最後の恋を求めて




                                         筑紫俊一郎 さん 



【 16.実りの秋



 敬老の日の朝、いつものように高崎駅で待ち合わせした。正一は4時に

目が覚めてしまった。もう一度寝ようとしたが眠れないので、結局そのま

ま起きた。予定より1時間前に出発して8時には駅に着き、構内の喫茶店

で時間を潰し、50分に東口に降り立った。一方、晉一も5時には目が覚

めて起きていた。高崎駅で9時に待ち合わせだから、ゆっくりで良いのに

高崎駅には8時には到着した。仕方がないので駅の近くのガストでコーヒ

ーを飲んで時間を潰し、ロータリーには10分前に入った。入って直ぐに

正一が笑顔で階段を下りてくるのを見つけた。

「おはようございます。お待ちしていました。実は早く着いてガストで

コーヒーを飲んでいました。」

「そうなの?私も8時に着いて構内の喫茶店でコーヒーを飲んでいまし

た。」

「それなら兄ちゃんに連絡して一緒にコーヒーを飲んだら良かったね。」

「そうだね、メールし合ったら良かったね。」と笑い合った。

 高崎インターから入って、圏央道から東北道へと進んだ。密室の車の中

で、正夫はシフトレバーの晉一の手に右手を重ねた。道路の両側に広がる

田んぼにはもう収穫を待つ稲穂が黄金色に輝いている。

 正一は「実は晉一に謝らなければいけないことがあるんだ。恥ずかしい

話だけど、私は中々晉一の予定が解からないから、晉一が誰か他の人と付

き合っているのか心配だった。ごめんね。」と話しかけた。晉一は「そう

なの?実は私も仕事が忙しくてゴルフも出来ないし、デートの約束をする

ことも出来なくてイライラしていたんです。こちらこそごめんなさい。兄

ちゃんに寂しい思いをさせてしまって申し訳ないと思っていました。私に

は兄ちゃんしか見えないから他の人とお付き合いしているということはな

いですよ。ご安心下さい」

「頭の中では晉一が忙しいので中々時間が作れないだろうと思っていても、

この歳になっても恋すると不安になるのですね。もう、この歳で恋するこ

とはないと思っていましたが、晉一に逢ってから毎日が幸せに感じている

よ。晉一!ありがとうね。出会いに感謝しています。」

「兄ちゃん!私も兄ちゃんと出会って本当に幸せに感じています。仕事を

して嫌なことがあっても兄ちゃんのことを思い出すと“頑張ろう”と思っ

て元気になります。好きな人、自分を愛してくれる人がいることは素晴ら

しいですね。ありがとうございます。」

二人は乗る車は東北道をゆっくりと北上していった。



                                                  続 く 







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