再 会  .



                                      桃色の越中 さん 



その5  .



文夫は、担任の宮崎先生の紹介で大宮市内のN銀行支店に就職が決まった。

3月に入ると、文夫はM機械製作所を退職して、大宮市内のアパートに越

し4月から銀行員として働き始めていた。

又銀行員として必要とされている、銀検法務2級、財務2級、税務3級、宅

建これらの資格は、働きながら得取する事にした。

やがて26歳になった頃、同じ職場に働く、江田早苗と結婚話が持ち上がり、

目出度く結婚する事となった。さらに
30歳を迎える頃には、男子2児の父

親となっていた。

長男翔太、次男裕太の二人の父親である。

 

平成184月、この7月の誕生日には、文夫は55歳を迎えようとしていた。

この頃には、息子二人はすでに結婚をしていて、独立していたのである。

又文夫の勤め先である、N銀行の支店長は、木村支店長が定年退職したの

で、若い宮田支店長に代わっていた。

その宮田支店長から、大事な話が有ると言うことで、文夫は支店長室を訪

ねた。

「高木さん、お待ちしておりました。そこの椅子に腰掛けて下さい、実は

お話と言うのは、この
7月で、高木さんは55歳になられます、55歳で定年

退職ですが、退職金はお支払いします、その後
5年間は嘱託として、毎年

給料は減給となりますが、如何でしょうか?」

「私としては、55歳で定年退職をして、生まれ故郷の茅ヶ崎に帰り、仕事

の方は警備員として働きたいと考えています、又年老いた母が一人暮らし

なので心配なのです」

「そうですか、僕はあと5年間、高木さんには、後進の指導をして頂きた

かったのですが、残念です、そういう事情なら仕方ないですね、解りまし

た」

 

平成187月、高木文夫はN銀行支店を定年退職して、生まれ故郷の茅ヶ

崎市に戻ってきた、母と妻の
3人の生活が始まったのである。又母親の光

子は、文夫と一緒に暮らせる事を喜んでいた。仕事の方は、地元の
H警備

会社に採用となった。警備会社による
3日間の教育を終え、今日は初仕事

だ、地元にある
T銀行支店の立哨警備から始まったのである。

9:00時開店と同時にお客さんが、どんどん入って来た。

そのお客さんの中に、体格の良い白髪の老人がいた。文夫は、『はて、こ

の老人何処かで見たことが?』頭のなかで記憶の糸を辿っていたが、思い

出したようだ。

『あっ、岩田誠四郎先生だ』文夫はこの老人に声を掛けてみた。

「もしもし、お客さん、若しかすると、岩田誠四郎先生では無いのでしょ

うか?」

「ああ、わしは岩田誠四郎と申す者だが、君は?」

「僕は、高木文夫ですが」

「おお、文夫か、随分立派になったのう!解らなかった」

文夫はこの時40年前の美少年から、小柄、小太り、ハゲ、メガネ、丸顔の

親父に変身していたのである。ゲイや男色の世界では美人として、もては

やされるタイプだ。

「文夫、ここで立ち話では、何だ、後で父さんの家に来ないか?、息子の

哲夫は大阪の中学校へ赴任していて、女房には
5年前に先立たれてしまい、

父さんは今一人住まいなんだ」

「そうですか、又色々積もり積もる話もあります、この次休みが取れたら、

是非お伺いしますが?」

「そうか、楽しみに待っているぞ」

こうして二人は、携帯の電話番号を交換したのである。



                                                     続 く 









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