最後の恋を求めて




                                         筑紫俊一郎 さん 



【 15.草の秋



晉一からの誘いの間隔が空いて来たので、正夫はメールで「晉一、逢い

たいよ。晉一の身体も欲しいよ」と書いたけど、「その内にゴルフしたい

ね。」「正ちゃんとのゴルフが最高だよ」とか「晉一も正ちゃんに逢いた

いよ。でも忙しいからその内に連絡するね」との返事が来る。

正夫は1週間、10日、2週間と日にちが経過するにしたがって、「本

当に忙しいのだろうか?お茶を飲む時間も作れないのか?予定も立たない

のだろうか?」と疑問になってきた。

或る日「今日空いていたら逢いたいけど・・・」とメールが届く。「空

いているよ。晉一は忙しいだろうから私が高崎まで行くよ。何時頃なら大

丈夫なの?」と聞くと「兄ちゃんが来てくれるなら2時間後位かな?」と

のメール。正一はいそいそと高崎まで出かけた。

暫くしてまた「今日暇があったら逢いたいのですが・・・・」とメール

が来た。前回同様に「大丈夫だよ。2時間後位ならいけるよ」とメールし

た。

 それからしばらくはいつものようにメールが続いた。正一はやるせない

心を友達に話した。友達は「佐藤さん!それは晋ちゃんには佐藤さんが予

備なのだよ。本命が都合の悪い時に佐藤さんを誘ってくるのではないの?」

と言う。“そうなのだろうか?確かに10日も2週間も予定が立たないこ

とはないだろうけどね。2週間、3週間会えなくても、予定があったらそ

れを楽しみにできるけどね。今日の今日逢いたいと言うのは私への愛情が

薄れているのだろうな”と思った。

人生最後の恋と思っていたけど、“私は恋に恋していたのだろうか?”

と思った。こんな純な心を持っている自分を褒めてあげたいと思う一方で、

“まだ恋に関しては青二才かな”と苦笑した。メールやskypeで「愛

しているよ」と言われると安心する。青春時代もそうだったが、まだ恋を

している段階なのだろうか?もうとっくに恋愛は卒業したはずなのに・・・

 一方晉一も毎日の予定に追われて逢うことが出来ない苛立ちを感じる。

“私が逢えないから、他の人と逢っているのではないだろうか?”と不安

になる。“でも、きっと私の気持ちは伝わっている”と自分を納得させた。

また“いつも私から誘っているが、兄ちゃんからどうして誘って来ないの

であろうか?私が一方的に愛しているのかな?”と思う。“兄ちゃんは別

にお付き合いしている人がいるのだろうか?”“私は兄ちゃんとずっと愛

し合いたい。死ぬまで兄ちゃんとお付き合いしたい”と思っているのに・

・・・・

そんなことを考えていたが、お盆も過ぎて一段落したので、9月には1

泊の旅行をしようと思った。兄ちゃんに連絡は入れてないが、とりあえず

ホテルを予約した。場所は日光。日光は小学生の修学旅行以来である。

「兄ちゃんが喜んでくれるだろうか?」「一晩中愛し合いたい」と思った。

 一方、正一は晉一が忙しいと思っていたので遠慮していたが、思い切っ

て電話した。「晉一!元気?仕事が忙しいの?出来たら近いうちに逢いた

いね。」

「いや、丁度一段落したところです。実は兄ちゃんと逢いたくても逢えな

いのでイライラしていました。一段落したので兄ちゃんと温泉に行こうと

思って予約しました。紅葉には早いけど日光に行きませんか?敬老の日に

出かけたいのですが・・・」

「ありがとう!私という老人のお祝いかな?楽しみです。」と話は直ぐ

に進んだ。「晉一は私を愛してくれていた。有り難い」と自分の杞憂に過

ぎなかったことで嬉しくなり、疑っていたのが申し訳ないと思った。



                                                  続 く 







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