アナザーストーリー (ミラーバージョン)

                                         おだぞお さん 


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ARAHIさんの腹の上で二人の精子が混ざり合った。

僕はそのまま、ARAHIさんの上に重なって、両手で頭をはさみ、もう何回したか分か

らないキスをくりかえした。ARAHIさんも下から僕を抱きしめた。

抱きしめ合うと、二人の腹の間で精子が押しつぶされて、より一層混ざりあった。この

抱擁が、お互いの検討をたたえているような気がした。


抱き合ったまま反転すると、今度は、上になったARAHIさんが。

「どうだ、初めての感想は?」

目の前10cmで僕を見つめる。

「感動しました」

僕の答えに、瞳が笑った。

「そうか、それならよかった。俺も感動したよ。お前がなかなかのテクニシャンだったの

で」

ARAHIさんはそう言って、僕の上から降りて、傍らに仰向けになった。

そして、手を伸ばし、サイドテーブルの煙草を取ると、寝ながら器用に火をつけた。吐

き出された煙が僕の上を流れた。ARAHIさんはそのまま僕に火のついた煙草をよこ

した。

僕も一口吸った。なんだか、煙草を吸うのがずいぶん久しぶりのような気がした。吐き

出した紫煙が高く上がった。なんだかくらくらするような満足感があった。

一本の煙草が二人の間を往復した。

共犯の喜び?かつて、高校時代に隠れて吸った煙草の味に似ていた。


「○○とはどうなっているんだ」

○○とは僕に胸中を告白した同期の彼のことだ。フロアこそ違え、同じ会社なので、

ARAHIさん同様いつでも会える。

ARAHIさんが思いっきり紫煙を吐き出した。煙が天井まで届いたかのようだ。

「何も・・・、何も変わっていません」

僕は天井を向いたまま、「おそらく、今後も変わらないでしょう。どうも僕たちは磁力が

足りないような気がする」といった。

「磁力?」

「お互いをひきつけあう力です」

僕は受け取った煙草を吸った。それをゆっくり吐き出しながら、言葉を選んだ。

「たとえば、僕はARAHIさんには、・・・こんな関係になったからといって、弁解するわ

けではありませんが、磁石のようにひきつけられるんですが、彼との間にはそんな力

が働かないということです」

僕は煙草を返した。

「磁石はN極とS極があって初めて成立しますが、彼とはお互いS極なのかもしれな

い。このままずっとそばにいれば、やがて磁化されてひきつけあうことになるのかもし

れませんが・・・」

「ずいぶん難しい話だな」

「彼は概念で考えるのです。考えてから行動するのです」

「奴は俺より危険だ。寝たら最後だ」

ARAHIさんは怒ったように突然起きあがり、煙草を灰皿にもみ消すと、裸のまま浴室

に消えた。

僕は一人残されて、見上げる天井に彼の顔を思い描いた。シャワーの音が聞こえる。

「おい、流さんのか。早く来い」

僕を呼ぶ声で、彼の顔は消えた。

飛び起きて向かおうとすると、暗闇に慣れた目に、浴室の明かりがまぶしかった。

                                                続 く 


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