縄に酔う男




                                  昼顔さん



禁断の園に・・・

(参)




 背後に回った彼から私は身体の向きを変えられ、壁の大きな姿見に正対

させられました。思わぬ外力に一瞬よろけた私は、彼から抱き寄せられ支

えられ、大きな姿見に正対しました。

 

 

 私の顔の横には彼の顔があり、そして赤い麻縄で菱縄掛けされた私の上

半身、赤い締め込みの前褌にまざまざと露わに見せる勃起の輪郭、赤い灯

で仄かにも妖しく照らし出された己が受縛姿態が其処にありました。 光

り漏れした写真の様に、鏡の投影面の一部は光り輝いていましたが、其れ

は恰も露光過多の印画写真の様でもありました。 ですが正しく、其処に

映るのは私の緊縛姿態、恋い焦がれ続けて夢想もし妄想もし、遂には願望

に至っていた処の、私に施された縄化粧の姿態でした。

 

 

 夢かと、夢ならば覚めないでと願った・・? いや、其の時は斯かる感

情はありませんでした。 そんな小説擬きの感情は起きなかった様に記憶

します。 ならば冷静・・?? いえ、其れは勿論ありません。初めての

其の瞬間、記憶が飛んでしまったのかもしれませんし、 或は、是から続

くであろう処の、男に依る男への性的責め、なにをされるのか、如何な責

めが此れから展開されるのか、期待と共に戦き(おののき)の感情に囚わ

れていたからなのではと思います。

 

 

 鏡に映る彼の目に或る種のサインを見た私は、ウインクであった様なそ

うでなかった様な、其の彼の目に或る種のサインを見て取った私は、両手

を後ろに回し、一方の手で
もう一方の手首を握り締めました。 自らで

・・・。 其の時、一瞬でしたが、其の時彼の白い締め込みの前褌に手が

触れました。 固い棍棒・・・ 私はそう思いました。

 

 

 背後の彼は自らで組んだ私の後ろ手に腰を押し付け、ほんの寸時、私が

触るに任せていましたが、ポンポンと軽く肩を叩いて身体を離し、壁の架

台から縄束を取るのが気配で解りました。 自らで後ろ手に組んだにも関

わらず、身体が自然とそうさせたにも関わらず、「・・・跡が・・・」と、

鏡を通して彼の姿を追いながら呟いていました。

 

 

 鏡に映る彼は微笑みを浮かべ、手にした赤いタオルを翳して鏡に映しま

した。 秘めたる性癖、人知れず密かに執り行われる性のお遊戯、日常の、

即ち表の世界に戻った折りへの配慮、手首に巻いた上での両手首の縛めと

推察した私は、プレイ、身体を縛められ拘束されはしても是はプレイ、拷

問でも折檻でもなく、且つ、同性たる男からでなければ萌え昂らない男へ

の性のお遊戯と、何かしらの安堵感を覚えていました。

 

 

 後ろ手で両腕の自由を失った私は、身体のバランスを保つに難ある様で

した。其の為に自然と両脚を開き、床に踏ん張る両足の間隔を開いていき

ました。とは云っても、肩幅程、いや、其れに達しない程でしたが。

 

 

 「如何・・?」と囁く彼に俯くと、背後の彼は私の顎に手を当てて顔を

上げさせ、顔を並べるように寄せて鏡に映し出し、そして私の乳首の弄り

を始めました。 私は甘い声を禁じ得ませんでした。 強く摘まれ捻られ

た時の私は、「ウッ・・・」「ああ~ あああ~」と大きな声をあげてい

ました。

 

 

 「見て御覧、カーテンを」と囁かれた私は、談話室内の二人の若いM

がカーテンに顔を寄せ、レースを通して私達のプレイを窺っている事には

気付いていましたが、依然として覗かれ続けているのかと、顔を捩りまし

た。

 

 

 二人の頭の分だけ、カーテンはプレイ室側に僅か膨らんでいました。 

談話室とプレイ室との照明の明暗差なるが故になのか、既にプレイを終え

S氏とM氏も顔を向けているのが解りました。  視られたい・・・ 

間近く見詰められたい・・・ 晒されたい・・・ 私の縄化粧を間近く・

・・ 身体の隅々まで・・・ 思いは突き上げていました。

 

 

 彼が何かを言った様な気が・・・ 言葉に出しての誘いではなかった様

な・・・ 態度で示しかのかも知れませんが、 カーテンの向こうで立ち

上がる四人の気配が窺えました。 サッとカーテンの端が捲られ、先ず談

話室の
S氏とM氏が闖入し、二人の若いM氏が続きました。若いM氏二人は

恐る恐ると、おずおずとした態でした。

 

 

 既にプレイを終えたSMの二人は壁際に、大きな姿見の左右に立ち、

二人の若い
M氏は私の背後の彼の後ろに立ったのが気配で解りました。二

人は鏡に映る私の身体を見詰めていました。 鏡を通して目が合いました。

二人の若い
M氏の目はおずおずとした目の色の中にではあっても、些かの

ギラギラとしたものを私は感じていました。

 

 

 乳首の弄りは続いていました。 私は甘い声を、喘ぎの声をあげ続け、

許される範囲での身を捩りを続けていました。 顔を俯かせ、首を左右に

振りながら襲い来る快感に堪えていました。

 

 

 両足を肩幅程度に開いて支えた身体を、後ろ手に縛められた身体を、反

らせ前屈みにし、捻り、爪先だって身を反らせ、そして・・・ 私は腰を

突き出し始めました。 触り弄られたい部位を暗示するかの様に、いや、

正しく暗に伝えたい思いでした。

 

 

 彼の手が私の締め込みの結び目に伸び、鏡を通して私の目を見詰めなが

ら、そして結びを解き始めました。 私は腰をくねらせ引き、結びを解く

彼の手から逃れようと試みんばかりの動きを始めましたが、其れは逃れら

れる筈も無く、其れ以上に、私の心にも無い動き、抵抗を装った動きでし

た。

 

 

 彼は粛々と手慣れた手指の動きで結びを解き、縄目の下から引き抜くに

其れ程の時は要しませんでした。彼は最早一片の赤い布と化した締め込み

の残骸とも云える布を捌き、目検討で六尺の中央部を探るや否や、抑えか

ら解放されて弾かれる様に天を突き聳り立つ私の怒張に、其の中央部を怒

張全体に引っ掛け覆いました。

 

 

 焦らされていました。 私の性癖は既にお見通し、いや、Mに喘ぐ男は

須く、性的被虐に酔い悶える男は須くなのかも知れませんが、晒されたい

とする私は焦らされていました。

 

 

 私はアヌスに窄める力を入れ、腰を突き出して聳り立つ怒張をピクン、

ピクンとさせて待ちました。足は爪先立ちでした。

 

 

 少年期から目覚めを覚え、婦人科内診台で羞恥の体位で秘所を晒す母を

覗き見て以来、そして小説花と蛇で静子の受難を貪り読んで以来、恋い焦

がれていた瞬間を、そして尚も加えられるであろう責め、性の責めに、私

は唯只管、其れを待ちました。

 

 

 哀しくも切ない哀れな男の緊縛姿態が、縄化粧を施され、後ろ手に縛ら

れ、頼りない一片の布で辛うじて隠された怒張を晒し出した中年男の姿が

其処に、鏡にありました。


                                         つづく 








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