冥王星の夜


                                         佐良双樹 さん 


(9)輪廻の炉



 私がふと目を覚ましたのは窓の外が明るくなりかけた頃でした。時折、

ドアを閉める音や廊下を急ぐ靴音が聞こえました。早い客はもうホテルを

出るようです。

 二人は裸のままでした。男は私に背中を向け、私はその背中を抱くよう

にして眠っていました。割れ目の上の方は乾いていましたが薔薇門にはま

だ湿り気がありましたので触れてみると、案の定栗の花の臭いでした。昨

夜、再び元気になった我が子を母屋に残したまま眠りに落ちたのですが、

目を覚ますとその息子は母屋を飛び出してうな垂れていたのです。眠りに

ついて直ぐに妙な夢を見たと思っていましたが、それは夢ではなかったよ

うです。

 私は男が残してくれた粘液で薔薇門の周囲を撫で指を入れてみました。

指はすぐに入ります。薔薇は刺を落としたままで、
2本の指も滑らかに吸

い込まれていきます。意の如くなった棒に唾液を擦りつけ、依然として爛

漫たる花弁に潜り込ませても、男はまだ軽い寝息を立てています。窓の外

が少しずつ明るさを増しもう直ぐ太陽が昇るだろうこの時、私は少し感傷

的になっていました。

 

        

 

 その中で私は男を抱き締めて腰を打ち付けています。バシッ、バシッと

部屋の前を通る人には聞こえるほどの音でしたが、それを躊躇う余裕はあ

りませんでした。男への愛しさが募るばかりで、その想いが開かれた衆生

門に激しく向かっていたのです。奥に隠し持つ子宮を開いて待っている男

の望みを一刻も早く叶えてやりたいと、さらに激しくなってしまったので

す。

 男は苦行僧のように顔を歪めていましたが、口の端から唾液を垂らし肌

を紅潮させて官能に身を委ねる姿は、満願成就の喜悦に泣く巡礼のようで

もありした。

 私は左手を背中に回して上体を押さえ、右手は首の後ろから頭に回して

男を確保していました。そうした体制にありながらも快感に震える男の炉

は、その中心に挿された赤く焼けた鉄棒の周囲を蠢き、熱い粘液を吹きか

けてきます。制御している筈の肉体の中で私の中心はとろけそうでした。

相手を制することはできても己の中心がとろけるのを抑えることはできな

かったのです。傍目には男を押さえつけている私に主導権があるように見

えるかもしれませんが、私の鉄棒は私の意思に関係なく男の炉に自在に操

られ溶かされようとしていたのです。

 男に回した腕に力を込め溶けて流れる恐怖と官能とに身を任せていまし

た。そして抱きしめた肉体が断続的に痙攣するのを感じた時、私は中心が

溶け出す感覚に墜ちたのです。それは肉体までをも溶かすかのようでした

が、私に逆らう術はありませんでした。ただただ、熱い溶岩に身を任せる

他はなかったのです。同時に男も激しく痙攣し、漏らし続けていた嗚咽を

野太い雄叫びに変えて部屋中に響かせたのでした。

 

 男の白い肌が汗に濡れています。小刻みの痙攣も腰の震えも止んでいま

す。下腹に溜まった男の精は少しずつ溶けて腿の付け根から流れ落ちてい

ます。そこには炉に溶けた私の精が流れ出て溜まっていました。その溜に

男の精が音も無く滴り落ちています。いつしか男は穏やかな表情を見せて、

まだ閉じられてはいない衆生門から快楽の滴り流しながら静かな寝息を立

て始めていました。

 

 一度衆生門を潜り抜けた者は終生その感動を忘れることができないとい

います。その感動を求めて再びその門を潜ることになるのです。生命ある

もの総てが己の意思に従って行動する時、衆生門はその扉を開けて待って

いるのです。

 

 皇居の暗い森の上に小さな星がひとつ光るのが見えました。そうしてま

た私は眠りに落ちたのです。



                                                続 く 








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