縄に酔う男




                                  昼顔さん



禁断の園に・・・

(九)




 陰嚢に対するクリップ責めが終っても、同類である二人の若いM氏は名

残惜しそうな面持ちでした。「まだ苛めたいのかな・・??」「同じ性癖

Mさんを・・」「今までされたいと思ってた事を・・」「赤い締め込み

だから、赤い締め込みを選んだのだから君達は
M君」「にも拘らず・・・」

「苛めてみたいと思ってるんだろう・・・」「ほら、可哀相に全裸で吊ら

れて晒された
この可哀相な生け贄さんを・・」と、S氏二人が若いM氏達

を煽り始めました。

 

 “生け贄”・・・ 其の言葉に私は反応してしまっていました。生け贄・

・・性の生け贄・・・性の蹂躙の為の生け贄・・・ 先程の“教材”と云

う言葉と共に、その“生け贄”と云う言葉に、私の身体の奥底は更に激し

く突き動かされ突き上げられていました。すっかり反応してしまっていま

した。“性の人身御供”
熟年S氏二人に私と同年齢と思しきM氏、そして


若い
M氏二人・・・ もうSMもなく、私は彼等同性五人の、五人から責

められ苛まされるプレイのターゲット。性の狂宴の人身御供・・・生け贄

・・・

 

 若い頃から、少年期から、自身の性向・性癖に気付き自覚し自認もし、

フィクションであろう
SM小説を読み漁り、アブノーマル雑誌の奇譚クラブ

で読んだ実体験記、男に依る男責め・・・恋い焦がれ妄想に彷徨い嵩じた

挙げ句の願望であった処の、衆人環視の中での寄って集っての性の蹂躙・

・・まさか、本当に吾が身に・・・入会した其の日にいきなり・・・信じ

られない思いの中で、然し乍ら其れは現実のシチュエーションでした。確

かに五人の男性が私を取り囲み凝視しています。架空でもなく妄想の世界

でもない現実の世界、とあるマンションの一室のプレイ室に私は投げ込ま

れ、いや、自らで飛び込んだ其処は紛れも無い“責め部屋”、“男が男を

責め、男が男から責められ”、紛う事なき現実のプレイ室でした。

 

 促されてであったのか、それとも自らであったのか、若いM氏の一人が

私の乳首を口に含み、次いで今度は明かに促す声が聞こえ、私の両の乳首

は二人の若い
M氏夫々の唇に捕らえられました。「あっ・・」と私は小さ

な声をあげ、顎を突き出して顔を大きく仰け反らせ、吊り縄に縋る爪先立

ちの不安定な身体を左右に捻りました。含まれた両の乳首は直ぐに舌で転

がされ強く吸われ始めました。「あっ、ああ・・・ああ~」と、私は甘い

声をあげました。ですが彼等の口戯は拙いものでした。あまり慣れてない

な、それともウケ=
Mが多いとされるが故に、男を愛撫する術に長けてい

ないのか??
される一方だったのだろうか?? でも私は味を教え込まれ

ると同時に口淫の術を教えて戴いたのに・・・と、何んとも贅沢な
Mさん

の私でした。

 

 「ドンデン・・かも・・??ドンデンが来たのかも・・」と呟く声が聞

こえました。私と同年齢と思しき
M氏の声でした。「良いじゃない、束の

間のドンデンでも」「一日の内に
とMとをプレイ出来て」「何事も経験

だもの」「それに此の
Mさん、生け贄君だから、教材君だから」と二人のS

氏は口々に囃す様に返す声が聞こえました。

 

 (ドンデン、その言葉の意味は識っていました。人は誰しもが本来は嗜

虐性と被虐性とを併せ持ち、何れが強く発露するかは其の人次第。占める

比重の大小のみならず、思い込みで其の侭突っ走り溺れる者もいれば、或

る日或る時突然、
SMに転じ、逆も然りと云う事を)

 

 ドンデン・・・ならば赤い締め込みの若い二人にもドンデンが・・・そ

れとも単なる男の身体への興味??見たところ然程のプレイ経験は無い様

に思える初心者と思しき彼等、単なる
SMプレイに対する興味・・??斯か

るサークルに入会するのであればゲイである事に違いは無いが・・・ そ

れとも私同様にバイ・・??

