アナザーストーリー (ミラーバージョン)

                                         おだぞお さん 


この物語はブログ「男に告白された男」に着想を得て、まったく別の物
語として書き下ろしたものである。
ゆえに、登場人物はブログとは無関係であることをあらかじめ申しあ
げておきたい。

若き日の恋物語として、読んでいただければ幸いである。



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「今度は僕に入れさせてください」

 思わず、口から出た言葉があまりにも大きい声だったので、自分でびっくりした。

いつものBARには僕たちしか客はいない。マスターが薄暗い店内のどこかで聞き耳を

立てているかもしれない。

 顔に黒い影を作っていたARAHIさんが眉をひそめたのがわかった。そして、改めて

僕を見据えた。鋭く、射るような眼差しだ。

「お前、欲情してんのか」

「はい」と、思わず答えた。

先輩でもあり、元上司でもあるARAHIさんの前では隠し事は通用しない。 

つかの間の緊張。

ARAHIさんはカウンタの下で、僕の股間に手を当て、握ると、「そうでもねぇな」と、いう。

 僕に向かって体勢を傾けたARAHIさんの顔がライトに映えた。彫りの深い美しい顔

が僕の前にいた。僕は反射的に目の前にあるARAHIさんの唇に僕の影を押し付けた。

 唇が硬かった。苦いタバコの味がした。


 初めてのARAHIさんとの行為からもう1ヶ月以上もたっている。その間にも、こうして

二人で酒を飲む機会は2、3度あった。部門こそ違え、同じ社内で、はじめに顔をあわ

せたときはどんな話題を、と緊張したが、僕も、ARAHIさんも何事もなかったように、従

来となんら変わらずに接することが出来た。意識して話題を避けなくても、話の端に上

ることもなかった。やがて、日々の忙しさや、とめどないときの流れの中に<あのこと>

は何もなかったこととして、忘れ去られていくとさえ思われた。


 ところが、最近になって、忘れたはずのあの感覚がよみがえってくるのだ。あの時と

同じベッドに寝起きしているからか。

 眠れぬ夜の暗闇の中で、まんじりともせずに横になっていると、あの時は決して見る

ことなど出来なかったはずの、ARAHIさんの輝く白い歯やなぜか人を安心させる微笑

んだ瞳、日焼けした厚い胸板、ちょっと離れた乳首までがフラッシュバックする。

 僕の首に回した筋肉質な腕の硬い感触。背中や腰に触れている手のひらのぬくもり。

アルマーニの香り。少し汗ばんだかすかな体臭・・・。


 ・・・そして、僕は射精する。






                                                続 く 


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