最後の恋を求めて




                                         筑紫俊一郎 さん 



【 7.芽吹き



 翌日の月曜日、建築業者である晉一は幾つかの現場を抱え、業者を派遣

していた。社員は20人であるが、下請け業者は多い。今日も昨日の佐藤

さんのことを思い出しながら仕事の段取りを済ませて、夕方まで現場をチ

ェックして歩いた。仕事の半分は公官庁の仕事であり、見積もり、検収、

納期のチェック等何かと忙しい。夕方、社員が帰った後で佐藤さんに電話

をした。呼び出し音が耳に響く間ドキドキする。何か高校時代に恋人に電

話した時のような気持である。1回、2回、3回と呼び出している。5回

目に電話に出てくれた。

「もしもし!昨日お世話になった中村です。ありがとうございました。」

「こちらこそ大変お世話になりました。ありがとうございました」

 「もう、東京に戻られたのですか?」

「はい。夕方戻ってきました。昨日一緒に泊まれたら良かったのにね。

後から私も一緒に帰れば良かったと思いましたよ。」

「はい。私もご一緒に泊まりたいと思っていましたが、仕事の関係上戻

ってきました。今度ゴルフをご一緒したいですね。」

「私は何時でも結構ですよ。是非お願いします」

「それでは早速ですが、今度の金曜日にツーサムでお願い出来ますか?」

「はい。楽しみにしています」

「それでは詳細はEメールでご連絡致します。ありがとうございました。

 

 金曜日。晉一は8:30に高崎駅に到着した。車を止めてコンビニでコ

ーヒーを二つ買い、駅前に待機した。高崎駅の東口から正一が笑顔で降り

てきた。

早速車に乗りゴルフ場へ向かう。「佐藤さん!実はこの前の霧積温泉へ

の旅行は失恋の旅でした。」と思い切って告白した。「私は最近お付き合

いしていた人と別れようと思って旅に出ました。相手は私と同じくらいの

紳士です。男が男を好きになるのは気持ち悪いですか?」

「そんなことはないですよ。お風呂で洗い合いしたときに感じたように

私も男が好きです。」

「そうですか?思い切って話して良かった。これから友達になってくれ

ますか?」

「ありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします。この前私

が足を痛めた時に中村さんが通りかかった出会いも何かの縁ですね」

「佐藤さん!佐藤さんのことを兄ちゃんと呼んでも良いですか?私のこ

とは晉一と呼んでください。私は昔からお兄さんが欲しかったのです。」

と晉一は言った。

コーヒーを飲みながら、正一の手は晉一のシフトレバーを握る左手の上

に置かれた。運転しながら晉一は正一の手を握りしめ、静かな刻が過ぎて

ゆく。あっと言う間にゴルフ場に到着し、軽いパターの練習の後でスター

トした。

スタートは正一が200ヤードのドライバーで2フェアウェイから140ヤー

ドの距離だが乗らずに3オン2パットのボギー。一方晉一は
260ヤードの

ドライバーで右のラフ、2打目はやはり乗らず3パットのダブルボギーだ

った。カートに乗りながら、手を握り、太ももを触り、午前中は晉一が4

5、正一は43だった。午後も楽しい会話をしながらゴルフをし、晉一は

45、正一は44だった。お風呂から出て高崎駅に向かう途中、晉一は

「このまま別れるのは忍びないので、少し休んで行きませんか?」と聞い

た。

「私もそう思っていたのですよ。いろいろ話したいしね」との正一から

の言葉。少しう回路になるが晉一はラブホへとハンドルを切った。



                                                  続 く 







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