 

 そんな思いが脳裏をかすめ過りましたが、でも其れは野暮な詮索です。

何方でも良い、五人の男からの
SMプレイ、私は性的嗜虐の対象、格好のタ

ーゲット。煽られた言葉である“生け贄”、“被虐の教材”・・・ 私は

永年の妄想嵩じて願望にも至っていたシチュエーションに酔いしれていま

した。私は甘い声色で「ああ・・赦して・・」「ああ・・・もう・・もう

・・ああ~」と喘ぎを大きくしていました。乳首への若い
M氏の口戯は続

いていました。

 

 私は爪先立ちの両手吊りが辛くなっていました。吊り縄に縋る両手にも

些かの疲労感を覚えていました。察したのか
S氏の一人が吊り縄を緩め、

私は踵を着ける事が出来ました。吊り縄は更に緩められ、上腕を水平にし、

肘から先を立てて縄に縋れるまでになりました。拝み太郎、カマキリの前

足の様な格好で吊り縄に縋りました。ですが身体を引き延ばされるが如き

両手吊りから得られる処の強い緊縛感、就中、股間を潜る縄に依る緊縛感

は薄れていました。

 

 「だらしが無いM男だねえ・・」「もっと堪えなきゃ」と、同年齢と思

しき
M氏がピシャッと私の双丘に軽い平手をくれました。ピシャッだった

かペシャッだったか、そんな音でした。両手吊りを緩められた私は、開脚

気味で両足を踏ん張りました。若い
Mの二人は私の乳首から口を離し、命

じられること無く私の腰を左右から押え付け始めていました。「お察しが

良いですねえ」と
S氏の一人が呟く声が聞こえました。

 

 「お尻を突き出す!」「もっと!」と強い口調でドンデンのM氏から告

げられた私は、両足を踏ん張ってお尻を突き出しました。いきなり、何の

予告も無く、パ~~ンと云う大きな音と共に強烈な平手打ちが双丘に打ち

据えられました。男の力強い平手打ちでした。「ああ~~」と大きな声を

あげた私は腰を引いて背を反らせましたが、すかさず、二人の若い
M氏か

ら腰を、お尻を押し返されました。

 

 パ~~ン・・・パ~~ンと大きな音を立てての平手打は続きました。臀

部にカッと熱い感覚を覚えました。双丘夫々に加えられる平手打ちは五・

六撃程だったでしょうか、静かなプレイ室に、エアコンの低く小さな唸り

音のみの静かなプレイ室の、その静寂を破る様な間欠的な平手打ちでした。

臀部には熱い痛感と共に心地良い痺れ感がありました。打たれる度毎の大

きな音に私は酔っていました。

 

 私は映画のシーンを、映画「昼顔」でセヴリーヌ(カトリーヌ・ドヌー

ヴ)が鞭打たれるシーンを思い出していました。赤い(オレンジ色でした

か??)ノースリーブのワンピースの背を裂かれ、ブラジャーのホックを

外され、白く抜ける様な、白磁の様な背を晒したセヴリーヌは両手を縛め

られ、そして私と同じ様な体位で田園地帯の木立に縛られ、そう、私と同

じ格好で・・・セヴリーヌと異なるのは私は男。白く抜ける様な肌ではな

く、それでも男にしては滑らかと自負する肌。体毛は脱色したかの様に薄

く、恥毛は所謂ビキニ・ラインに沿わせての手入れも怠らず、(ただ、剃

り跡は残る毛根で歴然と)脇毛は有るか無しかの様に細く淡く・・・

 

 セヴリーヌは半裸、私は全裸の上に菱縄掛けの赤い縄化粧・・・雄のシ

ンボルを真っ赤に熱り立つように聳り勃てた生け贄の男・・・然も白や赤

の締め込み一本の男衆から取り囲まれ、その中に晒された私、男・・・


に責められる為に生まれて来た男・・・そうありたいと願っていた私は、

そう思う事に依って更に性感が昂り嵩じていました。

 

(過去に於いては女性からの責めを想い描く事もありましたが、そのシチ

ュエーションの侭に自慰に至った事もありましたが、何時の間にか責め手

は同性たる男性にすり替わっていました)

