アナザーストーリー (ミラーバージョン)

                                         おだぞお さん 


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 汗が目に入った。右手でぬぐったが、手の甲も汗でぬれていて、かえって、右目が

かすんでしまった。

 ARAHIさんの背中にも玉の汗が浮かんで、流れている。

 動きは止まらない。

 僕はARAHIさんに負けないよう攻撃するのみだ。

 射精の感覚は不思議と遠い。これだけピストンを繰り返せば、マスターベーションな

らとっくに射精しているところだ。

 僕は見えない目をかばうように、目を瞑り、送出を停止し、ARAHIさんのぬれた背中

を抱きしめた。首筋にキスをする。しょっぱい。

 ARAHIさんが振り向いて、肩越しに、僕のキスに応じる。お互い汗みどろだ。つなが

ったままなので、顔と顔をぶつけあうような、不自然な格好だ。

 ARAHIさんは体を支えていた右手を大きく伸ばし、体をねじって体勢を入れ替えよう

とする。そして、器用に足をずらし、目の前で足を持ち上げ、僕の肩に足をかけた。向

き合う形に体勢を入れ替えても、つながったままだ。

 ARAHIさんの顔が見える。なんだかほっとした。

 口元は微笑んでいるが、目は笑っていない。精悍そのものだ。

「まだ、がんばれるか?」

「はい」

 短い会話。それでも、僕を気遣う愛情あふれた一言。

 ARAHIさんは足を僕の脇にすべらせ、腹筋をするように上半身を起こして、僕に抱き

つき、顔中にキスをしてきた。まるで、親犬が子犬を舐めまわすさまだ。

 僕はなぜか衰えを失わないペニスを差したまま、ARAHIさんの足を両脇に抱え、そ

のまま背中に回した両手をつないだ。そして、その体勢のままそっと救い上げ、立ち

上がった。

 思った以上に軽く、ARAHIさんは僕の両の手の中に納まって、体が宙に浮いた。

 ARAHIさんは足を持ち上げたまま、つながった状態で僕に抱きかかえられた。

「ほう」と、ARAHIさんの声が聞こえた。

 僕は抱きかかえた両手をわずかに上下するだけで、ARAHIさんへの送出ができた。

腰をわずかに前後するだけで、ARAHIさんへの攻撃が可能になった。目の前にある

ARAHIさんの顔を見つめながら、手を、腰を僅かに動かした。

「おぉ」と叫びが上がる。

 ARAHIさんは思わず目を閉じた。と同時に、僕の肩をつかんだ。つかんだ腕に力が

入る。眉間のしわが縦に大きく刻まれ、苦痛と快感の狭間で顔をゆがめる。息のかか

る距離で見るARAHIさんの恍惚の表情だ。いとおしいARAHIさんの官能の表情だ。

 僕はなおも攻める。こんなに美しい表情をして感じてくれている。一部始終を見逃が

さないように、むしろ僕は冷静になる。

「キスをしてもいいですか」

この期に及んで変な質問だ。でも、聞かずにはいられない。間近で見られる最後の顔

かもしれない。

「あぁ・・・」

 ARAHIさんは返事とも、ただの感嘆とも取れる、もうどうとでもなれ、というような力の

抜けた声を出した。

「あぁ・・・」

 送出のたびに漏れる声が次第に上ずってくる。

 さらに、僕の首に手を回し、力いっぱいしがみ付いてきた。もう顔は見られない。

「あぁ、いぃ・・・。あぁ・・・」

 声がでかい。僕の耳をなめるように向けたARAHIさんの口から、ますます大きな吐

息が耳元に響く。

「あぁ、うぅ・・・」

 密着した頬はARAHIさんの伸びかけた髭が擦り、痛い。そして、そのたびに抱きし

める首への力が強まる。息が苦しい。

 ARAHIさんの胸と僕の胸が密着し、お互いの汗が滝のようだ。

 また、目の中に汗が入った。

 僕は改めて、落とさないように、指と指をしっかりと結びなおし、今まで以上の長いス

トロークでARAHIさんに攻撃を加えた。

「ひぃ・・・」と、ARAHIさんの声が変わった。

 同時にしがみつく力がさらに増した。

 息ができない。目が見えない。

 それでも、僕はARAHIさんへの攻撃を緩めない。

 何も見えない。何も感じない。

 ARAHIさんの重さを耐えること、延々と続けられると思われる腰の蠕動、それが僕に

課せられた使命のように、ただただ機械的にうごめいた。

「あぁ、あぁぁぁ・・・」

 声にならない、嗚咽が僕の耳をつんざく。

 苦しい・・・。息ができない・・・。

「・・・あぁぁ・・・ひぃぃぃ・・・」

 またもARAHIさんの声が変わった。

 僕は自分の息苦しさをやっとの思いで自覚した。

 僕はそっとARAHIさんの体をベッドの上に横たえた。

 ARAHIさんの体重を支えていた、組あわせた手が痺れている。ARAHIさんの腕も僕

の首に回したままで、固まっている。

 僕はペニスをそっと抜いた。しびれた腕をARAHIさんの背中からほどき、首の後ろに

回したARAHIさんの腕をやっと解いて、目を瞑ったままのまぶたに軽くキスをした。

 ARAHIさんはようやく目を開けて、僕の腰に手を回し、引き寄せ、嘗め回すように顔

中にキスをした。

「お前は最高だ。・・・トコロテンだったよ」

 僕はARAHIさんのさわやかな笑顔を久しぶりに見たような気がして、期待に答えた

安心感もあり、うれしさがこみ上げた。

 それは急に熱いものを伴って、目頭を熱くした。

 汗とは違う雫がARAHIさんの鼻の上に落ちた。

                                                続 く 


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