冥王星の夜


                                         佐良双樹 さん 


(5)夜奏の調


 その後、私は男の股間の下に枕を押し込みながら俯せにし、その上に被

さりました。いわゆる鶏姦の姿勢です。男の尻は程良い柔らかで、腰を打

ち付けると波のように揺れて私の下腹部に纏わりつき、溶け込んでくるよ

うでした。やがて私は動きを止めます。新たな態勢での新たな感触に浸り

たかったのです。

 それから暫く二人は動きもせず、後ろから杭で繋がったままの姿勢でい

ました。呼吸を男に合わせていましたから背中の上下は一緒でした。男の

呼気は眠っているかのように静かです。

 私は男に負担をかけないよう肘で体重を支え男の呼気を聞いていたので

すが、そうしていると、男の鼓動が一物に伝わって来るのが分かります。

その一定のリズムが、静かな縁側に寝転んで、少しずつ暗くなっていく空

を眺めていた少年の記憶を蘇らせます。

 次第に漆黒に包まれる静寂には、耳を澄ますとどこかで響く幽かな鐘の

音がありました。しかしそれは音ではなく、その時の静寂という風景の一

部のようでした。少年の心もまたその静寂と同じでした。戻ることのない

過去の風景には、永遠の安らぎがありました。

 

 その安らぎの中で私の一物は再び衝動を取り戻します。私は男の両足を

膝で外に押し広げながら、枕の厚みで陰茎とほぼ同じ位置の後門に抜き差

しを始めていました。ジグソーパズルのように、あっちに当てこっちに当

てを繰り返しながら落ち着き先を探すこともなく、凸凹はすぐ近くに相対

していたのです。

 年を重ねて練れた臀部は女の柔らかさと同じで、打ちつける度に潰れ、

大きく揺れます。それを目に興奮は高まり、打ちつける勢いも強くなりま

す。パンパンパンと、その湿ったような音は弾けるような甲高い音となっ

て尻肉を忙しなく震わせていました。尻肉は上に動きましたから、時には

上側から潰すように押し当てて広がる柔らかさを楽しんだりもしたのです。

潰れた尻肉は私の陰茎の下にまで広がり、陰嚢をを圧迫するのですが、そ

れもまた心地よい感触だったのです。私は視覚も触覚も冴え渡らせ、幾度

となくそんな動作を繰り返していたのです。その間、その度毎に漏れる男

の切なげな喘ぎが私の聴覚の全てでした。

 それを振り払うため私は口を吸うのです。喘ぎ続ける男は、潤いを求め

て私の唾液をせがみます。男の舌を味わってから唾液を流し込むと、男は

喉を鳴らし飲み込みます。味覚までものすべてが官能に支配されていまし

た。

 

 男は腸壁を擦られて抑揚ある喘ぎを漏らし続けます。弓の当て方如何で

弦の音は微妙に変わります。名演奏家はその当て方にも細心の注意を払い、

自らがその音に酔いしれることはないのでしょうが、二流の演奏家でしか

ない私はその響きの中にどっぷりと浸りきっていました。二人だけの小さ

なホールです。観客に聴かせるための演奏会ではありません。私にとって、

そこに流れる旋律はストラディバリウスの奏でる「歓びの歌」と同じだっ

たのです。

 しかしそうした優雅な音楽会も、官能の渦の中にいる二人にとっては一

時の場所に過ぎません。男はシーツを鷲掴みにして匍匐前進を始めていま

す。二人は戦場へと移動したようでした。敵の目を逃れるため体を低くし

ていますが、四方に伸ばされた手足は緊張のため震えています。どこに潜

むかもしれない敵を警戒しての匍匐です。戦士は手足の先にまで神経を行

き渡らせて前進しなければならないのです。

 私が腰を打ち降ろす毎にその緊張が増すのがその震え具合で分かります。

しかし戦士は敵の威嚇に怯むことなく緊張を保ち、目的地から目を離すこ

とはありませんでした。僅かずつですが歩を進めていたのです。僅かでも

あってもその動きを神経を集中させた斥候が見逃す筈はありません。私は

洞穴の奥が少しずつぼんやりし始めたことに気づいたのです。

 私は脇の下に入れた手で両肩を掴み腰元に引きつけます。男の脇の下辺

りを両肘で挟みつけ、完璧に体を制御してから杭を打ち込むことにしたの

です。その打ち込みに合わせて腕に力を込め、男の体を腰元に引きつける

のです。そうすると杭は湿潤な沼地の下の柔らかな地殻にまで届くようで

した。

「ああっ、ああっ、ううっうっうっ…」

 男は言葉にならない声も漏らします。パン、パン、パン、パンと銃声の

ような音が響くと、尻はそのたびに潰れ揺れながら戻ります。男の下の口

は私の乱射する銃に抵抗することもなく、粘液を垂らして震えるだけでし

た。唇もまた言葉を忘れ、ただ震える声を漏らすだけでした。

 男のやわらかな尻は私の汗で濡れています。その滑る尻肉の背後から私

は何ども銃を打ち続けたのです。そして男に顔を近づけ唇を吸います。男

の唇は半開のままで、最早吸い返す力はありませんでした。男は、私にそ

の唇を預けたまま間断なく痙攣し、虚ろのまま喘ぎ続けていたのです。あ

の女のようにか細い声で。

 

         

 

 男の背中も尻も汗で光っています。私は男の背中の上で暫く静止するこ

とにしました。男の尻が揺れて形が変わると私は滑り落ちそうになります。

濡れて滑る肉塊は私の股間から逃げ出そうとします。私がその大きい塊に

股間を押し付けて安定を得ようとすると、その塊はするりと横に逃げ出し

てしまうのです。接着剤は効きそうもない状態でした。

 滑り落ちそうな私は、安全を求めて雪山を彷徨う登山隊と同じでした。

注意深く小刻みな移動を繰り返して安定を探し続けたのです。男の熟れた

大きな白い尻は女の柔らかさと同じで、私の下腹部から股間、腿の付け根

へと自在に動いて私を惑わせ続けたのです。

 

 皇居の暗い森の上にひとつの星が浮いていました。私が男の頭部越しに

眺めていると、星はチカチカと暗号のような明滅を繰り返したのです。



                                                続 く 


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