マール爺と忠犬ブブの華麗な旅



                                         KE爺さん 



(5) 浅草にて



マール爺と忠犬ブブの住まいは、東京の湯島天神の近くです。大きな樹木

に囲まれた庭には、不忍の池を渡って来る涼しい風が爽やかに流れ、秋の

気配を感じさせます。

マール爺はベランダの椅子に座り、郵便物を開封して一つ一つ中身をチェ

ックしています。私ブブはそばで、コックリコックリと居眠りをしていま

した。

すると急にマール爺が私に話しかけました。

「ブブや、ホテル・グランパラダイスの越褌支配人から、手紙が届いてい

るよ!」

「ヘェーッ!何でしょうね?」

「『老いとき関東支部』を発足させるための幹事会を開くらしいね!」

「へぇーッ!面白そうですね!幹事のメンバーは、どんな人なのですか?」

「幹事長は越褌支配人で、幹事は私でしょう、それにKE爺と投稿常連の

思春期爺さんと思秋期爺さんのようだね」

「ワォーッ!あのKE爺って、一見真面目そうで、実はスケベな人ですよ

ね!行ってみたいなあッ!」

「よし、それじゃあ出席の返事を出しておくからね」

「マール爺、集合場所はどこなの?」

「浅草の雷門だよ」

秋風がそよと吹いて、とても良い気分です。マール爺のその声を聞きなが

ら、私ブブは、再びスーッと居眠りの世界へ入って行きました。

 

 さて、今日は『老いとき関東支部』の発足準備幹事会です。

マール爺とブブが、雷門の前にやって来ました。そこには、すでにKE爺

がニコニコ顔で待っていました。

すぐに多くの観光客の中から越褌支配人が現れて、マール爺とKE爺に近

寄って来ました。

「やあマール爺とKE爺、お元気そうですね!」

「越褌支配人も、お元気でなによりです。相変わらずお公家さんのように

上品なお顔立ちですね!」

「おやッ!ブブも来てくれたのだね!」

私は越褌支配人に抱き上げられ、その胸にしっかりと抱きしめられたので

す。ああ、もうそれだけで興奮してしまいました。

すぐにあとから思春期爺さんと思秋期爺さんもやって来ました。久しぶり

の再会に、皆さん懐かしそうに手を取り合ったり、肩をたたき合ったりし

ていました。

仲見世通りは、観光客でごった返していました。特に外国人観光客の多さ

には、びっくりさせられてしまいました。

その仲見世通りをブラブラ歩きながら、会議を開くホテルへ向かいました。

今日の会議の目的は、『関東支部』の設立にあたっての、いろいろの問題

点を議論することでした。

議長の越褌支配人が手際よく会議を進め、無事に会議が終了しました。夕

方から懇親会です。美味しいお酒とお料理がいただけます。

 

 ところで、今日集まった幹事の5人の皆さんは、みな合唱団に所属して

いるのです。越褌支配人は「グランパ男声合唱団」、マール爺は「誰専男

声合唱団」、KE爺は「爺好き男声合唱団」、思春期爺は「チビデブ男声

合唱団」、思秋期爺は「ドスケベビッチ男声合唱団」に、それぞれ所属し

ているのです。

それで、懇親会の席上で、「クインテット」(五重奏)の練習をしようと

言うことになったのです。『関東支部』創立祝賀会で、その成果を披露す

る計画です。

普通、五重奏と言えば、ヴァイオリン()、ヴィオラ()、チェロ()の弦

楽五重奏を思い浮かべますが、今日の幹事さんたちは、歌声での五重奏で

す。

懇親会もなごやかに終わり、早速、宿泊する部屋へと移動しました。そこ

で五重奏の練習をするのです。

 

 部屋に入ると、とりあえず全員シャワーを浴びて、真っ裸のまま横に整

列しました。指揮者は私ブブが務めます。

「それでは皆さん、まず発声練習で〜す!」

私は枕の上に乗って、前足をタクト代わりに振りました。

「ド〜!レ〜!ミ〜!ファ〜!ソ〜!ラ〜!シ〜!ド〜!ハイッ!」

アレッ!!みんな指揮者の私を無視して、勝手な行動を始めたではありま

せんかッ!

抱き合ったり、キスしたりと、ベッドに横たわって勝手な動きをしている

ではありませんかッ!

私は叫びましたッ!

「皆さん、オリンピックは終わったのですよ!レスリングの練習はしなく

てもよいのですよッ!」

皆さんは、私の大声に全然耳を貸しません。

アララッ!越褌支配人はマール爺のバックから攻めているではありません

か。その恍惚とした顔は、いかにマール爺が名器であるかを物語っていま

す。そのマール爺は、思春期爺と熱い口づけを交わしています。

KE爺といえば、そばに横たわる思秋期爺の巨大なアレを、得意の口技で

攻め立てています。今日は自慢のゴールドフィンガーを、今のところ使っ

ていません。

私は大きな声で怒鳴りましたッ!

「ちょっとッ、皆さん!クインテットの練習はどうなっているのですかッ

!」

すると越褌支配人が、こう言いました。

「ブブや、人間の身体は楽器なのですよッ!ホラッ、静かにしてみなさい。

妙なる音が聞こえてきましたよ!」

私は垂れた耳をピンと立てて、神経を集中しました。

『ズニューッ!』

『ズヌヌッ!』

『チュプチュプッ!』

『チュププッ!』

『ウッフ〜ン!』

確かに妙なる音が聞こえてきました。

その音がやがて重なり合い、絶妙なハーモニーを奏でているではありませ

んか。

『ズニューッ、ズヌヌッ、チュプチュプッ、チュププッ、ウッフ〜ン!』

4拍子の今までに聞いたことのない音楽です。

指揮者の私ブブを無視して、演奏者たちは無我夢中で独自の演奏を続けて

います。モーツァルトの弦楽五重奏には、ちょっとだけ劣りますが、確か

にこれは立派な「肉体狂騒曲」です。

私は指揮を止めて、皆さんの演奏ぶりをじっくりと眺めていました。

これが「老いとき男声合唱団」の発足になったのです。

でも、『関東支部創立記念式典』で、この演奏をどうやって披露したらよ

いのだろうかッ!?どうしたもんじゃろな〜ッ!

 

「ブブッ!ブブッ!」

 アレッ?誰かが私を呼んでいます。

「ブブやッ!もう起きなさいッ!何をブツブツ言っているのですかッ!」

アレッ!マール爺が私を呼んでいるッ!

「ブブッ!もう昼寝は終わりだよッ!お散歩の時間ですよッ!」

「えーッ?あ、あれは白日夢だったの!?」

(おわり)









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