢できる程度ですから、一段落したらお願いしようと思っていま

すのでよろしくお願いします。頼り甲斐のある人にめぐり逢えてうれしく

おもいます。」というメールが届いた。

このメールを読んだ時、きっと人には言えない事情があるのだと思って

暫くはそっとしておく事にした。

自分自身、毎日が日曜日みたないものなのでいつでも気軽に飛んで行け

るが、相手はまだ仕事をしているので勝手に押しかけてしまったら相手に

迷惑を掛ける事になるので、暫く様子を見るしかないと思い始めていた。

一方、秋夫方は自分が何気なく送ったメールに対してきちんとした返事

を書いて来る黄昏という男に対して嬉しい反面、戸惑いを覚えていた。

それは、仕事柄色々な人に会って来たが、一度も会った事のない人間に

対して此処まで親切にアドバイスしてくれる人間に会った事がないからだ。

それ故に、本当に相手の言葉を信じて良いものだろうか?と思い始めて

いたのだった。

然し、一方では黄昏という男に対する憧れに似た気持ちと同時に、少し

でも肩の痛みが軽くなってくれたらどんなに嬉しいだろうという思いが複

雑に交差していた。

そして数日後、黄昏と名乗る男から再びメールが送られて来た。

「あなたがメールを寄越さなければ私もあなたの存在は知りませんでし

たし、興味を持つ事もありませんでした。何時もなら、セックスが目的で

男と会いますが、今回はあなたのマッサージを中心に考えていますので、

セックスがあるどうかはその時のあなたの気持ち次第という事になります。

メールを読んで、あなたがとても苦しんでおられるのが解りましたので、

私に出来る事でその痛みと苦しみから解放してあげられたら!というのが

正直な気持ちです。本格的なマッサージをするのには、それなりの場所が

必要ですが、誰かに見られていても構わない!と言うのであれば、何処の

日帰り温泉でも構いません。他の人には見られたくない!出来たら、マッ

サージの後に少しでも愉しんでみたいと言われるのであればホテルへ行く

事になります。何れにしてもあなたの気持ち次第です。」

確かに相手の気持ちは嬉しいが、今は自分自身がどうする事も出来ない

ので返事を渋っているが、その事が相手の気持ちに益々火をつけてしまっ

たのかも知れないと思い始めていた。

この相手には正直に自分の気持ちを打ち明けないといつまでも待っては

くれないだろうし、またこの相手を逃がしたら二度とこのよう男には巡り

会えないかも知れないと思うのだった。そこで、今までひた隠しにして来

た自分の胸の内を打ち明ける事にした。

翌日、寅さんからのメールを読んだ時、やはりこの人は自分の思ってい

たような人だったのかと思った。

それは、メールの中にウケの体験をしてみたいと書いてあったからだ。

メインの写真を見た時、何となくウケの匂いを感じたので、もしかしたら

と思っていたが、やはりそうだったのかと思う比呂司だった。

「お早うございます。あなたのメールとても嬉しく拝見しました。正直

に申し上げますと、初めてメールを差し上げた時からあなたと寝てみたい

と思ってはいましたが、最初から寝てくれと書いてしまうと嫌われてしま

うのではないかと思って書くのをやめました。然し、あなたから寝る気が

無いならマッサージはしないというメールを頂きましたので、いつまでも

黙っている訳にも行かず、正直に自分の気持ちを書く事にしました。未だ

ウケの経験はありませんが、ビデオを見ていると堪らなくなるので、もし

かしたら自分はウケではないかと思うようになりました。ですから、ベテ

ランのあなたにウケとして開発して頂けたらと思っています。」

このメールを読んだ時、比呂司も頭を抱えてしまった。それは、いつに

も初釜の相手をした事がないので、果たして何処まで相手を悦ばせる事が

出来るかという思いがあったからだ。

最近は少しでも疲れが残っているとチンポの起ちが悪くなり、油断して

いると入れている時に抜け掛ける事もあるので、そうなった時に困ると思

ったからだ。

然し、乗り掛かった舟という事もあるから思い切って受けて立つしかな

いと思うのだった。



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