最後の恋を求めて




                                         筑紫俊一郎 さん 



【 9.19番のゴルフ



 晉一はまだ火照った身体を座席に沈めて、高崎駅へと送った。正一は

「定期的にゴルフをしたいね。勿論19番までね」

「お願いします。平日でも自由があるからゆっくりとツーサムで廻りま

しょう!」と話している内に到着した。別れ難い感情を抑えて、改札口で

別れた。

晉一は感動を振り返ろうと一人喫茶店に入った。朝に高崎駅で逢ってか

ら、今の改札での別れまでゆっくりとスクリーンに映し出されるように思

い出される。今別れたばかりなのに、もう逢いたい。先ほど決めた10日

後のゴルフが待ち遠しい。明日も明後日も逢いたい・・・

一方、正一は新幹線の座席で目をつむり、一日を振り返っていた。晉一

の朝の笑顔の出迎え、そしてイチャイチャしながらのゴルフ、さらに一つ

になった満足。「えっ、これは本当に惚れたのかな?70近いお爺さんが

こんな感情になるのかな!まるで青春時代の恋の気持ちと一緒だな」と思

いながら新幹線の中で眠った。

 晉一はいつも7時には出社する。社員は8時頃に出社するのでその1時

間が作業の段取りの時間である。会社に到着すると早速メールが来た。正

一からだった。「昨日はありがとう!お蔭様で楽しい一日になりました。

昨夜から今朝まで何度も晉一を思い出したよ。ゴルフも
SEXも思い出す度

に心が熱くなるよ。今日も仕事を頑張ってね!」

「こちらこそありがとうございました。私も何度も兄ちゃんのことを思

い出しました。次回の逢瀬が楽しみです。今日も楽しい一日にして下さい」

と返信した。

それから毎朝お互いにメールすることが楽しみになった。正一は経営陣

の中にいたので、中小企業の経営者の気持ちは手に取るようにわかる。晉

一の仕事が上手くいくように!いろいろ難題があっても楽しく仕事ができ

るように!と祈るようにメールを返した。正一は仕事を離れているので、

晉一のメールが待ち遠しい。挨拶でも良いし、SEXのことでも良いし、

とにかく晉一のことが頭から離れない。でも、晉一は仕事に追われて時々

メールが遅くなる。そうすると正一は「私だけが一方的に愛しているのか

な?」と思う。既にこんな純な気持ちで人を愛することはないと思ってい

たが、現に今の状態の再来に自分自身が戸惑っている。そして返事が来な

いと不安になってくる。



                                                  続 く 







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