男の影を慕いて



                                     秋山槙太郎さん 



(49)親父がくれた褌



俺と親父が激しく燃えた夜の翌朝、俺は、親父と別れた、、、。

辛い別れだった。

こんなに辛い別れはなかった。

親父は、俺を見ながら、

「お互いに愛し合っているのに、なぜ別れなければならないんだ、、、」

親父は、必死で涙をこらえて俺に言った。

 

親父は、俺の決意が固いことを悟ったのだ。

俺は、このままズルズルと親父と関係を持っていたら、必ずや、親父とオ

ヤジさんの仲を割いてしまうと感じたのだ。

親父とオヤジさんは何十年もの、固い絆で二人は結ばれている。

その絆を、俺が割り込むことによって、二人の絆を引き裂いてしまうと、

俺は恐れたのだ。

だから俺は、自ら二人の間から身を引いた方が、親父とオヤジさんのため

だと感じた。

 

その朝、親父は俺を抱きしめたままで、なかなか俺を抱いている腕を解こ

うとはしなかった。

親父はまるで、大切なものを他の人間に取られないように、ずっと俺を抱

きしめたままでいたのだ。

 

「親父さん、ありがとう、、、俺、親父さんと出会ったこと、本当に嬉し

かったし、楽しかった、、、」

「バカ野郎、、、槙太郎、お前、なぜ儂から別れなければならないんだ、、

儂の気持ちがわからんのか、、、」

親父は、思わずポロポロと大粒の涙を流したのだ。

 

俺はその時、親父の胸の中に飛び込みたかった。

しかし、自分を抑えた。

今、親父の胸に飛び込めば、俺は二度と親父から離れられなくなると感じ

たからだ。親父には、何十年来の相方がいる。

俺が親父を知ったのは、わずか数ヶ月前だ。

そんな俺が、親父とオヤジさんの間に割り込んで入るわけにはいかなかっ

た。

 

もし俺が、二人の間に入り込むと、親父とオヤジさんの間にヒビを入れて

しまうことになる。

それは許されなかった。

俺は、この二人から離れるのが一番の良策だと感じたのだ。

 

あの朝、俺は、深々と二人に両手をついて、今までの感謝とオヤジさんに

対する詫びを入れた。

親父から、

「槙太郎、儂は今でもお前に惚れている。そのことだけは忘れないくれよ

な。俺が惚れた男なんだ、、お前は、、、」

 

別れの時、親父は、

「槙太郎、お前が儂のことを思い出してくれるように、儂の褌をやるから、

受け取ってくれないか?」

「親父さん、俺に褌をくれるの?俺、こんなに嬉しいことはないよ。あり

がたく受け取るよ、、、」

親父は、タンスの中から、まだ未使用の褌を持ってきた。

 

「これをお前にやる。お前がこれからこの褌をつけろ、そしてたまには儂

を思い出してくれ、、、」

親父は、目に涙を浮かべて言った。

「親父さん、この褌は新しい褌だろ、、、。俺、できたら親父さんの体の

匂いが染みついた褌が欲しい、、、。この褌は、まっさらだから親父さん

の匂いがついていない、、、親父さん、お願いだよ、今つけている褌を俺

にくれよ、、、」

「槙太郎、、、儂のこの褌をお前がつけてくれるのか?わかった、儂は嬉

しいぞ、、、」

 

親父は、俺の眼の前で、褌をはらりと解いた。

親父の股間は、少しみなぎっていた。

ズルムケの太いものが少しずつ鎌首を持ち上げていた。

親父は、まだぬくもりが残っている褌を持って、

「槙太郎、儂がこの褌を締めてやる。こっちに来い」

俺も親父の目の前で素っ裸で立った。

 

親父は、俺の背後に回ると、後ろから褌の紐を縛った。

そして後ろから前垂れを股間にくぐらせて、紐に通した。

 

親父の褌はまだ温かった。親父の体温が伝わってくる。親父の素肌につけ

ていた褌を、今俺が締めているのだ。

俺はまだ暖かい褌に、親父を感じたのだ。

親父の褌には、昨夜の性行為で、汗まみれで濡れていた。そして精液の名

残や、小便の雫がついていたのだ。キンタマを覆っている褌の部分は、ま

だ蒸れたままだった。

その蒸れた褌を、俺は親父の男らしい股座を感じたのだ。

俺は嬉しかった。心から嬉しかった。

親父は俺の前に回り、前垂れを整えてくれた。そして俺を抱きしめたのだ。

親父の太い体が俺を抱きしめた。

親父の体のぬくもりが伝わってくる、、、。親父の温もり、、、親父のた

くましい身体、、、。

 

親父は、俺を見つめた。俺も親父をじっと見つめた。

すると親父は、太い手で褌の上から俺の男根を強く握ったのだ。

褌の上から握っていた手が、やがて褌の中に手をやり、俺の男根を生でぎ

ゅっと握って離さなかった。

 

親父は、俺を見つめ、名残惜しそうに俺の男根を握って離さなかったのだ。

俺は、親父に抱きつきたかった。思いの丈、親父に抱きつきたかった。そ

して、思いっきり泣きたかった。

 

しかし、未練が残る。俺は、涙を飲んで、親父に抱きつかなかった。

親父、、、。俺の親父、、、、。こんな悲しい朝はなかった。俺の目から

は、涙が溢れ出た。

親父との、悲しい別れの朝だった、、、。

その朝、外は偲ぶような雨が降っていた。



                             続 く







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