再 会  .



                                      桃色の越中 さん 



その7  .



中学校時代の恩師岩田誠四郎と再会し、岩田家で一夜を共にした文夫は、

月曜日から、又通常勤務に戻った。

母親の光子は、二人の関係を薄々知っていた。文夫が幼少の頃、再婚の話

が有ったが、今一結婚に踏み切れず、再婚しなかったので、文夫には父親

の愛情を知らせてやれず、申し訳なく思っていた。又光子は、岩田誠四郎

の存在を有りがたいと思っていた。

それは、文夫が、誠四郎の事を実の父親のように、慕っているのを知った

からだ。

妻早苗も、文夫と誠四郎の関係には薄々気づき始めていた。

早苗も、もうこの頃には、SEXには興味が無くなり、義母光子との嫁と姑

の関係が上手くいっていて、光子とお花の教室に通ったり、光子の友人を

交え、喫茶店でだべったりで、生き甲斐を感じていた。又文夫が機嫌よく、

仕事に励んでいるのを見て不満を持たなかった。

そんな、文夫と誠四郎の月一度の逢瀬が、二年ほど続いたある日、誠四郎

は、持病の糖尿病の為、
K大学付属病院の内科外来を訪れていた。

主治医の田村先生からの説明があった。

「岩田さん、入院出来ませんか?」

「先生、如何してですか?」

「岩田さん、実はクレアチニンの数値が上昇し始めているんです」

「先生、クレアチニンって何ですか?」

「クレアチニンと言うのは、腎臓の良し悪しを見る、検査数値です、今の

状態のままですと、やがては人工透析を受ける事になります、ですから入

院をして、食事療法をしたいのです、塩分、蛋白質、カリウムの制限をし

て、クレアチニンの数値を改善したいのです」

「先生、解りました。入院しましょう」

岩田誠四郎は、K大学付属病院の内科病棟に入院する事となった。

誠四郎が入院した事を、知った文夫は、今日はお見舞に駆けつけてきてい

た。

糖尿病と言う事なので、食べる物は制限されていて、食料品は持ち込めず、

お花を持ってのお見舞である。

「お父さん、とうとう、入院に成って仕舞いましたね」

「文夫、大丈夫だ、主治医の田村先生に任しておけば、その内すぐ良くな

るよ」

「そうですね、大丈夫でしょう」

こうして、月一度のお見舞では有るが、文夫は病院に来るのが楽しみであ

った。

でもその反面、誠四郎の体が、見舞いに来るたび、痩せ細って行くのが心

配だった。

こうして、一年の歳月が流れたある日、文夫の元に悲しい悲報が届いた。

親友の岩田哲夫からだ。

文夫の携帯の着信音がけたたましく、鳴りひびいた。

哲夫からの電話の内容は、親父が危篤ということだ。

文夫は仕事の段取りが付かず、やっと夕方近くに病院に駆けつけたが、す

でに時遅し、

霊安室での御対面となった。

哲夫は、遺体の顔面から布を外し、文夫に最後のお別れを即した。

誠四郎は安らかな顔つきで、笑みさえ浮かべているような、死に顔であっ

た。

文夫は、「お父さん」と言って泣き崩れてしまった。

哲夫は意外な言葉を聞いてしまった。

『お父さん?』

でも、この二人の関係を薄々知っていた哲夫には、当然のように聞こえた。

又自分は男色行為は出来ぬが、二人を本当の親子の様に結び付けた。

男色の関係を、心の中では、素晴らしく魅力の有る物だと、驚嘆していた

のである。

岩田征四郎は、二人の息子に看取られ、遠い国へと旅立った。

享年81歳で有った。



                                                      完 









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