最後の恋を求めて




                                         筑紫俊一郎 さん 



【 5.朝靄



早く寝たので、正一は5時には目が覚めていた。元々目が覚めたら布団に

入っていることができない正一は早速お風呂に行った。誰もいないお風呂

でのんびりと手足を伸ばした。何かサラリーマン人生の疲れが温泉に溶け

出すように感じる。風呂から出ると、下駄を履いて散歩した。旅館の目の

前を谷川が流れ、霧に包まれた山々は東京とは別世界でゆっくりと時間が

過ぎて行く。素足に下駄で歩いていると足元が露に濡れてそれも新鮮な感

覚である。周りの風景に見惚れていると不意に水害の溝に足元を取られた。

尻もちをついて起き上がろうとしたが足首が痛む。暫くタオルを足首に巻

いて休んでいた。「若いと思っているが歳は隠せないものだな!」と苦笑

した。

 突然後ろから「どうされたのですか?」と声がした。振り返ると昨夜の

晉一の笑顔があった。

「いや、その溝に足をとられて少し痛めたようです。恥ずかしいけど、も

う歳なのでしょうね。」

「それなら肩をお貸ししますよ。取りあえず旅館にもどりましょう!」と

手をとって立たせた。肩を貸しながら、一歩ずつゆっくりと旅館に進んだ。

晉一は左肩に正一の胸の温かさを感じていた。昨日のお風呂場で見たから

だが思い出されて、思わず大きくなるのを感じた。

道すがら晉一は「今日はどんな予定なのですか?」と聞いた。

「今日は法師温泉に行く予定です」

「そうですか?私は車で来ているし、今日は何も予定がないので送りまし

ょうか?」

「お忙しいでしょうから結構ですよ。車で行きますから・・・」

晉一は「気を遣わないで下さい。静かな温泉で、秘湯の中に数えられてい

るようですね。今日は夕方までに帰らないといけないので泊まることはで

きませんがお風呂だけ入ってみたいですからね。」

「そうですか?それでは甘えてしまうかな?その方が道中も楽しいしね。」

「旅館に着きました。一人で歩けますか?」

「大丈夫です。ありがとうございました。」

「それでは9時頃に玄関前で待っていますから・・・」

正一はほのぼのとした気持ちで部屋に戻った。昨夜の浴場での晉一の身体

が思い出される。ふっくらなお腹、太い一物、形の良いお尻。今日一日車

で一緒だと思うと嬉しくなる。

冷蔵庫の氷をコンビニの袋に入れて暫く冷やした。腫れることもないので

大丈夫のようである。



                                                  続 く 







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