マール爺と忠犬ブブの物語


                                         あまね さん 


(2) なのに永遠の愛を信じたくて



「ミャーオ、ミャーオ」と鳴くウミネコを見ながら、マール爺に抱きかけ

られたブブは今年ももうすぐ夏なんだと思った。毎年七月には、マール爺

は宮城の石巻を訪ね、今年もなんだか寂しそうに一人で街中を歩き、三陸

海岸に少し足を伸ばし、ウミネコを見ながら涙するマール爺を見ながらブ

ブはちょっぴり切なくなりました。

 

 

 

 

「ワン」

 

「おぉ、ブブや、どうしたんだ。爺が泣くのはおかしいか。誰にも忘れら

れない思い出があり、忘れられない人がいるもんなんじゃ。」

 

「ワン」

 

「毎年言っているかなぁ。石巻出身の友のことを思うと、二人で過ごした

東京での学生時代にキャンパスではしゃいだことや下宿で夜を徹して酒を

飲み議論したことのことを思い出すんだよなぁ」

 

「わーん」

 

「何?青くさいか?そう言わないでくれよ。もう亡くなってしまった友の

ことを思うと・・・」

 

「わん」

 

「彼はな、もう30年くらい前に亡くなったんじゃ。それも遠いペルーと

いう国のリマの片隅で騒動に巻き込まれて亡くなったんだ。その当時「セ

ンドロ・ルミノーサ(輝ける道」」という極左グループの銃弾に倒れたん

じゃ」

 

「ワォーン」

 

「そうじゃろ、ブブも悔しいか。そうだよな、ただ仕事の関係でリマに滞

在していただけで、たまたま自動車で銀行に行き、受付で手続きをしてい

た時に極左集団が押し入ってきて銃を乱射して、金を奪い去った時にやら

れてしまったんだよ。そのニュースが流れた時は信じられなかったよ。も

ちろん彼はよく海外へ仕事へ行っていることは知っていたが、まさか事件

に巻き込まれて射殺されるとはね」

 

「ワォーンン」

 

「彼はね、一応結婚をして子供一人もリマにいたんだが大変だった、今で

もその時の奥さんと子供が悲しさに耐えようとしている様子が忘れられな

い」

 

「わん」

 

「その彼とはどんな友達関係だったのかって。この爺の片想いといっても

よいが、彼の方も全く男に興味がないというわけではなくて、むしろ女性

より男の方が好きだから、この爺の我儘を聞いてくれて、相手をしてくれ

たよ」

 

「わん」

 

「この爺は独身を通したが、彼は全く女が抱けなかったわけでもなかった

し、世間体もあり見合い結婚をして普通の家庭を持って仕事もがんばって

いたんだがねぇ」

 

「わん」

 

 

 

 

「それにしてもここからに眺めはいいね。あの恐ろしいい津波からもう5

年が過ぎたが、このきれいな風景を見ていると、自然の大きさと人間のは

かなさが思いしらされるな」

 

「わん」

 

「そろそろ仙台のホテルに帰ろうか」

 

 

 

マール爺は風呂の後、一人で酒を飲み食事をとりすぐに素っ裸でベッドに

入ってしまった。きょうは東京からということもあり疲れたのであろう。

 

 

 

 

「いやーぁ、もっともっと」

 

マール爺の寝言が始まった。

 

「久しぶりなんだから!」

 

ブブが見ていると、マール爺はとっくに被っていた毛布を跳ねのけ、腰を

突きあげ、お尻に手を当て、くねくねしている。

 

「もっとついてーぇ!右の乳首も・・・!」

 

 

 

「ワォーオン、ワォーン」

 

 

 

 

マール爺の激しい寝言を聞きながら、ブブは安心した。今日は昼間から涙

を流していて、今夜はたぶんマール爺のふくよかなお尻が見れないと思っ

ていたが、いつも以上に激しく突きあげられたお尻や、思いきりそそり立

った大きい竿を見ると、若い頃彼に抱かれた時のことを夢みているんだか

ら当たり前だよねと思いました。

 

 

 

(おしまい)

 

『永遠の嘘をついてくれ』(中島みゆき作詞作曲、吉田拓郎)を参考にし

ました。










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