マール爺と忠犬ブブ


                                         アッチ さん 


(3) 笹川流れの巻


後編


マールはどうしても二宮貴一さんのことが忘れられず何日も苦しい日々を

過ごしました。

マール爺が新潟県の村上にすぐに行かないのは躊躇があったからです。村

上の彼には家族がいらっしゃると聞いていたから…。

会いに行っても何も出来ないのではさらに自分が苦しい思いをするだけだ

から…。

ブブはマール爺の毎日の悲しそうな顔に耐えられず、マール

に向かって吠えました!

ワンワンワン ★行こうよマール!村上へ!会いに行くだけでもいいじゃ

ない★ ワンワンワン

 普段めったに吠えたりしないで大人しいブブが自分に向かって吠えてい

る。何?何を訴えているの?

 

ブブの訴えかけるような瞳に対峙したとき、マールは感じ取りました。ブ

ブの訴えが。

「そうだね、村上に行こう!会うだけでもいい、それだけでも幸せになれ

るねきっと。」……。

 翌日朝、マール爺とブブは東京駅の新幹線ホームに居ました。9時台の

新潟行きに乗るためです。この時間の新幹線だと新潟駅で特急の「いなほ」

にスムーズに乗り換えられるからです。マールは事前に調べてきました。

 もちろんブブは顔出しが出来るペットのキャリーバッグで一緒でした。

 東京を出て2時間半弱で村上駅に着いたマールとブブでした。

マールは二宮さんからいただいた名刺に書かれていた二宮さんの職場の電

話番号にアクセスしようと思っていました。

職場の電話だけに迷惑をかけるのでは?との抵抗がありましたが、彼と再

会する手段はこれしか無いのです。

 ドキドキしながら駅にあった公衆電話からその電話番号をかけたのです。

(マールはガラケーもスマホも、もともと持っていません)

