アナザーストーリー (ミラーバージョン)

                                         おだぞお さん 


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赤い光が気分を沈殿させる。何もこんなワザとらしい店のつくりにしなくたって、と心底

思う。この前来た時は、この光の中で酩酊し、自分を失ったのだ。まるで酔いつぶれ

たのがこの光のせいとばかりに、なんとなく陰鬱な気分。

タカシくんの作る酒は相変わらず濃い目だ。

この前、ARAHIさんと彼がここに来て、何を話したのか。何をしたのか。そんなことも

思い出されて、ますます一人身をすくめて落ち着かない。

僕の沈黙をよそに、ARAHIさんとMr.マダムは絶好調の盛り上がり。

「あん時は、俺も始めてだったし、やり急いじゃったからなぁ」

なんと、聞き捨てならない、耳を疑うような会話。僕たちのことを話しているのか。

「あーら、ダメよ、ダメよ。下手をすると、血が出ちゃう。そんなになったらもう大変」

大変なんです。大変でした。でも、どうして、そんなこと本人を前にして。

「別に入れなくったっていいじゃない。お互い気持ちよければ」

気持ちいい、とかじゃなくて、あの時は入る、入らないが重要で。なんだか実験のよう

でもあった訳で。

「SEXは気持ちよくなるためにやるの。お酒を飲むのと一緒よ。ねぇ」

差し向けられたMr.マダムの瞳は僕に同意を求める。

僕は目の前の瞳を遠くに感じ、前にも同様の感覚を持ったことがあると思ったりする。

もしかしたら、これは酔っ払ったときの感覚?その予兆?声を出そうとするが声になら

ない。

僕は思わず思いっきりの愛想笑いを浮かべる。

「あーんた、いつもこんなかわいい若い坊や連れて。モテモテでうらやましいわ」

「だろう。今度、こいつが俺とやりたいっていうんだ」

「あーら、大変。それはそれは、ご馳走様」

嘘とも、誠とも取れるような会話が僕の前をポンポン飛び交う。

僕はここに来ると、どうしてこんなに早く酔いがまわってしまうのかと思う。マダムの会

話は面白いし、飽きさせない。説得力がある。この店のセンスは疑われるが、Mr.マダ

ムの人柄はいいようだ。ARAHIさんがこのMr.マダムに気を許すのがわかるような気

がする。

「SEXは楽しむためにするの。それは男も女も一緒。ただ、男同士の場合、自然に濡

れるってことがないのよ」

ごもっともです。

「だから、無理をしたら絶対にダメ」

「入れれば、入れたなりの快感があるけど、入れなくったって感じるのよ」

「自分がしてほしいことをしてあげるの」

「男の生理は男が一番知ってるんだから」

Mr.マダムは僕とARAHIさんが本当にするとでも思っているのだろうか。まさか、ゲイ

バーに勤めている人たちが、男に関して童貞ということはないだろうから、こういうきわ

どい話は本音で語っているに違いない。そして、僕とARAHIさんがこういう関係になっ

た、あるいは、なる、なるだろうことも含めて、何の疑いもなく、全てを認識した上で、

語っているのだろう。

僕は酔いの感覚を引きずりながら、ARAHIさんとMr.マダムの会話を先達の知恵として

傾聴していた。

                                                続 く 


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