マール爺と忠犬ブブ


                                         アッチ さん 


(3) 笹川流れの巻


前編


 マール爺は忠犬のブブとともにある晴れた日、代々木公園に遊びにきて

おりました。

ベンチで休んでいたところ、いかにもマール爺が好きになりそうな白髪の

紳士がベンチの端に腰掛けました。ベンチに座る時に、マールの顔を見な

がら微笑みました。

「いいお天気ですね。おお、可愛いわんちゃんですね!」

★「ワァー!またマール爺がモロ好きなタイプの人だ!きっとマールと関

わりあうよこの人」★

マールに抱かれていたブブは直感しました。

額は後退していますが良く手入れされた白髪が七三気味にきちんと分けら

れていて、知的なメガネが印象的な
60代後半の紳士でした。

二人ともお互いがお互い同士で『一目惚れ』でした!

「こんにちは!犬はお好きですか?」マールは話のきっかけを作りたかった。

「ええ、もちろん大好きです!」

「ブブって名前です。宜しく。今日はどちらから…?」

「私は東京の人間ではありません、仕事でこちらに来てます。

今、休憩時間でこの代々木公園に来てました。」

「ああそうですか、大変ですね。どちらの地方からいらっしゃたのでしょ

う?」マールは興味津々。

「新潟県の村上市です。」

「ゴメンナサイ!新潟のどの辺でしょう?無知なんで分からなくて…。」

「新潟県北部の日本海に面した市です。と言ってもピンとこないでしょう

ね?」

「ゴメンナサイ本当に無知で…。」

「そんな村上市そのものが有名ではないので当然ですよ!」

紳士はマールを庇ってくれた。

「私はその村上を言わば宣伝に来ている者です。良かったら

私の仕事場にちょっと一緒に来ていただけませんか?」

マールはこの展開にビックリしながらもとても嬉しかった。

「ちょっと歩きますがいいでしょうか?」

「運動不足の今日この頃、大丈夫ですお願いします。」

 マールは白髪の紳士の案内で歩き始めた。

歩きながらお互いの自己紹介をしあいました。

紳士のお名前は二宮貴一さん、68歳だそうです。長年の経験と職責を請わ

れて未だに現役で働かせていただいているそうで、市には感謝していると

のことでした。

代々木公園を抜け、表参道に出て地下鉄千代田線の入り口が

近づいたあたりで紳士は横道に入った。スグのところにその建物はあった。

「表参道新潟館ネスパス」と言う新潟県のアンテナショップでした。

http://www.nico.or.jp/nespace/

「この2階が新潟県の観光センターになっています。さあ、どうぞ!」

旅好きのマールにはもってこいの空間と施設、彼に言われてワクワクしな

がら2階に上がった。

まさしく彼が言う通り、そこは新潟県の観光ワールドの世界でそれも村上

市のイベント期間中のようであった。

彼は村上市の商工観光課からその期間中だけ東京のここに出張して来てい

る職員でした。

村上市を紹介するパンフやグッズが一杯展示されていました。マールは彼

から色々村上を紹介するパンフやモニターの映像を見させていただきまし

た。

特に印象に残ったのが遊覧船に乗りながら、素晴らしい岩場の海岸線を巡

り、カモメ達とたわむれることの出来る「笹川流れ」の観光でした。

今回、彼と同様に村上市から派遣されてきた若い女性職員が一生懸命訪れ

た他のお客さんに説明していました。

重々彼が仕事中であることは分かってましたが、マールは思い切って彼に

小声で切り出しました。

「今夜、食事でも一緒に出来ませんか?」

「ゴメンナサイ、マールさん!今日がこの村上のイベントの最終日で、夜

は色んなスタッフと打ち上げ飲み会があるんです!本当にすみません。そ

れも明日は帰郷してしまいます。」

彼は本当に申し訳なさそうな顔をしてマールに名刺を1枚渡してくれてこ

う言った、

「村上に万が一来ることがあったら電話くださいね、何をさしおいてもマ

ールさんのご案内をさせてもらいますので…。」

マールは諦めざるを得ない状況を理解しました。

別れ際にしっかりと握手をして彼の体温を感じました。

マールの目を見ながら、がっちりと握り返してくれた彼でした。

『残念です本当に、ずっと一緒の時間を共有したいです!……』

言葉には出さないけれど、二宮さんの瞳はマールに訴えかけていました、

偶然に出会った「素晴らしい紳士の彼への思い」を心に蓄えて帰路につく

マールでした。

 

意気消沈しているマールを見て

★大丈夫マール、あの人とはきっとまた会えるよ★

と言ってやりたく、

憂いを帯びた瞳でマールを見つめるブブでした。

                      つづく







                                            


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