 2回呼び出し音がなって電話が通じ相手先が出ました。

「お電話ありがとうございます、こちら村上市役所商工観光課の二宮です

!」

♪忘れもしないあの紳士の声に間違えありませんでした♪

一瞬、マールは感激と興奮で次の言葉が出てきませんでした。

「もしもし!…もしもし!…どちら様でしょうか?」

二宮さんの再度の声にハッとさせられてマールは答えました。

「丸です、マールです、東京から来てしまいました。」

それを言うのが精一杯。

「ええっ~~~っ、ほんとうに丸さんですか?」非常に興奮した声が受話器

の向こうから聞こえてきた。

「今何処にいらっしゃるのですか?……はい、すぐお伺いします、待って

いてくださいね!」

二宮さんのスグの対応に嬉しいマールだったが、仕事中の職場に電話なん

かして大丈夫だったかなと心配していました。

 駅構内を出て、駅の正面入り口でマールは待っていました。

電話をし終わって15分ぐらい過ぎた頃、右手の道からシルバーの車体の乗

用車が駅前に来ました。

二宮さんが運転していました。マールは喜んで手を振りました。

車は止まり、ドアを開けて出てきた二宮さんは、淡いブルーのシャツにベ

ージュの麻のズボンと言ういかにもオシャレな格好です。

二宮さんが満面の笑顔を見せながら、「マールさん、ようこそ!とっても

嬉しいです、お越しいただいて!」

ガッチリとマールと手と手を取り合いました。

マールは本当はハグしたかったのですが、彼の地元でこんな昼間からでは

マズイと思い止めました。

「さあ、マールさん車に乗って下さい、ブブ君も相変わらず可愛いね!」

キャリーバックから顔を覗かせてまるでこの二人の再会を心から喜んでい

るようなブブでした。

 助手席にマールを乗せて車は走り出しました。

「急に来てしまい申し訳ありませんです。お仕事中だったのではありませ

んか?」

「マールさん、ご心配いただいてありがとうございます。

こんな年齢で働かしていただいているので、返って融通がきくのです。ち

ゃんと早退のかたちにしてきてますので大丈夫です!」…。

「マールさんが表参道のネスパスで一番行ってみたいとおっしゃっていた

笹川流れにご案内したいです!」

車は駅前を走り出し海岸道に出た。

しばらく行って右の陸側にバス亭の駐車空間があつた。

バスもバスを待っている人もいなかった。

一旦その駐車スペースに車を入れた。

「マールさん、本当に会いたかったです。」

二宮はマールの身体を抱きしめながら言った。

「僕も同じです!貴方をどんなに恋しかったか。」

二人は自然と口づけをしていた。

マールも二宮も股間が疼くのを感じながら、舌を絡ませる。

どのくらいそうしていただろう。そばを走り抜ける大型トラックの音で二

人はやっと離れた。

「マールさんゴメンナサイ。僕は東京で一つマールさんに嘘

をついてました。妻は5年前にガンで亡くなり今は独り身です。息子も娘

もそれぞれ家庭を持って独立しています。

あの時そうでも言わないと仕事で東京に行っていた自分の自制が出来ない

と思ったのです。許してくださいね。」

マールは優しい目で二宮を見ながらうなずくだけでした。

車は走り出し海岸線を行きます。

日本海の海岸線の景色が素晴らしいとマールは感動していました。

 海岸沿いを30分ほど行ったところに笹川流れの遊覧船乗り場がありまし

た。ちょうどあと5分で出航するところでした。

http://www.niigata-kankou.or.jp/sys/data?page-id=7167

http://www.sasagawanagare.co.jp/

 

 遊覧船から見る海の透明度の素晴らしさ、次々と現れる奇岩が作り出す

自然の造形美にマールは来て良かったと心から思いました。

デッキから並んで見る二人の少し上空をカモメが鳴きながら飛んでいきま

す。

ミャーオ、ミャーオ。

「変わった鳴き声だね…。」

「カモメの鳴き声は聞く人によって違う感じですね。」

二宮はそう言いながら、

『この可愛いマールさんを、ああ今夜はたっぷり泣かせてあげる』と心の

中で言いました。

 

 村上の一番の観光は瀬波温泉と二宮のすすめで瀬波温泉の旅館で日帰り

入浴もしました。

夕日が日本一綺麗に見える宿と言う「汐美荘」。

http://www.shiomiso.co.jp/topics/

しっかりとその夕日も堪能して、近くの食事処で海鮮物の

食事も楽しみました。

http://www.taikanso.senaminoyu.co.jp/bansyu/cuisine/index.php

 

 車に戻り二宮さんが言いました。

「マールさん、村上の商工観光課に働いている人間としては本当は瀬波温

泉の旅館やホテルにお泊りいただきたいのですが、瀬波温泉を含め村上市

にはペットと一緒に泊まれる

宿泊施設がありません。だから私の自宅にお泊りください。」

「申し訳ありません、そこまで心配くださって。」

マールは二宮の申し出がありがたかった。

 瀬波温泉から7~8分走っただろうか、車は住宅街の一軒の家の前で止

まり、横の駐車スペースに車は入った。

「さあマールさんどうぞ、古い家ですが。」

 

 独りで住むには広すぎる家だった。部屋数もありそうでさらに2階もあ

る。男独り暮らしの割にこぎれいなのは二宮さんの性格だとマールは感じ

た。

 

1階の居間のような畳敷きの部屋に入ると二宮はマールを抱き寄せた。自

然にまた二人は口づけをかわす。

二宮は邪魔なメガネを外してそこにあった低いテーブルの上に置いた。

「マールさん、好きです。とても好きです。何時間もこうしていたいです

!」

「僕も二宮さん大好き、もっともっと愛し合いたい!」

舌を絡め合い抱擁は続く。

お互いの股ぐらに硬いモノを感じ合い一層燃える熱情。

「さあ、マールさん2階のベッドに行きましょう!」

 

セミダブルのベッドで素っ裸になって愛し合うふたり。上になり下になり。

「ああ 待ってた!待ってたの……。マールさんこの瞬間を!

東京の代々木公園のベンチで横に座った瞬間から……。

ああ 待ってた!待ってたの」

ブブはベッドの下から二人の幸せな様子を感慨深げに見守っていました。

 まだまだ夜は長いです。愛し合う時間もまた…。

 


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あとがき

 6月の前半に越褌さんを通じて好若神亀さんの7月の表紙イラストをい

ただいて見た瞬間、「笹川流れ」の記憶が

よみがえりました。

この話でも出てきた瀬波温泉に2連泊した時に、間の日の昼間に「笹川流

れ」の遊覧船に乗りに行きました。

日本海の海の透明度にまさにマールのように感動したことを憶えています。

 ここまで読んでいただいてありがとうございました。

 

                      おしまい







                                            


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