 

 鞭打たれたい・・・鞭打たれてみたい・・・セヴリーヌの背に振り下ろ

されていたのは長~い一本鞭、さぞや痛かろうと、鞭先に働く遠心力で打

撃力は更に増し、肉が裂けるのではと考えていましたが、(書物や雑誌で、

鞭には主に一本鞭とバラ鞭とがあり、一本鞭での打撃は屈強な大の男でさ

え苦悶し気絶する程と云う事は識っていました。身体に与えるダメージも

甚だしく、跡、いえ、痕が、と云う事も)
ですがセブリーヌは絶叫には程

遠い「アッ・・」と短い喘ぎの声をあげながら鞭を受けていました。鼻に

掛かった声でした。妄想シーンなるが故に、或はセヴリーヌが秘め持つ性

的被虐の性(さが)なるが故にかも知れませんが・・・私は荒い息遣いの

中に甘い吐息めいた喘ぎの声を洩らしながら、二人の若い男から抑え付け

られる腰をくねらせていた様です。心地良い痺れ感の中で・・・

 

 私を取り囲む男衆五人はそんな私を見詰めていました。俯くと、跪いて

私の腰を抑える若い二人の上目遣いの目、そして其の彼等の眼前には、熱

り立つ私の怒漲が隠す術も無く晒し出されています。怒漲の鈴口からは男

の涙が、カウパー氏腺液が、所謂先走り液を止めども無く滲ませ糸を引い

て・・

 

 そう、もっと顔を寄せて視て下さい・・・これが被虐に喘ぐ男の漲り、

御想像に違わず私はウケ、男の身体を識り、味を教え込まれもした男の身

体。閨での痴戯痴態を想像して欲しい、いや、想像されたい・・・
一方で

は私は所謂バイ。女性とも交接を重ね・・・その時の私を想像されてもみ

たい。私の性の深層を想像されたい、暴かれてもみたい、何もかもを晒さ

れたい・・・
私は性の、男の性の教材・・・性的被虐に酔う男、晒された

いと願う男・・・
Sさん達はベテランさん、でも君達は?? でも男の身体

に、性に興味は有る筈・・・そう、視て解る通り私は
M・・・妻帯し子供

もいる中年男、妻がいながら男に抱かれ善がる男・・・男に組み敷かれて

善がり悶える私の性の褥を想像されてもみたい・・・
可哀相な生け贄の私

の性の深層を・・・
同類のMさんだろうけど、同じMの、然も一回りは違

う中年の同類の男の哀しき性(さが)を客観的に・・・そんな思いの中で

彼等の目を見詰め返し、荒い息遣いと共に妖しい喘ぎの声をあげながら腰

をくねらせていました。目は涙目になっていたのが自身でも解りました。

窄めるようにアヌスに力を入れると、熱き漲りはピクン・ピクンと脈打っ

ていました。糸を引く先走り液がなびいていました。

 

 睾丸にむず痒さを覚えました。重いと、僅かながらにも感じていました。

逝きたい・・・逝かせられたい・・・いえ、逝かせて戴きたい・・・
「逝

き・・・そ・う・で・す・・・」と、私は喘ぎながら訴えました。誰に?

Sさんに??それとも同年齢と思しき平手打ちを加えてくれたMさんに

??
或は、熱り立ち聳り立つ私の怒漲を眼前にした二人の若いMさんに?

誰にとは無しにでした。熱き怒漲を腰をくねらせ突き出していました。

 

 五人から見詰められながらの私は、揶揄の言葉でも良い、感嘆の言葉で

も良い、投げ掛けられながら・・・
願わくば手指で扱きあげながら・・・

 自慰のシーンを皆に取り囲まれる中での、見詰められる中での自慰でも

良い・・・
お視せしたい・・・いや視て戴きたい・・・嬲る様な揶揄の言

葉の中で強要される自慰でも・・・
ですが両手は自由になりません。若し

かしたら、マジマジと繁々と見詰められるだけで逝ってしまうのでは・・

・それほどの切迫した昂りに思えました。絶頂の頂きは迫っていました。



                                         つづく 









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