冥王星の夜


                                         佐良双樹 さん 


(2)進化の管


 ゆっくりとそして規則正しく私は腸壁を擦り続けました。時々、私の太

腿と男の太腿が立てる乾いた音は、次第に湿っぽいものになっていました。

私の肌から吹き出た汗が男の肌を濡らし、顔面のそれは滴り落ちて男の腹

部や太腿に流れていたのです。汗に濡れた私の太腿は男の臀部を音もなく

滑るようになっていましたが、抜き差しの湿性に満ちた音だけは以前に増

して大きくなっていました。男の中は粘液に満ちていました。男の体内は

性感に敏感だったのです。私は男の両足を左手一本で支え、右指で挿入さ

れた下側に触れてみました。男根を引くごとに粘液が滴ります。男のそこ

はは熱い蜜に溢れていました。

 折り曲げた膝で枕ごと男ので臀部を挟み込み、男を上から抱え込みます。

左手を背中の下に入れ、右手は首に廻して、私は男を完全に自分のものと

してから、ゆっくりと抽挿を始めたのです。時には鋭く直ぐまた緩やかな

動きに戻し、男の反応を窺います。そしてまた再び激しく突き込み男を見

つめます。男はその度毎に呻いて顔を歪めます。それはこらえきれない快

感によるものでした。男の体は私の動きに伴う快感に襲われ、大海原を漂

う木の葉のように所在気がありませんでした。

 正常位の醍醐味とも言うべき緩急自在の腰の動きを駆使して、私は男を

攻め続けました。機械のような正確な動きと初心者のように慎重な動きを

繰り返えしながら、男を快感の渦の中へ連れていこうとしていたのです。

そうしている内に、男は宙に上げた両足を私の腰に廻して締めてきます。

腰の上で足首を絡ませきつく締めるのです。それで私は腰を動かすことが

できなくなったのです。

 

 体内深くに刺し込まれたままの状態で静止することを男は望んでいまし

た。そのまま擦られて絶頂に達してしまうのを恐れたのかもしれません。

もう暫く自分の奥深くに銜えるたままでいたかったのです。急激な昂りで

はなく、静かに静かに大海原を漂ってからの昂り来る快感を望んでいたの

です。

 私は下腹を打つ卑猥な音と共に、直腸を過激に往復する刺激を波打ち際

に屹立する流木に与えてやりたかったのですが、それを抑えられて少し苛

立っていました。しかし、腰は左右に僅かしか動きませんから、男を抱い

たままじっとしている他はありませんでした。仕方なく、時々イヤイヤを

するように腰を振って奥へ奥へと突き立て、その周囲にすべての圧力をか

けて憂さを晴らしていたのです。私の陰嚢は男の後門下に潰されそうに押

し付けられていました。しかし、それが男の望みだったのです。男は私の

陰部の全てを自分の後門の周りに集めてその感触に浸っていたのです。時

折、官能に震えるような吐息を漏らして私の腰を締め、その感触を味わっ

ていたのです。

 そうしている内に荒かった呼吸は収まって来ます。しかし男の管が蠕動

を繰り返しているのは分かりました。男は吐息と喘ぎを繰り返しなら私の

腰を締め付け、同時に管の先端を締めたり緩めたりしていたのです。それ

は徐々に迫り来る黄昏のように、再び私の興奮の度合いを高めていったの

です。

 

        

 

 地球が誕生した6億年後の40億年前に、生命はひとつの細胞から始まり

ます。そのひとつの細胞が核を持ち、数を増やし、一本の管となって養分

の取り入れ口とその残り滓の掃き出し口をを造るのです。更に脊椎を持ち、

脊椎先端の脳を肥大化させて進化を続けます。その進化の最先端にいるの

が人間でしょうが、「人間は、しょせん一本の管である」とある作家(注
1

が言ったように、確かに人間が一本の管であったことにかわりはないので

す。その管の周りに様々な器官と組織を造り、それぞれに特有の機能を持

たせて進化してきただけなのです。

 その進化の極地にいるであろう人間は、今でもその彼方を目指し進化を

続けています。男は残り滓の掃き出し口に新たな快楽器官を造り上げてい

ました。その新たな快楽器官は、
成り成りて成り余る所(2に差し塞

がれて
絶え間なく蠕動し、快楽を貪っていたのです。

 

******************************

注1)ある作家:山口瞳

注2)成り成りて成り余る所:古事記におけるイザナギ神・イザナミ神による国造りの際用いられた男性器を象徴する言葉

 

 



                                                続 く 


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